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地底人たちそれぞれの最期

 凛子の赤ちゃんは貰われて行き、引き取った2匹も長生きせず、また3匹が残りました。


 ぴん太は既にケージを別にしていたので、正確には2匹と1匹。


 私にはちっとも懐いていないので、はっきり言って初代デグ太と違って、かわいくはありませんでした。

 3匹の繰り広げるドラマが面白かったので、傍観用として楽しんでいましたが、正直かわいくはありませんでした。


 デグ太が死んだ時には10日間ペットロスで苦しみましたが、こいつらが死んでもたぶんペットロスはないだろうな。


 そう思っていました。





 何年前か計算できませんが(←算数バカ)、ちょうど今の季節ぐらいの頃、ぴん太がまず天国へ逝きました。

 あったかい日が続いていました。


 初代デグ太は一年で一番寒いような時期にお迎えしたので、寒さ対策をしっかりしていました。

 ヒーターをケージの外に設置していた(中に設置すると齧るので外付けが推奨されていました)のですが、ケージにふかふかのスリッパを入れてあげたらそれを気に入って、いつも中にすっぽり入り込んで寝ていました。


 メス2匹は暖め合えるので、ヒーターはぴん太のほうに使ってありました。

 それに加えてスリッパも入れておいてあげました。

 しかしおっとりしたデグ太と違って、ぴん太は入れるなりスリッパをおもちゃにして、噛りまくってバラバラにしてしまいました。

 憎たらしいなー……コイツと思って、暖かい日が続いていたこともあり、私は意地悪のつもりでヒーターの電源を抜いてしまいました。


 ある夜、急に寒くなりました。

 仕事から帰ってみると、ぴん太がケージの隅っこで凍死していました。


「おまえがスリッパをバラバラにしちゃうからだぞ……」

 そう呟いたあと、すぐに私は言いました。

「……ごめん、ぴん太」


 4歳と8ヶ月でした。

 飼育下のデグーの平均寿命が6歳だそうですので、まぁ、長生きしたとは言えない。

 お墓を作って弔ってあげました。





 その約一ヶ月後にはすぐ、凛子がぴん太を追うように、天国へ逝きました。

 ちゃめ子と同じケージで仲良くやっていたのですが、それまで元気にやってたのに、仕事から帰ってみると急にヨロヨロになってました。

 原因はわかりませんでしたが、それから程なくして天国へ。

 いつも巣穴の中に仲良く並んでたちゃめ子が、ゴミ出しするように巣穴の外に放り出していました。





 一番年上のちゃめ子が最後まで残りました。

 一人きりになっても相変わらず私には懐かず、私が近づくと『ヂヂッ(敵襲)!』と叫んで逃げます。

 ケージの中と外とで見つめ合って、「なんで愛し合ってもないのに、あなたはここにいるの?」と私が聞くと、なんにも言わずにじーっと警戒する目で私を見つめていました。



 私は愛し合えるペットが欲しくて、フェレットをお迎えしました。

 期待通り愛し合えて、とても可愛くて、私は彼に夢中になりました。

 ちゃめ子のことは、毎日ごはんと水を与えてあげるだけの居候ぐらいにしか思わなくなりました。



 春くんと名付けたフェレットは優しく、部屋んぽをするちゃめ子を見つけても、一緒に遊んであげてくれました。

 もちろんデグーにとってフェレットは『捕食者』、ちゃめ子にはストレスだったでしょうけど……。



 ちゃめ子もうすぐ6歳というある日、仕事から帰ってみると、ケージの中でちゃめ子がぐったりなっていました。

 毛並みもバサバサで、まぁ、もうおばあちゃんだから、仕方ないよな、かわいくないし、と思い、病院には連れて行きませんでした。

 その代わり、その日からひまわりの種をあげるようになりました。


 デグーは糖尿病になりやすい動物で、リッチなものを食べているとすぐに糖尿病になるそうです。

 それでいてフルーツとか糖分の多いものや、木の実など脂質の高いものが大好きです。

 自然環境下のデグーは、天敵が多いこともありますが、鳥やヘビやキツネから逃げ残ったものも、糖尿病の合併症でコロコロ死んで行くと聞きます。

 飼育下のデグーの平均寿命は6〜8年ですが、リッチなものを食べ続けてたら2年ぐらいになってしまうそうです。


 ゆえに私はせいぜい乾燥野菜、たまにご馳走で燕麦を与えていたぐらいで、基本的にはチモシー(草)とペレット(デグーフードのカリカリ)だけを与えていました。

 ひまわりの種は脂質を多く含むので、デグーは大喜びするけど毒です。人間にとっての唐揚げみたいなものです。


 もう天国が近いんだから、好きに美味しいものを食べなさいと思って、私は毎日ちゃめ子に好きなほど、ひまわりの種をあげました。


 するとちゃめ子、劇的に元気を取り戻しました!


 毛並みは元気だった頃のものに戻り、目に生命の炎が蘇りました。

 動きも運動神経抜群の、壁を使った三角跳びをしていた若い頃に戻り、部屋んぽをさせたら駆け回るようになりました。

 どう見ても死にかけだったのに、元気になるばかりでなく、若返ってしまいました。


 ちゃめ子より随分若いフェレットの春くんのほうが先に病気で天国へ逝ってしまいました……。



 春くんを亡くした一週間後、私は次のフェレットをお迎えしました。

 夏にお迎えしたので『夏くん』と名付けました。

 この子は優しかった前の子と違い、いじめっ子でした(っていうか今も元気で、現在は私にいじめられてばかりですが)。


 部屋んぽをしているちゃめ子と初対面した時、夏くんは早速ちゃめ子をいじめました。


ちゃめ子『あ。フェレットだ。まぁ、私のほうがあいつより強いし……。前を駆け抜けてやれ』

夏くん『ほう……? これは面白いものを見つけたぞ』


 夏くんがちゃめ子に襲いかかりました。

 背中から押さえつけ、口にくわえます。

 夏くんが顔を上げた時、口からちゃめ子がぶら下がっていました。

 ちゃめ子の首の後ろ(ハムスターでもびよーんと伸びるあの部分)を前歯でくわえて、自慢げに私に見せびらかします。

 ちゃめ子は『ピー! ピー!』と泣き叫んでいました。


「コラコラ」と夏くんにやめさせ、それ以来、ちゃめ子を部屋んぽさせる時には夏くんをケージに入れるようにしました。


 ごめん、ちゃめ子。でも面白かった。




 毎日ひまわりの種を好きなだけ食べて、それから約一年、ちゃめ子は生きました。

 ひまわりの種をくれる私のことが好きになったらしく、私の膝の上に乗るぐらいには仲良くしてくれるようになりました。

 それまでは私の接近を感じ取るなり『ヂヂッ!!』と言って逃げてたのに。

 歳を取って丸くなったということもあったんでしょうか……。




 ある日、仕事から帰ると、ケージの中でちゃめ子が安らかに眠るように、息を引き取っていました。

 手にはしっかりと、ひまわりの種を握りしめていました。






 

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