枕
……ん?
暗いリビングの真ん中で目を覚ます。
「…………」
まだ誰も起きてねぇのか?
てか、今何時だ?
……カーテンを閉めてるせいで、昼か夜かも分からん。
しかも、スマホが手元にないから、時間を調べることもできねえ。
……まいったな。
「とりあえず、部屋に戻るか」
「なぜですか?」
突然聞こえてきた声に、体をビクッと震わせる。
「……ベル。いたのか」
「はい。エーデルさんがお眠りになっている間、ずっといました」
……こいつ、気配消すの上手いな。
寝起きで感覚が鈍っていたとはいえ、俺が気付かないとは。
「……で、何の用だ?」
「いえ。このような場所で無防備に眠っているのも珍しいので、少し心配になっただけです」
「……あっそ」
白々しいな。
絶対にこいつは何かを企んでいる。
……まあ、何かは分からないが。
だが、いつでも寝首を掻けた状態で放置していたということは、少なくとも、俺に敵対心はないのか……?
「お疲れのようでしたら、もう少し休まれてはどうですか? ……朝までは、まだ時間がありますから」
「あ、そうだ。今何時だ?」
「三時半頃です」
てことは、小一時間眠ってたのか。
……マジではしゃぎすぎたな。
「それで、どうされます? まだ休まれますか」
「ああ。まだめちゃくちゃ眠いしな」
「……でしたら、こちらに来てください」
「ん?」
言われるがまま、暗闇の中をベルの方向へ歩いていく。
確か、あと二、三歩先にソファがあるはずだ。
「そのままソファに腰掛けてください」
「ああ」
ボスッとソファに身を預けると、その瞬間に柔らかな感触が全身を包みこんだ。
……やべえ、このまま寝ちまいそうだ……。
「そのまま、体を右に倒してください。枕を用意してありますので」
「相変わらず、手際のいい事で」
ベルの奴、一応は客人なのに、よく働いてくれるな。
……まあ、だからと言って信頼するわけではないが。
「……で、枕はどこ? 暗すぎてなんも見えねぇんだわ」
「こちらです」
そう言ってベルは、俺の頭に手を添え、そのまま優しく誘導するように動かした。
「……ん?」
そして、気付いた。
耳ごしに伝わってくる感触に。
柔らかな布。
優しい感触。
ひんやりとした心地よさ。
うっすらと感じる温度。
そして、小さな脈拍。
「……お前、何やってんの?」
「俗にいう、膝枕という奴です」
…………。
「…………」
「…………」
……え?
…………えぇ?
「いや、マジで何やってんの!?」
「あまり動かないでください。今は、体を休める時なのですから」
「いやいやいや!! そういう問題じゃないって!!」
一気に眠気が吹き飛んだわ!!
「ほら、このままじっとしていてください。……少し、話したいこともあるので」
「……嫌だ、って言ったら?」
「別に、どうもしませんよ。これは、私が勝手にやっている事ですから」
「…………」
……そう言われると、動くに動けない。
……ハァ。
「分かった。それじゃ、このまま膝枕お願いします」
「ふふっ。かしこまりました」




