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シャベル1本から始めるダンジョン道  作者: はぐれオリハルコン
1/8

*1*アルガス、実家から追い出されるってよ

すいません。また魔が差して書いてしまいました。

何故、短編にできないのか…これが、わからない笑

 

  *1*


「出て征け」

「へぁ?」


 久々に最下層の父親に呼び出された男が開口一番にその言葉を浴びせかけられる。


「なっ…何故ですか!? 父上っ!? 僕は栄えあるこのネクロゴンドに生を受けて早三十年…片時も此処から離れることなく勤勉に努め…」

「この戯けっ!誰が勤勉に努めて、だ!? アルガス!お前はここ十数年ばかりに至っては…単に第四階層のアンデッド倉庫(・・)で惰眠を貪っておっただけではないか!?」


 男は至極納得がいかないといった様子で訴えるも玉座から転げ落ちんばかりになった実の父親であり、この古参であるダンジョン<ネクロゴンドの迷宮>の現ダンジョンマスターであるウィーグラフから怒鳴り返されてしまった。


 ここはその迷宮の最下層。つまりは数多の名声欲しさの地上から迫りくる蛮勇な簒奪者…まあ、体よく言えば冒険者、迷宮探索者などと呼ばれる者達を待ち受ける支配者の住居である。


 そして、歴史あるドクロの玉座に荒くした息を整えて座り直す頭の左右に角を持った老体こそがネクロゴンドのダンジョンマスター。ウィーグラフ・ネクロゴンドである。


 御年三百歳…幾ら短命種である地上で最も繁栄を果たした人間族より長く生き永らえる魔人といっても、そろそろ色々とリタイアしても十分な年齢であった。


 その父親に怒られてションボリするあまり映えない長い金髪に無精髭の青年の名はアルガス。ウィーグラフが儲けた子のひとりである。


「それにしても父上…余りに唐突ではありませんか?」

「フン。良いか、アルガス。間も無く他の上位ダンジョンの管理職を長く務め終えた我が長子。セフィロスが我がネクロゴンドに帰還する。その折にはこの玉座…このネクロゴンドの全権をセフィロスに譲り渡し、余は潔く隠居する」

「はあ。セフィロス…兄上に、ですか?」


 アルガスは思わず生返事をしてしまう。


 だが、無理も無い。アルガスは未だ全ての兄弟と面識があるわけではない。彼は生まれて三十年の月日が流れていたが、上の兄弟は既に軽く年齢が百を超えている。頻繁にこの迷宮へ帰省する兄弟でもなければ名前だけしかしらない存在なのだ。そもそも上の兄弟の多くは既に他のダンジョンへと根付いており、長兄であるセフィロスもその最たるもの。彼はネクロゴンドの名が霞むほどの世界御三家のダンジョンである超有名ダンジョンで管理職を百年見事に勤めあげて、近日このネクロゴンドへと戻ってくる予定なのだ。


「そこでだ、アルガス。余は末子たるお前を可愛がるばかりで我が迷宮で好き勝手やらしておったが…お前の兄、セフィロスが戻りこの迷宮の主となった暁にはそうもいかんぞ?」

「…………」

「アイツは有情な余とは違って完璧主義者だ。その冷徹さには父親である余ですら身震いするほどなのだ。暇を持て余しているお前のような暇人を放っておいてはくれぬ。実の血を分けた弟と言えど、どのような処分を下すかは……わかるな?」

「…………」

「…アルガス。このままネクロゴンドに何も貢献できずに去らねばならないお前の悔しさは…余も十分理解しているつもりだが…だがな、わかってくれ。幾ら長所の無いお前でも余にとっては可愛い…」

「…あの、父上」

「息子…なんだ?」


 アルガスは既に取り繕った真面目な顔をやめて普段通りのやる気の無い顔へと表情を戻すと、ウィーグラフの隣をズイと指差した。


「父上は僕を末子と言いましたが…そこのミルウーダこそが末子では?」

「…………」


 ウィーグラフは目頭を熱くしていたのところに水を差した可愛い馬鹿息子へ盛大な溜め息を吐いた。


「アルガス…余にとって子とは男子のことを指すのだ。娘はいずれ他のダンジョンへと嫁がせねばならぬだろう? お前の姉であるミレーユやヨヨもそうであったろう」

「……ヨヨ姉上は確か嫁ぎ先の部下との不倫で離縁されてしまったのでは?」

「ゴホンゴホンッ!そ、そのような些末な事は良いであろう…全く百に満たない我が子はどうにも落ち着きがなくて困る」

「ですが…ミルウーダも立派なネクロゴンドの一員でしょう? しかも、ミルウーダは歴代の中で唯一の万能(・・)タイプなんですから。いや、いっそ僕の妹を父上の跡継ぎに…」

「兄上」


 いつものようにのらりくらりと躱そうとして食い下がるアルガスの言葉が凛とした少女の声によって遮られてしまった。


 虹色の髪に力強い黒曜の角を携え、腰の後ろからは太いガーネットの如き輝きを放つ鱗に覆われた尾を揺らす少女。アルガスの腹違いの妹であるミルウーダ・ネクロゴンドである。


 と言っても、両手でギリギリ数えられるアルガスの兄弟姉妹はほぼ全員が腹違いの兄弟である。


 一般家庭からすれば複雑な家庭環境とも言えるが、三百年以上現役であった偉大な父ウィーグラフの血を受け継ぐ子らは同じ魔人との間に生まれた者も居れば優秀なダンジョンモンスターから召し抱えられた者の間に儲けられた者もいる。そして、このミルウーダは後者であり、戦闘に特化したラミアリリス種との混血児だった。故に他の兄弟姉妹とは多少毛並みが違っている。


 ただし、それはこのアルガスにも言えたことだったが。


「兄上…いい加減に観念して下さい」

「み、ミル…? どうしたんだ? いつもみたいに“アルにぃ”って呼んでくれていいんだぞ?」

「アルにっ……コホン。兄上、実は今回のお話は私が父上に直接嘆願したことでもあるんです。父上は当時匿った人間族の奴隷との間に奇跡的に(・・・・)生まれた兄上を殊の外可愛がっておられる様子で…このままだとセフィロス()がこのネクロゴンドを支配したとしても手放す気はなかったでしょう」

「…………」


 ウィーグラフが図星を突かれたように目を逸らす。


「ですが、それ故に兄上は…本来魔人としては在り得ない、魔力を一切持たない“角無し”です。これがセフィロス様が帰還した折に露見すれば歴史あるネクロゴンドの名に傷を付けます」

「ミル…」

「お、おい!ミルウーダ!何もそこまで言わんでも…」


 だがギロリと一番下の娘に睨まれたダンジョンマスターは借りたネコの如く大人しくなってしまう。


「極めつけは…我らダンジョンマスターの一族がそれぞれ迷宮神から授かった”ダンジョンスキル”!例外もなく兄上も持っているはずのスキルが<完全睡眠>です。……こんな寝るだけのスキルで惰眠を貪るだけの兄上が今後このネクロゴンドに貢献することが可能だと、本気でお考えですか?」

「……安眠は保障する」

「「…………」」


 地下と死を司る迷宮神が眷属に与えた力の中にはこのダンジョンスキルというダンジョン内でしか使用または効果が無い能力がある。


 有史以来、数々のダンジョンマスターを輩出してきた魔人の一族。ネクロゴンド家は古きその一抹。現在はミルウーダを例外として、当主であるウィーグラフや他の兄弟姉妹もほぼ戦闘能力を有さず、下手をすれば最表層のモンスターよりも弱いクソザコナメクジなのだ。だが、それと引き換えに必ずダンジョンスキルを持つ為、迷宮界隈では何かと重宝されていた。


「はあ~…可愛い妹にそこまで言われたらしょうがねえなあ。わかったよ。僕はこのダンジョンを出て行くよ」

「おお、息子よ…!」

「結構。なら、早急に出てって下さい」

「「え!? もう!?」」


 アルガスとウィーグラフが親子揃ってその発言に驚愕する。


「長年、兄上の世話役を務めてくれているディリータさんに事情は話してあります。第一階層の出口付近で待って貰ってますから」

「ディルが?」

「待て!ミルウーダ!? こんな事もあろうかと…余が事前に用意していた手向けの品を入れた宝箱が!」


 ウィーグラフが慌てて手をかざすと地面からやたらレトロな演出音と共に大人五人が余裕で入りそうな大きな宝箱が地面からせり上がってきた。


「こんな大きな宝箱まで用意して…父上は甘過ぎます!……きっと、アル兄ならこんな寂れたダンジョンより相応しい場所が…」

「え? ミル、今なんて…」

「御達者で!!」


 真相を確かめる事も叶わず、アルガスは妹の回し蹴りで空中へと吹っ飛び天井に激突することなく上層へとすり抜けるように光って姿を消してしまった。



基本は別作品の没構成を文章におこしてみただけですが(^_^;)

楽しんで読んで頂けるように努めて参ります<(_ _)>

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