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21 砂漠の都ジプト

こんにちは、

今回は砂漠の都ジプトのお話です。

どうぞお楽しみださい。

【砂漠の都ジプト】


 朝焼けの光の空にはまだ月が薄く見えていて、見渡す限り砂しかないサハラウの砂漠には、真っ赤なサボテンの花があちらこちらに咲いている。


 私ことダイサクは、三年前にこちらの異世界に転生して、今は気ままな一人旅を続けている。

 今のところ、これといった目的があるわけではない……。

 冒険者として世界を見物しながら、、唯雲が流れるように、面白おかしくぶらぶらと旅を続けているだけだ。


 私は今ナイラ川のほとりにある『ジプトの都』を訪れている。

 ジプトの都の周囲は、粘土で作られた日干し煉瓦で高い城壁が築かれていて、その中央には天を衝くほど高い、巨大な白茶色の塔が見えている。

 その塔の上部は砂塵や雲で霞んでいて、ジプトの都のどこから見ても、その全貌を見ることは叶わないであろう。


 この天にも届きそうな塔は『バベルの塔』呼ばれる迷宮――ダンジョン―で、この塔を同心円状に取り囲むように、ジプトの都には三枚の城壁が築かれていた。


 外側の城壁はサハラウ砂漠からの、砂塵、砂嵐、魔獣の侵入を防ぐため。

 真ん中の城壁はジプトの都の街と王城のエリアを区分けするため。

 内側の城壁はバベルの塔から抜け出した魔物や、スタンピードによる魔物の暴走による被害を最小限に抑えるため。

 それぞれの城壁は違う目的で建築されていて、各ゲートにおいてジプトの都の衛兵たちが昼夜を問わず警備と監視を行っていた。


 街から王城へ繋がる二つ目の正門の傍には、方尖柱オベリスクと呼ばれる記念碑モニュメントが建てられていた。

 方尖柱は一片2メートルの四角形の断面をもち、上方に向かって徐々に狭まった高さ23メートル程の長い直立の石柱であり、先端部はピラミッド状の四角錐ピラミディオンになっている。その四角錐は金や銅の薄い板で装飾されていて、太陽神の象徴シンボルのようにキラキラと光を乱反射させて輝いていた。

――胸に燃えてる日輪は、UFO戦士ダイアポロンか――


 城壁の一番外の門から三つ目の門までは、ずっと一直線で、幅20メートルの広い中道が整備されていた。

 

「…………」私は暫く言葉を失った。

 中道の両側には、堆積した砂が長い年月をかけて固まり、岩石となった砂岩を使って作られた、直径2メートル、高さ12メートル程の円柱が等間隔に並び、それらの円柱と一緒に15メートル程の高さのナツメヤシが等間隔で植栽され、実に幻想的な風景を想像していたのだ……。


 旧約聖書にも登場するこのナツメヤシは『生命の樹の原形モデル』とも言われ、古代から砂漠の民に愛されてきた果実である。

 たっぷりの食物繊維をはじめとして、カリウムやマグネシウム等のミネラルを含む栄養素がぎゅっと含まれている。

 木に実をつけたまま自然乾燥し、太陽の光を浴びて樹にぶら下がったまま完熟していくナツメヤシは、天然の乾燥果実ドライフルーツであり、干し柿に似た酷深い甘みあるこの味が、私は大好きだ!


 一方、三つ目の正門からバベルの塔の入口までは、高さ18メートル、直径2.8メートル程の円柱が、中道に沿って134本も林立していた。

 それらはパピルス列柱と呼ばれて、天地創造の大地と言われる『原初の丘』にある葦――パピルス――の湿原を表しているとの話であった。


 ジプトの都は人口30万人程の異世界では大きな都市だ。

 私はサハラウ砂漠に接する外門からジプトの都へ入り、ジプトの街をゆっくり散策した後で、いつものように冒険者ギルドへ向かった……。


 冒険者ギルドは中壁の城門のすぐ近くにあった。

『ギィギィィィ~』

 私は入口の両開きのドアを押し開けて、そのまま真っ直ぐ受付へと進んだ。


「こんにちは」私が声を掛けると、

「こんにちは」受付嬢が麗しい声で返事をした。

 その受付嬢!……クレオパトラかジャスミンか、黒紅の黒い髪、燃えるような小麦色の肌、ブラウンダイヤモンドの淡い琥珀色の瞳、目鼻立ちのはっきりとした絶世の美女だった。


 彼女の左胸に付けている名札を、ちらちらと見て名前を確認しようとしたのだが、私は未だこの世界の文字を殆ど読むことができない。

「……………」

 彼女の豊満な胸を横目に私の動きは固まってしまった。


「ミフェラ、私の名前はミフェラです」

 私の動きを察して彼女は名前を教えてくれた。

――お主、只者ではないな――


「ミフェラさん、はじめまして、妖精のような美しい名前ですね」

「はい、ありがとうございます。こちらは初めてですか?」

 ミフェラは私の誘い掛けをさらりとかわした。


「……はい、ジプトの都は初めてなので色々と情報を頂きたいのですが?」

「どのような情報がご入用ですか?」

「先ずはジプトの都のクエストの情報を知りたいので……割の良い依頼は何かありますか?」

「そうですね……高価買取の魔獣は『砂金モグラ』でしょうか」


「砂金モグラ?」

「はい、砂金モグラです。砂金モグラは金が大好きな変わったモグラで、サハラウ砂漠の地中にある砂金を食べて体内の砂金袋に貯えています」

「いくらぐらいで買い取ってもらえるのですか?」

「砂金モグラの買取価格は貯えた金の重量で買取価格は大きく変動しますが……成体であれば金貨3枚位が取引の相場でしょうか……」


「砂金モグラの捕獲は難しいのですか?」

「はい……砂金モグラは常に砂の中に潜っていて探し難いこと、『サンドシャーク』や『黒影シャドウカンガルー』の生息地と砂金モグラの生息地が隣接していること、それらが捕獲を困難なものにしています。ちなみに、サンドシャークはその皮がクロコダイルのように丈夫で美しく、砂金モグラの数倍の金額で取引されています。しかし、サンドシャークは砂金モグラと比べ何百倍も大きくて獰猛で、ランクの低い冒険者が遭遇すると大変危険です。低ランクのアイアンの冒険者であれば、砂金モグラだけをターゲットにしておいた方が良いと思います」

 ミフェラは品定めするように私をちらりと流し目をすると、そのまま話を続ける。


「それと『黒影シャドウカンガルー』だけには決して近寄らないでください。腕の立つ兵士や冒険者でも簡単にノックアウトされてしまいます」

「ケッ、KOですか……あっ、危ないですね……」

「ご安心ください。シャドウカンガルーの制空拳に入らなければ襲われることはないありません……でも彼と目を合わせないように注意してください……シャドウカンガルーは強者を察知すると、積極果敢に拳闘――ボクシング――を始めようとしますので……もちろんアイアン等級の冒険者であれば、何ら問題ないと存じますが」

 ミフェラは、ジプトにおける魔獣のクエストついて詳しく説明してくれた。


「砂金モグラですか……ミフェラさんと一緒で、とても魅力的ですね」

「…………そうでしょうか」ミフェラは素っ気ない返事をした。

 クレオパトラのような絶世の美女と砂金モグラを、同じ土俵で比べたのは私の大きな失言だったようだ。

――俺って、ほんと、あんぽんた~ん――


「あと、ミフェラさんのお勧めの宿はありませんか?」

 自分の失言に後悔の念でいっぱいになりつつも、失言が後を引かないように作り笑いでミフェラさんと自然な会話に徹する……。

「はい、中門の入口を挟んで向かい側に『月の砂漠』という、ジプトの冒険者がよく利用している宿があります。ベットも清潔ですし料理も美味しいですよ♪」

「ミフェラさんはどの料理がお勧めですか?」

「私のお勧めは……ターメイヤ、キジバトの丸焼き、モウコガゼルケバブ、モロヘイヤスープでしょうか……冒険者の皆さんに大変人気があります。ちなみに宿代は一泊朝食付きで銀貨2枚程度です」

「おいしそうですね、絶対に食べま~す」と私は大げさに笑って会話を盛り上げる努力をする。


「それから、『バベルの塔』について教えてもらえますか?」

「はい、迷宮についてですね……バベルの塔では階層が上がる度に段々とモンスターが強くなっていきます。現在バベルの塔は23階層までが攻略されていますが、その先に何があるのかは全く分かっていません。バベルの塔の頂上は天空と繋がっていて、未知の文明と遭遇できると言われていますが、そこまで到達した人が一人もいないので、真実かどうかは不明です」


「天空……未知との遭遇……途中、特に注意すべき魔物は何でしょうか?」

「はい……バベルの塔では特に『ゴーレム』という魔物に注意してください。たくさんの冒険者がゴーレムの犠牲者となっています。ゴーレムは力が強いこともありますが、何よりも魔法耐性が飛び抜けています。万が一複数体で出現するとたいへん危険で厄介な魔物ですよ」

 そう言うと、ミフェラはきっと凄みを利かせた怖い目で私を睨んだ。


「はい、ゴーレムですね、決して戦いは挑みません!」

 すぐさま私は姿勢を正して返事をした……。

「それから特に気をつけなければならない魔物は『サボテンダー』です。自身が身の危険を感じたとたん、全身から一万本の針を全方位に放って誰彼構わず致命傷を与えてしまいます。サボテンダーは危険度AからSランクの魔物に匹敵しますが、サボテンダーから襲い掛かってくることはありません。決して攻撃せずに、そのまま見過ごしてください」

 ミフェラはバベルの塔について懇切丁寧に説明をしてくれた。

「ゴーレムとサボテンダーですね。注意します!」

 私はミフェラ先生の生徒になった気持ちで、素直に元気よく返事をしたのであった……。


◇◇◇


 それから、宿の『月の砂漠』に移動して宿泊手続チェックインをした。

 夕食を食べ終わると特にやることもないので、少し早いけれども就眠することにする。

――実に健康的な生活だ――


 私はいつものようにベットに横たわると、気持よく眠りにつけるように歌を作って口遊んだ……。 

 今日は大リーグの野球愛唱歌の律動リズムに合わせて歌うことにする♪


『私を迷宮ダンジョンに連れてって~ 

 バベルの塔へ連れてって~

 ポーションとキャラメルポップコーンを買ってねぇ~

 宿に戻れなくったってかまわない~ 

 さあバベルの塔の頂上を目指しましょう~

 魔物に勝てなかったら許さない!

 ワン、ツー、ジャブのストレイトでアウト! 昔なじみの野球の仕合でぇ~

 ワン、ツー、スリーストライクでアウト 昔なじみの武術の試合でぇ~』


 私はオリジナルソングを口遊みながら、深い眠りに落ちていった……ZZZ。

ありがとうございました。


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