ゲームオーバー
……はぁ。
少し早めに車を運転しながら、大きめの溜め息を吐く。
……なんであそこまで雑な殺し方をしてしまったのだろうか。
今までにも、多少感情的になることはあった。
……そのたびに、ルドルフから叱られていたが。
だが、今日の殺しは、俺にしてはあまりにも不自然だった。
ただの私怨で殺しているとしか思えないような、そんな殺し方。
……ま、いいか。
今日の仕事は、いつもの暗殺と心構え自体はそれほど変わらなかった。
なら、今日のミスも、いつもの仕事のミスの一つだと捉えよう。
……うん、そうしないと、落ち込んでしまうし。
よし、ようやく家に着いた。
……のだが。
「こいつ、どうしようかな……」
ベルの奴、ぐっすり眠ってやがる。
一応は協力しているとはいえ、もう少し警戒をしろよ。
……はぁ。
「よいしょっと」
やっぱ軽いな、こいつ。
……少し心配になってしまうくらい軽い。
……チッ、くそっ。
なんで俺が、ハンターの心配をわざわざしなきゃならないんだ。
…………。
とりあえず、部屋に運ぶか。
「よう、ベツレヘム」
地下室の階段から、静かに呼びかける。
「……? 兄ちゃん、どうかしたの?」
「いや、なんというか……、急にお前の顔が見たくなった」
「……そっか。ほら、こっち来なよ。一緒にゲームやろうぜ!」
「……ああ」
そうは答えたものの、ゲームをやる気分になどなれない。
ベツレヘムもそれを察したのか、黙って一人でプレイを続けた。
「……よしっ、勝ちー!!」
「おめでと」
満面の笑みで勝利を報告するベツレヘムに、ほんの少しだけ安堵感を覚える。
……そして、それと同時に、何か複雑な感情が渦巻いた。
「……なあ、ベツレヘム」
「ん?」
「……俺さ、今日、初めてハンターの仕事をやらされたんだよ」
「ああ、例の協力の奴?」
「そ。……それでさ、吸血鬼と戦ったんだよ。それで……」
「……殺したの?」
「ああ。……言い訳をするつもりじゃないが、あいつは悪人だった。女子供をさらっては、むごたらしく殺すような……、そんな奴だった」
「なら、なにも悩むことはないんじゃない? 兄ちゃんは、いつも通りにやっただけなんだし」
「違うんだ……、違うんだ……! 俺は、それ以上に凄惨なことをしてしまったんだ……!!」
「……そっか」
涙は流れない。
代わりに、小さな嗚咽が零れた。
「……ねえ、兄ちゃん」
「……ん?」
「……もしかしてだけど、俺の事が気にかかってるんじゃないの?」
「……そうかも」
はぁ、と大きな溜め息を吐いたベツレヘムが檻越しに俺の手を掴み。
「こないだも言ったけど、兄ちゃんは兄ちゃんの思うがまま、行動してくれよ!! 俺の事は気にしないでいいから!! 今日の仕事の中に、兄ちゃんの正義は、信念はあったんだろ!?」
「ま、まあ……」
「だったら、それでいいじゃん!! 兄ちゃんのやったことは正しいんだ!! 他の奴がそう言わなくても、俺はそう言うから!! だから、あんまり深く悩むなよ」
優しい笑みを浮かべ、ベツレヘムは俺の手を離した。
ふと画面の方を見ると、『ゲームオーバー』の文字が映っている。
「……ありがと、ベツレヘム。少し、気が楽になった」
「ならよかったよ。兄ちゃんが自由にやってるのを見ると、こっちも嬉しくなるから」
「……そろそろ部屋に戻るわ。ごめんな、ゲームの邪魔して」
「うん、じゃあ、またね」
「ああ、また」
乾いた音を立てながら、階段を一段ずつ上っていく。
……その音を聞くごとに、少しずつ、折れかかっていた心が修復されるような気持になった。
本当は昨晩投稿する予定だったんですが、色々な用事とかの兼ね合いで間に合いませんでした……。




