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大衝突

 お互い、エンジンは完全に温まっている。

 ……ここからは、手加減を期待しない方が良さそうだな。

 俺も、お前も。


「行くよ?」

「ああ」


 倒れたままの俺に振り下ろされた足をギリギリで転がって避ける。

 そして、左腕を思いきり伸ばし、標的を見失って不安定な足を掴み、そのまま一気に重心を崩すように引っ張った。


「ハハッ!! そういう戦い方もあるのか」

「勉強になるだろ?」


 関節が外れていない方の腕で倒れた体を支え、ベツレヘムはその不安定な姿勢のまま、思いきり回し蹴りをしてきた。


「《フィート・バーン》!!」

「うおっ!?」


 回し蹴りが目の前に来た瞬間、ベツレヘムが能力を使ってきた。

 流石に、これを食らうのはまずい……!!


「おらっ!!」

「わっ!?」


 こちらも不安定な大勢だが、やむを得なかった。

 左足でベツレヘムの太ももを思いきり蹴り、すんでのところで止めた。


「ほっ。……っし、形勢逆転」

「いやいや、まだ同点でしょ」


 いち早く立ち上がった俺に、座り込んだままのベツレヘムがそう返してきた。

 ……まあ、こいつ相手なら、そうなるわな。


「足と拳、どっちがいい?」

「自信がある方で」

「了解」


 ベツレヘムがそう言うなら、俺も本気で行かせてもらう。

 フッと息を吐き、ベツレヘムの頭めがけて、本気の蹴りを放った。


「……さっすが、兄ちゃん」

「嫌味かよ、おい」

「素直に称賛してんじゃん」


 ……本気だったんだけどなぁ……。

 あっさりとベツレヘムに掴まれ、止められてしまった。


「三秒以内に抜け出せなかったら、能力使うからね」

「……オーケー」


 足を燃やされるのは、流石にまずい。

 というか、目がらんらんと光っている今、こいつに能力を使われてしまうと、骨まで焼き尽くされる可能性大だ。

 ……カルミアの回復能力で、なんとかなんねぇかな。


「三」


 ……ふぅ……。


「二」


 ……よし、気合十分。


「一」

「ベツレヘム、覚悟はいいか?」


 その問いに答えず、ベツレヘムは口を開いた。


「ゼ──」


 ──バキッ!!


 カウントダウンが終わる直前で、掴まれている方の足で、思いきりベツレヘムの手の平を蹴った。

 ……衝撃がもろに腕全体に入ったのだろう。

 めちゃくちゃな音を立て、ベツレヘムの骨が折れた。


「ぐっ……!!」

「もう一発!!」


 追い打ちとばかりに、今度は逆の足を上げ、折れている方の腕に思い切り振り下ろした。


 ──グジャッ!!


「アガッ!!」


 不気味な音を立て、ベツレヘムの腕の骨は完全に砕けた。

 腕はめちゃくちゃな角度に曲がり、骨が今にも飛び出しそうになっている。


「どうだ? まだやるか?」

「……当然」


 それだけ言ってベツレヘムは立ち上がり、そのまま腰を軽く落とした。

 ……今までの攻撃で、ベツレヘムの両腕は使い物にならなくなっている。

 だがまあ、油断はできないよな。

 相手は、ベツレヘムなのだ。


 ──こいつは、俺が知る限り、最強のヴァンパイアだ。


「いくぜ、兄貴!!」

「おう!!」


 さあ、どう来るか。

 それを考えるよりも先に、ベツレヘムが懐へ飛び込んできた。


「ハッ!!」

「ぐっ……!!」


 体の中心を軸にして、足と頭を入れ替えるような回転での蹴りが飛んでくる。

 咄嗟に出した腕でなんとか防いだが、それでも骨が──少なくとも二本は──折れてしまった。


「もう一発!!」


 高く振り上げられた足を、今度は地面に叩きつけるように落とし、ぐるんと前方宙返りの動きで脳天へ蹴りを入れてきた。


「ぐあっ!!」


 両手をクロスさせてガードしたが、それでも、脳みそを直接揺さぶられたかのような衝撃が頭部全体に伝わってくる。


「ほら、がら空きだぜ?」

「お互いな!!」


 ──ゴォンッ!!


 お互いの頭突きが炸裂し、重たい衝撃音が森を揺らした。


「……ハ、ハハッ。流石、兄ちゃん……」

「……やるな、ベツレヘムも……」


 お互いに脳震とうを起こし、そのまま、二人同時に気を失った。

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