せみとともにすごすひ
『せみとともにすごすひ』
夜明け前
セミが鳴き始める
アブラゼミのジージー♪という声
最近のセミは早起きだ
人が目覚める前から鳴いている
鳥たちの鳴く声が響き出す
セミと鳥の合唱
今日も暑くなりそうだ
仕事帰りに山の親父に逢いにゆく日
親から預かっていた荷物と共に家を出る
朝の勤務先
セミが出迎える
ミンミンゼミとアブラゼミの合唱
今年になってここで初めて聞いた気がする
ミーンミーン♪という高い声と
ジージージー♪という低い声
セミは元気に鳴いている
気温が上がるとセミは鳴き止み
灼熱の時が訪れる
セミだって暑ければ休むのだ
セミも熱中症になるという
人も熱中症になるのに
なぜセミの休む時間に働くのだろう?
昔のセミは昼間でも
うるさいくらいに鳴いていた気がする
今のセミは昼間に休んでいる
酷暑のなかで鳴き続け
裏返しに落ちるセミ
動き続けて倒れる人
倒れるのは
人と働き者のセミだけだ
そうしたものは
おしなべて働き者にちがいない
梅雨の戻りの広く延びた雲
もこもことした綿のような雲が混じりだしている
少しくすんでいた蒼空も
夏の青さへと変わってゆくようだ
これからこの暑さが続くのなら
青く高い蒼空の綿雲はやがて
もっともっと大きな入道雲へと育ってゆくのだろう
暑い一日が過ぎてゆく
仕事が終わり
山へと向かう
平地の市街地とは違い
山の空気はやはり涼しい
夕方の山のふもと
セミが出迎える
アブラゼミとヒグラシの合唱
久しぶりにヒグラシの鳴くのを聞いた
ジージージー♪という低い声と
カナカナカナ♪というかん高い声
涼しい空気のなかで
セミは元気に鳴いている
人と同じように
セミも涼しい場所が好きなのだろう
山に生えるネムノキが満開だった
夏に出かける時に見かけるこのネムノキは
自分にとっての夏の風物詩
今年も夏の訪れを感じる時だ
ネムノキの花はとても好きだ
優しい赤と花火のように広がる花びら
涼しい空気のなかで
今年ものびのびと咲いていた
渓谷の水の流れる涼しげな音と
ヒグラシの鳴く声を楽しみ
山の親父の家を訪れ
少し寄ってお暇する
帰り道
薄暗くなる山の帰り道
まだセミが鳴き続けている
薄暗い中にたたずむネムノキに別れを告げ
山の親父のいる山を後にする
セミの鳴き声とともに始まり
セミの鳴き声とともに終わる一日
たまにはこうした日も良い
暑い一日が終わる
きっと明日も
暑い一日となるだろう
セミの声とともに
夏が来る