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14 吸血鬼

こんにちは

終に連続殺人鬼との偶然の戦いの火蓋が切られました。

勝敗の行方は?

どうぞお楽しみください。

【吸血鬼ドラキュラ】


 私が戦いの最中に時々にやりと笑うのは、単に格好つけているからではない。

 それは集中力を大きく高めるためなのだ……。


◇◇◇


 集中力と感情は、公園のシーソーで遊ぶ時のように『ギッコンバッタン』と上下する関係で、集中力を上げるには感情が積極的ポジティブになれば良い。

 つまり、リラックスして笑顔を見せて腹から目一杯声を出せば、人の集中力は高まり超集中状態と呼ばれる『ゾォォォ〜ン』に近づいて行く!


 逆に感情が消極的ネガティブになると人は集中することができなくなる。

 緊張して、不安になり、恐怖が生じると集中力は低下してしまうのだ……。

――大事な場面では決してびびってはいけないと言うことだ――


 ここ一番の勝負の時には、今まで自分が積み上げてきた努力と汗に任せて、適当かついい加減に臨む方が、最終的に良い結果をもたらすことができる……。

 そう考えると、甲子園球児のお兄さんたちが互いに声を掛け合って鼓舞しているのは、集中力を高める方法として実に理にかなっている!


◇◇◇


 終にドラキュラが暗闇から姿を現した……。

 吸血鬼はつるべ井戸の上に置かれた細い葦簀の覆いの上に、まるで足でピアノの鍵盤を弾くかのように佇んでいた。

――ドラドラッキュキュ、ドラキュラ~ ドラドラッキュキュ、ドラキュゥ~ラァァァ~――


 ドラキュラは白シャツに真っ赤なネクタイ、パリッとした黒い上下のスーツに、裏地が真っ赤な黒い外套マントを身に着け、黒髪はリーゼントで固めたように怒髪天を衝き、肌は病人のように青白く、目が爛々と赤く輝いていた……。


「……それでは……少し遊んでやろう」

 ドラキュラは小さな私を見下してそう言った。

「舐めてるとジェリーみたいに、窮鼠トムを嚙みますよ!」


『チュッ』

私は少年のように可愛く唇をつんと尖らせてやった……。


「エロイムエッサイム 、我は求め訴えたり……悪霊退散、ハァッ!」

 私は続けてパンチャックを十字にクロスすると、ドラキュラに弱点であるはずの十字架を模して掲げ叫んだ……。


「フフッ、何をやるかと思えば……他愛ない……私は『魔人吸血鬼ドラキュラ伯爵』だといったはずだ……単なる吸血鬼ではない、魔人なのだ……吸血鬼の弱点は魔人に進化した時点で克服している……つまり、貴様らとは『れぇべるぅ~』が違うのだよ『ぅれぇべるぅ~』が! 銀のロザリオ、聖水、玉葱、人参、ほうれん草、神聖なる力も――月夜に提灯――全て今の私には何の役にも立たない。ましてや今宵は満月……私の魔力は最高潮だ……天使でさえ、この魔人ドラキュラ様を倒すことなどままならぬわっ!」


『ブラッディソォォォ~ド』

 ドラキュラがそう叫ぶと、右手に大量の血が集まって刀身が赤い異形な剣となった。

「それでは、お前の血を全て吸い尽くしてやろう! ハァッ~、ハッハッハッハッハァァァ~」


『ブラッディバレット(血弾丸)!』

 ドラキュラがこちらに向かって血の礫を放つと、それらは途中で硬化し血の弾丸となって私を狙い打った――


『カッカッカッカッカ~ン』

 私のパンチャクがブラッディバレットを弾き返した時、ドラキュラは既に『ブラッディソード(吸血剣)』の間合いに入っていた――


『キィ~ン、キュイン、キュキュキュィィィ~ン……バチバチバチッ』

 ドラキュラのブラッディソードをパンチャックで受け流すが、吸血鬼の力は尋常ではなかった。

 私が攻撃を上手く受け流しているにも関わらず、パンチャックからは幾つもの大きな火花が、溶接の火の粉のように音を立てて辺りに舞い散った……。


「アチョォワァァァ~」

 それでも右のパンチャックでドラキュラの吸血剣を受け流し、そのまま自ら体を180度転換してくるりと回ると、左のパンチャックで吸血鬼の顔面に渾身の一撃を叩き込んだ――


「えっ……暖簾に腕押し……全く手ごたえがない……」

 その瞬間、ドラキュラは無数の蝙蝠のような真紅の赤い魔素となって飛散し、一旦その場から消えたように見えたが、直ぐに真紅の赤い魔素となって集合すると、再び吸血鬼にその姿を変えた……。


「ハァッハッハッハッハッァ~ 魔人となった私は不死身なのだ……太陽の光でさえ私を焼き尽くすことはできない……私を構成する魔素を全て一度に焼き尽くすことなど不可能なのだ!」

 ドラキュラはそう言って、とっておきの必殺技を出してきた……。


「貴様とじゃれ合うのはもうやめだ……さっさと死ぬがいい……」

『ブラッディレイン(血の雨)!』

 ドラキュラが両手を開いて天を仰ぎ見ると、空から金ではなく無数の血の雨が赤い鏃となってざざっと降ってきた。

――これは流石に避けようがないな――


縮空シュックウ!」

 私はアップルパワーを使って空間を圧縮してショートカットの近道を作り、ドラキュラのブラッディレインの攻撃範囲をすっ飛ばして、吸血鬼の真横に瞬間移動、得意の必殺技を叩き込んだ――


流星りゅうせい真空しんくうとび膝蹴ひざげりぃ~』

「アッチョォォォ~ァッ」

私は林檎引力アップルパワーを開放して超加速、空気との摩擦で真っ赤に燃え上がった膝を、ドラキュラの右の蟀谷こめかみに蹴り込んだ――


『グワァシャッン、パッゴォォォ~ンッッッ』

 潰れて弾ける音と共に、ドラキュラの首から上は確かに燃えて吹き飛んだように見えた……。

 しかしその刹那、吸血鬼の首から下は深紅の魔素に変わり、またもやこちらの攻撃を無効にしてしまった……。

――魔人となったドラキュラを倒すには、全ての魔素を一度に焼き尽くして、一気に灰にするしかないのか?!――


「やってやろうじゃないの! 燃えて……きた、きた、きたぁ~」

――『ピッピー』選手交代――

 私はアイテム袋からアイアンカイザー(鉄拳鍔)を取り出すと、さっと両の拳に装着した……。


「フゥォアァァァァ~」

 腹から息を吐きながら足を大きく開いて右手と右足を前に出し、ドラキュラに対して体を真横に構えて親指で左の頬に付いた血をすっと拭うと、右手人差し指をくいくいっと曲げて吸血鬼を挑発した……。

――さぁ……第2ラウンドの始まりだ! 『カ~ン』――


「きっさぁまぁ~……たかが人間の分際で調子に乗りおって……直接この手で八つ裂きにしてくれるわぁ~」

 そう叫ぶとドラキュラは空手で突っ込んできた。


「グロロロロォォォ~」

「アチョォォォ~」

『ギャン、ギャン、ギャン、ギャン、ギン、ギャギャァァーン』

 ドラキュラの赤い血の爪と、私のアイアンカイザーが交差して火花が散った……。


 それでも武術では私の方が何枚も上手だ!

 異世界こちらでは3年しか修行を行っていないが、日本では50年以上の間、雨の日も、風の日も、暑い日も、雪の日もずっと技の研鑽を続けてきた。

 私の努力と汗の結晶がこんな吸血鬼如きにに負けて良いはずがない!

――負けられない戦いがここにもある――


 ここで遂に私のアイアンカイザーを使った連撃コンボが発動する……。

 ストマックブローから地を這うジェットアッパーカットでドラキュラを宙に浮かせてからの――


「ハァッ、リィッ、ケ~ン(破理拳)、ダイサクゥ~」

 パンチとキックのフルボッコで天空へ駆けあがり――


「ハァァァッ、テコンドー流かかと落とし!」

 連撃の頂点に達した瞬間、ドラキュラの脳天に右の踵を叩き込んだ――


『ドッガァァァーン』

 ドラキュラは真っ逆さまに落ちて地面に激突したように見えたが……。

 吸血鬼はその前に真紅の魔素こうもりとなって拡散し再び集合すると、何事もなかったように襟を正して私の前に佇んだ……。


 「私は不死身だ! 貴様如き蚊蜻蛉の攻撃など……いくら受けようとも痛くも痒くもないわ……今度こそ……貴様をこの手でバラバラにしてやる!!」

 ドラキュラは怒りの感情を露にして大声で吠えた――


『ブラッディクロォ~(真紅血爪)』

 ドラキュラの両手の爪が50cm程の長さに伸びて真紅に輝くとき、そのブラッディクローで私の首を切り裂こうと、馬鹿正直にも一直線に飛び込んできた。


「勝機!」

 私は柔術の入身を使い斬り掛かってくるドラキュラの右足の前にすっと入ると、身体を横にしてブラッディクローを紙一重で躱し、そこから奴の右手首を右手で掴んで軽くくいっと引いて重心を崩した。

 それから、そのまま左足を軸に270度回転しながら左手で奴の左の襟首を掴み、必殺の投げ技に繋いだ――


「二段巴投げぇぇぇ~!」

 私はドラキュラの襟首を薬指と小指で掴んで腹を蹴り上げ、空中で一回転してから流星の大技を繰り出した!

――よっ、待ってました……大統領――


流星地獄車りゅうせいじごくぐるまぁぁぁ~!』

私はドラキュラの腹に潜り込んだままアルマジロのように体を丸めると、アップルパワーを解放して力のベクトル方向を360度回した。

 すると2人は小型電動モーターの如く高速で回転して真っ赤に燃える塊となり、吸血鬼は地面と空気との摩擦熱によって、背中からぐんぐん削られて火の粉となっていった……。


「そんな馬鹿な……魔人となった不死身の身体がぁ〜……きっ、貴様は……貴様は一体何なのだぁ〜……消える……消える……私が消えていくぅぅぅ~……そっ、そんな……そんなぁ~、うぎゃあぁぁぁぁぁぁ〜」

 断末魔と一緒に最後の真紅の魔素こうもりが燃え尽きた時、魔人ドラキュラ伯爵は全て燃え尽きて真っ白な灰になった……。


「やはり、最後に吸血鬼を倒すのは太陽だったな、逃がサ~ン!」

 私はカッコよく決台詞きめぜりふを吐いたのだが、私も奴と一緒に高速回転していて目が回っており、くらくら、ふらふら、よれよれの千鳥足、酔っぱらいのようにそのままよろけて……。


『ガッシャーン、ギュルギュルギュルゥゥゥ~』

 私は手でさえピアノも弾けないのに足でピアノを弾けるはずもなく、身体に葦簀がぐるぐると巻きついたままの状態となり……。


『ヒュュュ~ン、ドッボ~ン、ボッチャン』と音を立ててどんぴしゃで古井戸に落ちてしまった。

「つるべ井戸……ダイサク落ちて……見ずの音」


 今宵もお後が宜しいようで…………。

――ダメだこりゃ~ ジャンジャン♪――

ありがとうございました

 7話の『うがい無し歯磨きのすすめ』、11話の『若返りの極意』に続き、14話では『集中力を高める奥義』を公開しています。

 試合前や試験前のお子さんに是非教えてあげてください。

 お父さんやお母さんの株が鰻登りに上がると思いますよ。

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