20.いざ領地へ
「いや~それにしてもプレイシア様が『全財産貢ぎなさい』って仰った時はヒヤッとしましたけどアーシクス公爵様の顔は見ものでしたね~! さすがプレイシア様です!」
馬車に乗り込んだ途端、満面の笑みで褒め称えるラピ。
相変わらず呑気で可愛い。
無意識に頭を撫でてやったら、嬉しそうに顔を赤くしてされるがままになっていた。
「ああいう余裕綽々の男性って意表を突きたくなるのよね」
「きゃー! 侯爵様かっこいい!! 女の味方!!」
気持ち良く煽ててくれるラピにこちらもつい笑顔が溢れる。
そうして馬車を3時間ほど走らせていたら、ようやく我が領地であるグマーレン侯爵領が見えてきた。
はぁ、やっと着いた。ずっと同じ体勢だったからお尻が痛い。ふかふかのクッションでも買わないとな…。
馬車が止まったのは、侯爵領の中でも一際腐敗のすごいレビエン村だ。
ここは雨が降りにくい地形で作物がろくに育たず、それなのに他の村と同額の税金を徴収される為、民は疲弊し切っていた。
さて、そんな長年侯爵家に苦しめられていた領民の前に侯爵家の馬車が止まったらどうなるか?
「あ、あれは…侯爵の馬車!?」
「ふざけんな! どの面下げて俺たちの前に出てきやがった!」
「あんた達のせいで息子が今にも死にそうなの!!」
「これ以上どうやって俺たちを苦しめるつもりだー!!」
それは火を見るより明らかだ。
当然罵倒の嵐である。
今にも石ころを投げられそうな勢い。
「こ、侯爵様…まさかこんな業火の中出て行こうとなんてしてませんよね?」
「何言ってるの? 勿論出てくけど?」
私が立ち上がったのを見て慌ててラピが止めに入る。
ミーグルに私のことを頼まれた手前、私が自ら危険地帯に足を踏み入れることを望んでいないのだろう。
だけど、私は別にこの程度怖くない。
簡単な防御魔法なら修得してきたし、石ぐらいなら防げるだろう。
ラピの制止を無視して馬車のドアに手をかける。
扉を開くと、一瞬領民達の罵声が止んだ。
「なっ…あれはお嬢様じゃないか? 確かプレイシア様とか言った…」
「ふ、ふん! だからなんだ。どうせ親同様性格が腐り切っているに違いない!」
「そ、そうだ! じゃなかったら今まで俺たちを放置するわけがない!」
しかし、すぐにまた臨戦態勢に入る領民たち。
ふむ、意外と理性的みたいね。すぐに何かしら攻撃してくると思っていただけに拍子抜けだ。
これなら簡単に抱き込めるだろう。
そう思い、彼らへ演説しようと息を大きく吸った。




