殺し屋たち
カルミアなら、どう来るか。
|殺し屋<アマチュア>なら、どう来るか。
|殺し屋<プロ>なら、どう来るか。
様々な思考を巡らせながら、足音を一切立てずに歩く。
……恐らく、カルミアは俺から先手を取りたいはず。
というか、そうでなければ、俺を制圧など不可能に等しいだろう。
ならば、死角を狙いに来るか。
だが、俺から資格を取れるか?
そもそも、足音も気配も消しているのに、場所を察知できるのか?
…………。
「まどろっこしい」
小声で呟き、俺は近くにあった小石を思いきり地面に投げつけた。
その音は、静かなフロア全体を揺らすように響いた。
……さて。
デカい餌とデカい釣り針は用意した。
後は、あいつがどうかかってくるかだが……。
「……!? マジかよ、おい!?」
カルミアは、堂々と正面から現れた。
全力疾走をしているようだが、それでもまだ俺よりは遅い。
だが、着実に、距離を詰められている。
……良いのか、それで?
そこから先は、俺の間合いだぞ。
──ガンッ!!
「成長したな、カルミア!!」
「まだまだですよ、エーデル師匠!!」
お互いに素早く距離を取り、冷静にナイフを構える。
……良い動きだったな、カルミア。
全力疾走から更にギアを上げたと思った瞬間、思いきり俺のナイフと鍔迫り合いをしてきやがった。
俺の攻撃を読んで──いや、違うな。
俺の攻撃をちゃんと眼で視て察知して、反応していた。
しかも、ナイフの一撃も重たかった。
俺の攻撃が反動として返ってきているのもあるが、それ以上に、威力が凄まじかった。
とてもこの間まで素人だったとは思えない。
「……それで、策はあるのか?」
「なかったら、わざわざ突っ込んできませんよ」
……自信ありげだな。
こういう相手は、一度鼻をへし折ってやるのがセオリー。
さ、どこからでも……!?
「マジか!!」
一瞬のことで、こっちも不意を衝かれた。
カルミアが、元来た方向へ走っていった!!
……おびき寄せられている?
何か罠でも仕掛けてあるのか?
あいつ、警戒心マックスの俺を、まともに攻撃できるのか?
色々と考えながら、カルミアを追う。
……あと十秒もあれば追いつくな。
だが、カルミアは何故か余裕そうだ。
何を考えている?
……いや、余計な思考は抜きだ。
俺は、俺の全力を出すだけだ……!!
三、二、一……!!
「……は?」
「引っ掛かりましたね」
背中を一突きしようと、ナイフを繰り出した途端だった。
ぐにゃりと曲がった足で、腕を蹴られてしまった。
しかも、勢いの乗ったままだから、バランスまで崩れた。
「体の柔らかさには、自信があるんですよ!!」
「そうかよ!!」
不安定な姿勢ながら、カルミアが振り下ろしてきた一撃を受け止める。
……これ、あと一発が限界だな。
こうなったら……!!
「カルミア。降参するなら今のうちだぞ?」
「そんなの、するわけが……!?」
否定の言葉が聞こえた瞬間、俺はあえて膝の力を抜き、そのまま倒れ込むような体勢になった。
そして、そのまま地面を思いきり押し、全力で立ち上がる。
そこから先は、簡単だ。
不意を突かれたカルミアの喉笛に人差し指を突き立て、大きな隙を作る。
そして、ナイフを持った腕を取り、地面に投げた。
さらに、地面に直撃する直前に右腕で首を思いきり絞めた。
「はい、終わり」
地面スレスレで、カルミアの体が止まる。
そのカルミアの顔の目の前には、もちろんナイフがある。
「……参りました」
ま、流石にこの状況からは抜け出せないわな。
壁を全力で掴んでいた左手から力を抜き、二人揃って優しく地面に倒れる。
「強くなったじゃないか、カルミア。いい攻撃だったぞ」
「……この状態で言われてもうれしくないんですけどー」
「滅多にない誉め言葉なんだから、素直に受け取っておけ」
そう言って、カルミアより一足早く立ち上がる。
「それで? どうする?」
「何が、ですか?」
「まだ稽古を続けるか、ってことだよ」
その問いに、カルミアはにやりと笑った。
「愚問ですよ。私が勝つまでやりますからね!!」
「……なら、一生終わらねえな」
少し苦笑しつつ、俺たちは各々次の稽古の準備を始めた。




