2.ここは何処?
これぞまさしく神対応──なんてね。
ていうか、ほんとに神様いたんだ。
祈ってる最中もあんま信じてなかったからビックリしたよ。
そんなことよりここ何処だ──と、そこで初めて現状を理解しようと周囲を見渡した。
するとそこには、人、人、人、人。
360度見回しても人がいる。
え、なんでこんな大勢の人に囲まれているんだろ。
全く訳がわからぬまま最初に顔を向けていた方向に戻すと、目の前に立っている男が真っ赤な顔でプルプルと震えていることに気付いた。
髪も赤いから煮立ったトマトみたいだ。
え、なんでこの人怒ってんの?
「おい! プレイシア! 聞いているのか!? プレイシア・グマーレン!」
トマトグツグツ男が何やら喚いている。
察するにプレイシアという人物にご立腹なようだ。
誰だよプレイシア。
誰でもいいけど早く対応してよ。うるさいんだけど。
それにしてもプレイシア・グマーレンか…なんか聞き覚えあるんだよねぇ。
おかしいな…一度聞いたら忘れない筈なんだけど…。
「おいプレイシア!!」
ドカドカと熱々りんご男が近付いてきた。
ああもううるさい、あと少しで思い出せそうなんだから静かにしてよ。
丁度近くにいたのでギッと睨んだらマグマドロドロ男は一瞬驚いたような顔をした。
そして次の瞬間、更に顔を真っ赤にさせて数倍の眼力で睨んでくる。
うわ、それ以上沸騰したら爆発しちゃうよ? ただでさえ頭悪そうなのに脳みそ破裂したら人間じゃなくなっちゃうんじゃ…。
なんて余計な心配をしていると、今度は強い力で両肩を掴まれた。
「聞いているのかと聞いている!!」
なんですかそれ、ダジャレですか? クソつまんな。
と、思っている最中にも私の体は勝手に反応して脳みそ爆発男を投げ飛ばしていた。
「ぐはっ!?」
あ、しまった。
前世でちょっとだけ嗜んだ合気道の癖が出ちゃった。
すごい痛そうだけど、そっちが先に掴みかかってきたんだからしょうがないよね。
すると今度は周囲の人間全員から驚きの気配を感じた。
…えーっと、とりあえず通報されることはないと信じたい。
まあ逃げ切る自信あるけど。
それよりこの瞬間、1つ分かったことがある。
どうやらプレイシア・グマーレンはこの私みたいだ。
道理でさっきから元人間のボロボロ男と目が合うと思った。
ずっと私相手に怒鳴ってたわけか。
そして同時に先程頭を捻っていた問題が解決した。
プレイシア・グマーレン──すなわち私は、乙女ゲーム『地獄のユートピア』に出てくる悪役令嬢だ。