デグーたちは不思議な地底人
ちゃめ子、ぴん太、凛子は仲良くなり、同じケージで3匹暮らすようになりました。
私は3匹ともから『敵』と思われるようになりました……。
3匹のやりとりを見ていると、不思議な気分になりました。
まるで3匹で会話しているよう。
表情も笑ってるようだったり、怒ってるようだったり、悔しそうだったりと、コロコロと変わります。
だんだんと彼らが、ドカヘルをかぶりスコップを肩に担いだ不思議な地底人みたいに見えてきました。
私は嫌われ、触れ合うペットではなくなってしまいましたが、3匹がケージの中で繰り広げるドラマは見ていて面白く、観賞用として私は彼らを大事にしました。
色んなドラマがありましたが、その中でも印象に残っているのは、前回紹介したちゃめ子と凛子の和解、次回紹介予定のぴん太と凛子の結婚。
そしてなんといっても悔しがるぴん太のエピソード。
今回はそれを紹介します。
6月だったと思います。
8月生まれのちゃめ子はもうすぐ一歳、ぴん太も凛子も3月生まれでまだ三ヶ月の子供でした。
身体の大きさはちゃめ子だけ他の子の1.5倍ぐらいあり、その体格差を利用して、ちゃめ子が暴君のように権力をふるっていました。
喧嘩にならないようにと思って餌皿を3つに分け、広いケージの中のなるべく離れたところに置いていました。
「ごはんだよ〜」
私がそう言いながら3つの餌皿を配置すると、3匹とも『わっ! 美味しそう!』みたいにそれぞれの餌皿に向かい、『よーし、食べるぞー』みたいに手をワクワクさせます。
ここでちゃめ子が暴君っぷりを見せました。
『全部あたしのだから!』
そう言うように、ぴん太と凛子がどれかの餌皿に近づこうとすると追い払います。
凛子がサッと近づくと、両手を上に上げて『ガオー!』みたいに襲いかかる。凛子は『ピー!』と泣きながら逃げます。
その隙にぴん太が他の餌皿に近づいてもすぐにちゃめ子は気がつき、そっちにも『ガオー!』、ぴん太も『ひゃー』と言いながら逃げ出しました。
ちゃめ子が3つの餌皿をすべて独占してしまいました。
このままでは子供二匹が飢え死にしてしまうので、私が金網越しに手でごはんをあげていました。ちゃめ子も私が怖いので、それまで邪魔することは出来なかったようです。
そんなある日、ぴん太が勇敢な行動に出ました。
あるいはちゃめ子を馬鹿にするような行為に及びました。
いつものように餌皿を3つ離して置くと、そのひとつに凛子が近寄りました。
ちゃめ子が走ってきて、両手を上げて脅かします。
『ガオー!』
『ぴいぃぃぃ……!』
泣きながら逃げるしかない凛子。
次にぴん太が離れたところの餌皿に近寄りました。
すぐにちゃめ子が気づいて駆け寄ります。
両手を上げて怪獣のように、ぴん太に襲いかかります。
『ガオー!』
しかしぴん太は動じませんでした。
『どーせ襲いかかるフリだけなんだろ?』
そんな感じで、ちゃめ子を無視してごはんを手に持ち、悠々と食べはじめました。
『あっ……?』みたいな感じで動きが止まるちゃめ子。上げていた両手から力が抜けました。
ぴん太の思った通り、襲いかかるフリだけだったようです。
『ほ〜ら、やっぱりw』
そう言って嘲笑うように、ぴん太がごはんを食べ進めます。
その隙に、離れたところでは凛子もごはんにありついていました。
ちゃめ子が再び両手を上げて、ぴん太に襲いかかりました。
『怖くねーってw 襲いかかるフリだけだって、わかってるってw』
完全無視してぴん太はごはんを食べ続けます。
しかし今度はちゃめ子、フリだけではありませんでした。
『うぎゃあおーーー!!』
ほんとうにちゃめ子がぴん太に襲いかかりました。ドタバタ漫画の一場面のように、煙の中でもつれ合うように、ぴん太がもみくちゃにされました。
煙が晴れた時、ちゃめ子がしれっとした顔でお皿からごはんをせっせと食べており、その横にぴん太が震えながら立っていました。
ぴん太は拳を握りしめ、うなだれる顔を震わせながら、とても悔しそうな声を絞り出していました。後にも先にもデグーがあんな声を出すのを聞いたのは初めてでした。
『ぐ……ぐううっ……! うっ……、ぎゅっ、ぎゅううっ……!』みたいな。
人間の言葉に訳すと、
『しっ……、信じてたのにっ……! ちゃめ子ママにほんとうに僕を襲う気なんてないと……信じてたのにっ!』
みたいな感じでした。
ちゃめ子はうるさがるようにぴん太に背を向け、平和な目をしてコリコリとごはんを食べ続けていました。
そこから離れたところでは、凛子が幸せそうにごはんにありついていました。
ちゃめ子がボス担当、凛子が美少女担当なら、ぴん太はお笑い担当という感じでした。
ちなみになぜか、ぴん太の写真は一枚も残っていません。
(11/11追記)
ぴん太の写真、ないかと思ってたら、あったー!