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22 砂金モグラ

こんにちは、

引き続き『砂漠の都ジプト』のお話です。

どうぞお楽しみください。

【砂金モグラ】


 次の日の朝、私は朝食をとるかどうか、うんと悩んでいた。

――食べるべきか? 食べざるべきか? それが問題だ!――


 なぜ私がこんなことで悩んでいるか……それは、異世界に来てから少しずつ体重が増えているような気がしてならないのであ~る。

 体重計がないので正確には分からないが、感覚的には間違いなく体重が増加している。


 有難く何処ぞの神様から頂いた、かつてのカンフー映画のムービースターのようなルックスと、先生のしごきで鍛え直された鋼のマッスル!

 せっかくの稀有な容姿を崩してしまったら、皆々様に申し訳ない……。

 そこで異世界においても、以前行っていたダイエットをやるかどうかで悩んでいるのだ。

『アチョォォォ~』


◇◇◇


 摂取カロリーを半分に落とした生活を半年間行った、USAにある有名な大学の飢餓実験において、単に食事の量を減らしてしまうと以下のような弊害が生じることが報告されている。


・会話や読書の内容が食べ物のことばかりになる

・体重は平均で17キロ落ちるが、一方で心臓が小さくなる

・疲労感の増加、性欲の減衰、心拍数が低下する

・さまざまな原因から気分が落ち込み抑鬱よくうつ状態になり、活動意欲が低下して何にもする気が起きなくなる


 そもそも食欲が起きるのは、脳にある『食欲の天秤』へ体中からいろんなメッセージが届くからで、その『食欲の仕組み』は次の通りである。


 1) 人の胃は何も食べない状態が続くと、空腹感に関わる食欲ホルモンである『グレリン』を分泌して食欲を促す

 2) 腸、すい臓、脂肪細胞は腹一杯に食べると、GLP-1、インスリン、レプチンなどの物質を分泌して満足状態を伝える

 3) おなか一杯で一旦は快感が満たされても食欲を我慢できなくなる

――飽食の喜びを知ってしまった現代人は、その味を思い出すだけで、食欲が湧き上がってしまうと言うことなのだろうか?――


 それでは食欲を我慢せずにダイエットを成功させ、私たちが健康な体を手に入れるにはどうすれば良いのだろう。

 それには『1日の間に16から18時間の空腹の時間を作ると良い』とされているようだ……。


・残りの8から6時間はたっぷりと食欲を満たすことができる

・慣れると空腹感を感じにくくなる

・空腹時間には睡眠時間を含める

・空腹時間中においても、水、お茶、コーヒーなどのカロリーのほとんどない飲み物は飲んでよい


 以上の理由から、従来の『カロリー制限法』に比べて『空腹時間保持キープ法』は、途中で挫折しにくいのだ。但し、糖尿病、腎臓病、高血圧、痩身、高齢などで健康に不安のある人は、NGなので注意してもらいたい。


 さて、この空腹時に人の体の中で起きていることは次の通りである。

 1)空腹状態になると肝臓で脂肪が『ケトン体』に変化する

 2)ケトン体は血液によって運ばれて全身の細胞に働きかける

 3)ケトン体は細胞の緊急エネルギーとなる

 4)細胞に危機を伝えて老化に関わる酸化、ストレス、炎症を抑える

 5)細胞の中のゴミを掃除してリサイクルする、オートファージー――自食作用――を加速させて、老化や病気から体を守る


 尚、ケトン体に含まれるアセトンという物質は強い臭いを持っていて、汗や尿として酸性のケトン体が排出される際、嫌な臭いがすることもあるので、野菜、果物、海藻、大豆といったアルカリ性の食品を食べたり、筋肉を使う運動を行って、ケトン体を消費することも必要だ。


 兎にも角にもこのような理由で、私はこちらの世界でも悩みに悩んでいるのだ!

――食べるべきか? 食べざるべきか? それが問題だ――と……。


 余談となるが、どうしても食欲を我慢できなくなった時には、最強の食欲コントロール術がある。

 それが『マインドフル・イーティング』と呼ばれている大技だ!


 自分の好きな食べ物だったらなんでも良い。

 例えばレーズンを食べると仮定してみよう。

 あの小さなレーズン1粒を、視覚、触覚、嗅覚、聴覚、味覚を意識しながら、ゆっくりと時間を掛けて食べてみるのだ!

 五感を使ってレーズンとじっくり向き合い味わうことで、その一粒で空腹を紛らわせて食べ過ぎを防ぐことができる。

 これが最強の食欲コントロール術の己に打ち勝つ方法と言うことらしい! 

 皆さん、食欲に負けそうになった時には、是非この方法を試してみてください。


◇◇◇


 とりあえず、私は今朝の朝食を抜き、砂金モグラの捕獲のためにジプトの都の郊外へ向かった。


 ジプトの都に来る時にはなるべく目立たぬように、他の旅人と同じくかっぽかっぽとラクダに乗って月の砂漠を遥々と移動して来たのだが、ラクダは前もって予約が必要だし、足も遅くて移動に時間がかかる。

 そこで今回は林檎引力アップルパワーを使って、自前のサーフボードで狩場まで行くことにした。

 なぁ~に、目抜き通りメインストリートから外れてさえしまえば、砂塵に紛れて何が何だか分からないはずだ……。


 サーフボードは、ウルルの村で農具用に10年間乾燥させていた樫の木をもらって製作した。

 樫の木は乾燥に5年から10年と非常に長い年月を要するが、その分50から100年持つ程の、割れたり反ったりしない耐久性が得られる。日本においても弥生時代から木製農具の木の材質には、耐久性が求められる堅い樫の木がよく使われていた。


 この樫の木で拵えたサーフボードは、デザイン塗装こそしてはいないが、藍染用の藍液に浸すことで全体が美しい青色に着色されていて、自画自賛ではあるが何とも言えずかっこいい~。

 サハラウの砂の砂漠を、まるで『BIGWAVEビッグウェーブ』さながらにカッ飛んで行くのは実に爽快だ。

 YouTubeにこの動画を投稿したら100万回再生も夢ではないだろう! 

――おじさんの私は、YouTubeで投稿をやったことは一度も無いのだが――


 サハラウ砂漠に吹く強い風は、その砂を吹き上げて砂丘を作り、その上に芸術家アーティストにも負けない風紋を描いていた。

 一方、砂丘の先端は崩れ始めており、それはまるで大海原の大波のような様子だった……。


 私は青いサーフボードを操って、その美しくも激しいサハラウの大砂原を、砂塵を巻き上げながら時速100キロメートルで疾走し、あっという間に『砂金モグラ』の狩場に到着した。


 しかしながら、ここまで来てからの問題は、獲物の『砂金モグラ』がどこにいるか私には分からないことだ……。

 日本モグラならば、黒土がぽっこりと盛り上がっているモグラ塚さえ見つければ良いのだが、サハラウの砂漠では、砂が盛り上がっても直ぐに強風で掻き消されてしまう……つまるところ、目印やヒントとなるものは何もなかったのだ!


「ぎゃぉぉぉぉ~」と一人大声でサハラウの砂漠に向かって叫んでみても……。

――なんにもない、なんにもない、全くなんにもない――

 見渡す限り、そこには只々、橙黄色の砂漠と青い空が広がっていた。


「仕方ない、力業で推して参る!」

 私はアップルパワーを使った何でも引っぱる力で、蟻地獄アリジゴクのようにサハラウ砂漠に渦潮の如き大きなすり鉢状の落とし罠を作り、その罠に砂金モグラを引っ張り込むことにした。


 ちなみに、アリジゴクはウスバカゲロウ類の幼虫で、体長約1センチ、鎌状の大あごを持っている。

 乾燥した土をすり鉢状に掘って巣を作り、巣の底に潜んで罠に落ちたアリなどを捕らえ、その獲物の体液を吸って成長する。

 昭和生まれで田舎育ちの皆さんならば、子供の頃、神社の軒下のアリジゴクのすり鉢状の罠へ、ポトンと蟻を落として遊んでいたので、恐らく比較的身近な生き物だったであろう……。


「アップルパワ~解放5%」

 砂がそろりそろりと動き出し、

「アップルパワ~開放10%」

 鳴門の渦砂うずしおのように砂が渦を巻きさらさらと流れ出す。

「……こんなもんかな♪」

 私は直径30メートル程のすり鉢状になった砂底の中心に陣取ると、パンチャックを両手に持って心を無にし、砂金モグラが罠にかかるのをじっと待つ……。


「来た、来た、来たぁ~」

 暫らくすると、砂金モグラらしき金色の毛に覆われた、手のひらサイズのピカピカの魔獣が、サハラウ砂獏に溺れながら、藁をも掴むように流れてきた。

 砂金モグラは必死で流れに逆らって、ばたばたと短い手を回して、サハラウの渦潮からの脱出を試みようとしている。

――所詮は蟷螂の鎌もどきの無駄な抵抗か……可愛いのぅ~――


「アッチォォォ~、アン、ポン、タァァァ~ン」

 私は相棒の双節揚焼鍋パンチャクを構えると、力尽きて今にもダウンしそうな砂金モグラにとどめの一撃をぶちかました――


『パッカァァァーン』

 私は手首のスナップを利かせて砂金モグラの横っ面を叩いて気絶させると、砂金モグラを麻袋に入れて、先ず1匹目の捕獲に成功した。

 砂金モグラの砂金袋にはそれなりの金が詰まっているのだろう? 小さな体の割にずっしりした重さと、がっちりした硬さを感じ、私は嬉しくて思わず心の中で叫んだ!

『砂金モグラ、捕ったどぉ~ゴールドラッシュじゃぁ~』


 同様の方法で他2匹の砂金モグラを捕まえたところで、想定外の事件が勃発した……。

『ジャ~ジャン、ジャ~ジャン!』

 サハラウ砂漠の渦砂に乗って、怪しく大きな背びれが私の方へずんずんと迫って来たのだ! 

 あのクロコダイルのような深緑色に光る不気味な影は……。


『ジャンジャンジャンジャンジャン!』

「あれが噂の『サンドシャーク』か?」

 サンドシャークらしきものは、渦潮の流れに乗って速度を上げてすり鉢罠の底まで来た途端、私に噛みつこうと砂から飛び出すと、がばっと大口を開けて食らいついてきた。


「サンドシャークに間違いないようだが……」

 サンドシャークは、体長は4メートル、体重35キロ程度の、サメと言うよりはむしろ背びれのあるワニの姿形を呈している。

 そしてサンドシャークの動きは、私にとって遅すぎてあくびが出るものであった。


林檎加速アプセル!』

 私はアップルパワーを使って超加速すると――

「見た目がワニなら、これでどうだ!」

 私は左斜め後ろに下がりながらサンドシャークの死角に入ると、奴の口の中に左手のパンチャクを縦に突っ支い棒として突っ込みながら、もう片方のパンチャックを大口の奥深くに滑り込ませた……。


『ザザザザザァ~』

「アガッ、グッグッグッグゥゥゥ~、グゲェ~」

 口の奥にある口蓋弁を喉に押し付けられたサンドシャークは、その喉から肺へ大量の砂が流れ込み、呼吸できずにサハラウの砂漠で溺死した……。


 脳が小さくて脳震盪を起こし難い鰐を無傷で手に入れるには、我ながら砂漠の砂の流し込みは中々良い作戦だった。

 サハラウ砂漠の砂をたらふく呑んで、サンドシャークのお腹がポッコリしていたのは玉に瑕ではあるが……。


「うーん、ワニダフル」

――今朝は朝御飯を抜いたこともあり、ギャグの切れがいいよ~――

ありがとうございました。

7話の『うがい無し歯磨きのすすめ』、

11話の『若返りの極意』、

14話の『集中力を高める奥義』、

16話の『認知症予防の神髄』に続いて、

22話では『ダイエットの秘術』を公開しています。

皆さんも是非お試しください。


さて、次回はダイサクの天敵になるであろう、

ミスリル等級の冒険者サンバルガンが登場します。

次回をお楽しみに!

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