散歩
「「到着!!」」
息を切らしながら、同時に声を上げる。
周囲は薄暗く、木々が鬱蒼と茂っており、慣れている俺たちでなければ恐怖を覚えるだろう。
「どうする? 木、切ったほうがいいか?」
「うん。燃えちゃったら、後が面倒くさいし」
「オーケー。ちょっとだけ待ってろ」
ナイフを抜き放ち、そのまま腕馴らしとばかりに走りながら切りつけ、蹴り倒していく。
そして、十本程度の木を切り倒したところで、ナイフを鞘へ戻した。
「──よし、こんなもんか?」
「うん。ありがと、兄ちゃん」
軽く視線を交わし、切り倒した木を二人で遠ざけるように蹴り飛ばしていく。
そうして出来上がったのは、倒木性の簡易的な闘技場だ。
「よし、これで完成」
「それじゃ……やる?」
「ああ」
そう相槌を打ち、ナイフを再び抜き放つ。
「ルールは?」
「いつも通り」
「オーケー。無しってことね」
「お互い、手加減無用だからね。……兄貴」
そういった瞬間、ベツレヘムの瞳が赤く光った。
そして──
──ズバンッ!!
一瞬で間合いを詰め、拳を放ってきたが、それを俺は軽く拳の裏でいなした。
「拳が軽いんじゃないか?」
「兄貴と違って、まだウォーミングアップしてないんだよ!!」
今度は中段蹴りを入れてきたが、それも片足で受け、俺の方も右の拳を打ち放った。
だが、流石にベツレヘム相手ではそれも通用せず、片手で軽く受け止められてしまった。
「兄貴こそ、パンチが弱いんじゃないか?」
「そりゃ、こっちが本命だからな!!」
「うおっ!?」
飛び上がるように右足を振り上げ、そのままベツレヘムの顎へ蹴りを入れた。
……が、それも薄皮一枚を軽く掠めるだけに終わってしまった。
「あっぶね!!」
「油断大敵ー」
タッタッ、と軽快なステップで俺との距離を離しながら、ベツレヘムは手の平を開いた。
……来るな。
「兄貴。いいな?」
「ああ」
……空気が重たくなるのを感じる。
俺とベツレヘムとの距離も、少しずつ遠のいていくように感じた。
……ふぅ……。
……さあ、来い!!
「《フレイム》!!」
突き出された手の平から、巨大な火球が一閃、飛び出してきた。
…………。
「甘い!!」
近くに落ちていた枝を拾い上げ、それを思いきり振り上げる。
すると、枝の風圧である程度弱まった炎が、葉っぱに燃え移った。
「熱っ」
ビュッと枝を振るい、燃え移った炎を消す。
……あ!
「油断大敵ー」
「このっ……!!」
炎の陰に隠れて迫ってきていたのか、いつの間にか目の前にいたベツレヘムから、拳が一閃飛んできた。
すんでのところでキャッチしたが、マジで危なかった。
「お返しだ!!」
「ぐうっ……!!」
掴んだ手首をひねり、そのまま関節を一気に外した。
「痛っ!! くっそー、やっぱやるね」
「前やった時よりも、経験積んでんだ。これくらいはな」
「じゃ、俺も本気で行くよ?」
「ああ。来い!!」
俺の返事に、にやりとした笑みを返して、ベツレヘムは地面を蹴った。
……速い。
少しずつギアが掛かってきたのか、段々と目で追えなくなってきた。
……視覚は使い物にならねぇな。
だったら……!!
「……そこだ!!」
「うおっ!!」
目を瞑り、耳に全神経を集中させた後、俺は本気の蹴りを繰り出した。
木の葉が擦れる音から位置を推測したのだが、大体合ってたみたいだな。
「危なかったけど、兄貴も甘いよ!!」
「ぐおっ!?」
蹴り出した足を思いきり引っ張られ、そのまま投げ飛ばされてしまった。
「どうする? まだやる?」
「……当然!! ベツレヘムも、まだ遊び足りないだろ?」
「ああ。ようやくギア掛かってきたとこなんだ。ここで止めるだなんて、勿体ないしね」




