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28 一騎当千

こんにちは、

フランシス公国のお話です。

どうぞお楽しみください。

【一騎当千】


「うっぐぅぅぅ~」

「あっがぁぁぁ~」

 セイラさんの後ろで待機していた2人の護衛騎士は、いきなり背中から槍で貫かれて断末魔の声を上げて息絶えた。


「なっ、なに!? ……」

 セイラさんは何が起こっているのか、全く状況を全く把握できていないようだったが、帝王シャーキンの目配せは『やってしまえ』の暗黙の合図だったなと私は直ぐに理解した。


「この女を此度の戦の贄としろ!」

 帝王シャーキンが兵士たちに命じた……。

「ウゥ~ラァ~、ウゥ~ラァ~、ウゥ~ラァ~」

 ペルシア帝国軍の異形の兵士たちが一斉に雄叫びを上げると、空気は震え大気が大きく揺れた!


 「ぐわぁぁぁ~、うっぎゃぁぁぁ~、おごぉあぁぁぁ~」

 残りの3人の護衛騎士が咄嗟にセイラさんを守ろうと行動したのだが、彼らの阿鼻叫喚の最後の呻き声が辺りに響く…………。

 3人の護衛騎士たちはセイラさんの下に辿り着くことなく、半月刀シャムシールに刻まれて無残にも殺されてしまった。


「あっ、あぁ〜、なっ、なんと卑劣な! あなた方はそれでも血が通った人なのですか?」

 セイラさんが悲哀と苦悩で、胸が張り裂けんばかりの声を上げるが…………、

「ひやっはぁぁぁ~、どれだけ戯けたことを言っておる。人の情など持ち合わせておれば元より他国を侵略などせんわ! フランシス公国の愚民は、赤子から、女、子供、じじい、ばばあに至るまで、全て嬲り殺しにしてくれよう」

 帝王シャーキンは両手を広げ天を仰ぎ見ると、大声を張り上げて晴れ晴れと叫んだ!

 その刹那であった、なんたることか……帝王シャーキンは天からの光によって照らされ、偽りの後光が差して神々しく見えた。

『弱肉強食の新世界には神も仏もないのか……』


「…………、その女の衣服をすべて引き裂き剥ぎ取って、まんじ柱に吊し上げろ!」

 帝王シャーキンがそのように命じると、ペルシア帝国軍の兵士たちは更に大きな声を上げてセイラさんに一斉に襲い掛かり、たった一人の華奢な女を相手取って、恰も蜜にたかる蟻のように群がった。


『ダイサクさん、お逃げなさい…………』

 最後にセイラさんの唇がそう動いたような気がした……。

 セイラさんは絶望を映した瞳で、荷馬車の陰にひっそりと隠れていた私を一瞥すると、天光に向かって真っ直ぐに左手を伸ばしながら、猟奇的なペルシア帝国の兵士たちの渦に飲み込まれていった。

Youユー areアー Princessプリンセス ofオブ Princessesプリンセシス

 君と一緒ならぁ~、どこへでも行けるぅ~』


「ひゃっはっぁぁぁ~、女をひん剥いて吊し上げろ!」

 一人のペルシア帝国軍の兵士が奇声を上げると、他の兵士たちも気勢を上げてそれに呼応した……。


「いやぁぁぁ~」

 セイラさんの純白で金の刺繍の入った清楚な服は、無残にもたちまちのうちに引き裂き剥ぎ取られ、ついに彼女は卍柱に磔にされてしまった。


「……、火を放て!」と帝王シャーキンが叫んだ。

 卍柱の下の焚き木に火が付けられると……間もなく……もくもくと白い煙が燻り出した。


「槍で突き殺せ! そして……公女の屍を見せしめとし……フランシス公国に真の恐怖を植え付けるのだ!!」

 その声を合図に2人の精強な兵士が其々大槍を構えた。


「ああ~、あぁぁぁ~、神様、フランシス公国の民の命をお救いください」

 セイラはその言葉を最後に煙に包まれて意識を失った。

「愚か者が、われに願いなど届かん。やってしまえ……そして……彼の国に侵攻し民を皆殺しにするのだ!」

 帝王シャーキンが道破すると……、

「ウゥ~ラァ~、ウゥ~ラァ~、ウゥ~ラァ~、ウゥ~ラァ~、ウゥ~ラァ~」

 ペルシア帝国軍の全ての兵士たちは一斉に勝鬨を上げた。


「…………、シーラさん、荷馬車をお願いしても宜しいですか?」

 私はそう言い残すと、荷馬車をシーラに任せてその場から颯爽と飛び降りた。

「熱いわねぇ~、……でも……私そういうの嫌いじゃないわぁ~。いいわよ~こっちは任せて~」とシーラは返事をしてくれた。


『パッカァァァーン!!』

 大きな鐘の音にも似た、フライパンを叩く聖なる金属音が辺り一帯に鳴り響くと、ペルシア帝国軍20万の全ての瞳の熱視線レザービームが一人の御者に放たれた……。


 しかしながら、その男はペルシア帝国軍の中を、まるで無人の野を進むが如くゆっくりと歩いてゆく……。

 そう……私はペルシア帝国軍の全員に届くように、パンチャック(双節揚焼鍋)を力いっぱい打ち鳴らしたのだ。


 怒りのパワー全開……、そろそろおいらの出番が来たようだ。

「てめえら人間じゃねぇ~、一匹残らず叩き潰してやる」

 私は右手と右足を前に出して足を大きく開いてうんと低く構えた。そして腰からパンチャックをさっと抜くと、片方のパンチャックを左の脇にすっと挟んで臨戦態勢をとった。

『極悪非道の輩には一片の情けも無用!』


「ホワァッアァァァ~」

 私は今からの戦闘に備えて腹の底から息を吐いて呼吸を整えると、心を無にして周りの敵が仕掛けて来るのをじっと待つ…………。


 前の世界でも理不尽なことは多々あった。そして、私はそれをいつも見て見ぬ振りをして見過ごしていた。

 なぜなら私は余りにも無力で、たとえ私一人がどんなに世界の流れに逆らったとしても、その本流は何も変わらないと思っていたから…………。

 矛盾の原因を探し求め、否定しても仕方ない。『世の中そんなもんだ』と遣り過ごしていたのだ。


 だけど……今の自分ならば……それをひっくり返すことができるかもしれない。

 その理由は、今、私の手にしている武器がフライパンに似ているからではない。それは今の私が世界の理を越えた林檎引力アップルパワーと、それを使いこなす知識の両方を手にしているからに他ならない!


『パッカァァァ~ン!!』

 それ故に私は万感の思いを込めて、パンチャックをもう一度高らかに打ち鳴らして、今だけは無関心を装う過去の自分と決別することにした!


 今の私は一騎当千ならぬ一騎当萬、それはそれでゲーマーとしての心がこちょこちょとくすぐられる。

『正に林檎無双だ! ペルシア帝国軍を蹴散らし、君は生き延びることができるか……ショゥ!』

 私のそのような思いを余所にして……。


『ギロッ、ギロッ、ギロッ、ギロギロッ、ギロッ』

 白いペルシア帝国軍の異形の兵士たちが私を睨みながら、

『カチャ、カチャ、カチャカチャ、カチャッカチャッ』

 ペルシア帝国軍の兵士たちの怒りと武者震いで、頭蓋、牙を繋いだ首飾り、金銀の手足首のブレスレットの飾りが小刻みに震え音を立てている。


「只の御者風情が何をほざいておる! ……直ぐにそやつを始末しろ……頭と体の皮を剥いで八つ裂きにし、剣歯虎サーベルティガーに食わせてしまえっ!」

 そう言って帝王シャーキンが兵士たちに発破をかけた。

「うらうらうらうらぁぁぁ~、ひぃやぁっはぁぁぁ~」

複数の兵士が叫びながら、一斉に半月刀シャムシールを携えて特攻して来る……。


『クイッ、クルクルクルッ、ドドンッ、パァ~』

 私は襲い掛かってきたペルシア帝国軍の兵士たちを、一切無駄のない円の動きで一網打尽に火元へ投げ飛ばし、セイラさんを焼き殺そうとしている卍柱の火元を吹き飛ばした……。


物理障壁プロテクション二重掛けダブル

 私はセイラさんをを防護するために、無詠唱で物理障壁プロテクションの魔法を二重掛けした。

 そして、兵士が落とした半月刀シャムシールをさっと拾い上げると、帝王シャーキンの顔目掛けてスリングショットでシュッと投げつけた!


『ビイィィィィィ~ン…………』

半月刀シャムシールは奴の左の頬をかすめると、背中の椅子に突き刺さり小刻みに左右に揺れた……。

 帝王シャーキンは頬から流れる血を長い舌で大蛇のようにぺろりと舐めずると、目を見開いて私への怒りを露わにする…………。


『ドッドッドッドッドォッ!』

『ゴォゴォゴォゴォゴォッ!』

 間髪入れずに、私の両脇から三角龍トリケラトプス毛巨象マンモスが牽引する戦車が突撃して来た。


『クイックイッ!』

 私が中指と人差し指で三角龍トリケラトプスの戦車を手招きすると、興奮したその戦車はもっともっと速度を上げて突進して来た。三角龍トリケラトプスは衝突の瞬間に私を突き飛ばそうとして、ぐいっと長く鋭い角を突き上げた。


 私はその瞬間を狙って角に右手首を当てて螺旋に引き込むと、三角龍トリケラトプスの突進力を自分の右腕の靭帯と筋を使ってぐんぐん方向ベクトルを転換させ、三角龍トリケラトプス平衡バランスを大きく崩した…………。

『くっついたら、もうはなれないよ! 面舵一杯……よ~そろ~』


「ホワッチャァァァ~」

 私が怪鳥のような掛け声を上げながら、平衡を崩した三角龍トリケラトプスの顎へ、パンチャックによるジェットアッパーからの追撃のとんぼ返り蹴りサマーソルトキックを食らわせた!


『ドッガァァァ~ン』

 大きな音を立てて三角龍トリケラトプスの戦車がひっくり返った……。


林檎加速アプセル!」

 私は直ぐに追撃してきた毛巨象マンモスの斜の位置に加速移動すると、毛巨象マンモスの右足の膝裏を針の先ピンポイントで狙いパンチャックを叩き込む……。


『パッカァァァーン…………ドッドッドッドォォォォォ~ン』

 毛巨象マンモスが牽引する戦車は大きく平衡を崩すと、大型牽引車トレーラーが横転するように、周りの兵士たちを巻き込んで横倒しとなった!


 それから私は、次々と襲い掛かって来るペルシア帝国軍の戦士たちに対して、防御と攻撃を円周(円を描くように動く)して戦った。

 心と体、指先から足の爪先に至るまで意識を集中して、中心をしっかり保ちながら円を描くことでより強い円となり技となる……。

 私は自分で思い描いた直径3m程の円の上をひたすら歩きながら、その円の流れるような柔らかな動きを紡いで螺旋とし、ペルシア帝国軍の兵士たちをどんどん導いては、片っ端からなぎ倒して行った!


 ちぎっては投げちぎっては投げと有象無象を打倒してゆくものの、余りにも敵の数が多すぎて、このままではいつまで経っても切りがない。

 そもそも地球上では3分、水中では30秒で息が切れてしまう私の体力がそれほど持つはずもない…………。

『10万の兵を1人3秒で片付けても30万秒、83時間、少なくとも3日3晩と半日は掛かる計算になる』


 そこで、アップルパワーを利用した理外の『取って置き』を使うことにした。

 この技は人の些細な幸せを踏みにじる、偽りの神の軍団を一網打尽に片づける必殺技だ!

 それなのに、核兵器のように放射性物質をばら撒かないし、二酸化炭素を始めとした温室効果ガスも排出しない。安全、安心、清潔な超戦略級の流星技だ!


『りゅうせい~たぁつぅまぁきぃぃぃ~(流星竜巻)!』

 私はパンチャックを切り離して左右の手に一本ずつ持つと、両腕を真っ直ぐ開いてフラミンゴみたいに一本足で構えて、アップルパワーをフルに使ってちょっと苦手な高速回転を始めた。

『悲しいけどこれ……戦争なのよね……』


 すると……、私を中心に周辺一帯の大気はぐるぐると凄い勢いで渦を巻き始め、瞬く間に風速は毎秒100メートルに達したのだった!!

ありがとうございました。

いよいよ帝王シャーキンとの決戦です。

帝王シャーキンの真の正体は?

次回をお楽しみに!

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