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協力

 無理やり車に詰められ、そのまま揺られ続けること一時間。

 俺は、若干見覚えのある森林にまで連れてこられていた。


「で、ローレル。何の用でここまで連れてきたんだ?」

「おや、もう本題に入るのかい? 少しくらいは感傷に浸ってみたり……」

「いいからさっさと話せ。殺すぞ」

「おー、怖い。まあ、エーデル殿が宜しいのでしたら……」


 両手を挙げ、やれやれといった様子で首を振るローレル。

 こっちの方が、やれやれなんだがな。


「エーデル殿には、我々ヴァンパイアハンター協会の一員になって頂きたいんだ!」


「……は?」

「もちろん、ただでとは言いません。元々の技術も加味して、給与だって……」

「却下だ、却下。第一、ヴァンパイアハンターってなんだ? 宗教勧誘なんざ、中指立てて追い返してやるよ」

「……白を切るおつもりですか。エーデル殿が以前言われていたように、私はエーデル殿のことを見張っていたのですよ? エーデル殿の弟君のことも存じ上げております」


 思わず、下唇を噛み締めてしまった。

 ベツレヘムのことまでばれてるのかよ。

 というか、ここのことまで知ってるんだったら、当たり前か。

 だがまあ、口封じはしときたいな。

 万全な状態である今なら、ローレルも殺せるはずだ。


「忠告しておきましょう。今この場には、二十名ほどの訓練されたヴァンパイアハンターが、エーデル殿を狙って銃を構えております。……それでも、まだナイフを抜くおつもりですか

?」

「……くそ野郎が」


 万事休すってところか?

 抵抗しようにも、ローレルにはが届く前に、俺が殺されてしまう。

 ヴァンパイアハンター相手に本気で向かうってのも、リスクがでかすぎる。


「とりあえず、話しだけは聞いてやる」

「承知しました。我々が依頼したいことは、正確に言えば、エーデル殿との協力です。ヴァンパイアの社会で育った腕利きの殺し屋。我々にしてみれば、喉から手が出るほど欲しい存在です。しかも、双子の弟がヴァンパイア。これほどまでに珍しい例は、半世紀ほど生きた私ですが、聞いたことがございません。それの研究に関してもですし、いつ牙をむいてくるかわからない危険因子は、なるべく手中に収めておきたいのです」


 ずいぶんと本音をぶっちゃけるな。

 それで信頼を少しでも得ようって魂胆か?


「お前の言ってることの意味を、自分で理解できてるのか?」

「はい?」

「お前は、俺に昔の仲間を売れと言っているんだぞ?」

「仲間……ヴァンパイアのことですか?」

「幼少期とはいえ、俺はその世界で暮らしたんだ。それを売るような真似は、俺にはできない」

「……ヴァンパイアの結束というのは、本当に面倒くさいですね」

「だったら、さっさとお前のところのボスに泣きつきに帰れよ、ヴァーカ!」


 堂々と中指立て、ローレルとその周りの奴らを挑発する。

 こうしている間にも、色々と策は練れてきたな。

 そうなれば、全員血祭りにあげてやる。

 俺らに手を出そうとするなんてのは、万死に値する。


「しょうがないですね。あまり脅すような真似はしたくありませんでしたが……」

「あ?」


「現在、ベツレヘム様、カルミア様の方へ十数名のヴァンパイアハンターを派遣しております。こちらの要求をのまないのであれば、すぐさまお二方を殺します」


「……チッ」


 まずい、まじでまずい。

 あの二人を人質に取ってきやがったか。

 ベツレヘム独りであれば、皆殺しなんてのは簡単だ。

 だが、カルミアを人質にでも取られれば、ベツレヘムも攻撃できないだろう。


 ……ちくしょう。

 この状況は、今までの経験の中でも、ダントツでヤバいぞ。

 ここにいるやつらを殺しても、ベツレヘム達の方の安全を確保できない。

 それに、無駄に遠い場所まで連れてこられたせいで、救助にも向かえない。

 うーむ、どうするべきか……。

 ルドルフに連絡するという手もあるが、あいつ一人でどうこうできそうもない。

 こっちは一人でも殺されればゲームオーバーって感じだな。

 ……くそが。


「…………いいだろう。ヴァンパイアハンター協会との協力だったな。結んでやる。その代り、今すぐにベツレヘム達から包囲を外せ」

「承知しました。本当に良かったですよ。正直、エーデル殿との全面戦争も視野に入っていましたから」

「あっそ」

「連絡も済みましたので、ベツレヘム様、カルミア様の安全は確保されました。それでは、エーデル殿。これから……」


 その瞬間、周囲の木が一瞬にして崩れ去った。

 いや、地面に吸い込まれるようにして消えた。


「協力関係は結んでやるよ。その代り、俺の憂さ晴らしに少し付き合え」

「! それは……!!」


「全員まとめて死にやがれ」


 三、二、一……!


 ナイフを抜き、目についたヴァンパイアハンターに切りかかる。

 交渉が済んだことで、油断していたのだろう。

 その一瞬の隙を突き、まずは一人殺害。

 その流れで、すぐそばにいたやつも。

 十秒にも満たない時間で、ローレルを除くすべてのヴァンパイアハンターを殺し終えた。


「このくらいでやめておいてやるよ」

「……これだけの短時間で、よくもまあこれ程殺せますね。そう簡単に太刀打ちできない程度には強い者たちを呼んだと思うのですが」

「俺をなめ過ぎだ。少し本気を出せば、お前も殺せるはずだぜ」


 相討ちの可能性が高いが。

 流石に今からローレルまで一人で相手にするのは厳しすぎる。


「本気、ですか。それは私に知られても大丈夫なのですか?」

「……さあな」


 ぐっと足に力を込める。

 それと同時に前へと蹴りだし……。


「ぐふっ!!」

「…………っ!!」


 中段蹴りを決めたが、防がれてしまった。

 というか、ガードがめちゃくちゃ高い。

 だが、これだけ近づければ……。


 その瞬間、悪寒が走った。

 バッと後ろへ飛びのき、防御の構えをとる。


「さすがに勘がいい、としか言えませんね」

「お前、能力持ちだろ?」

「さあ、どうでしょうか?」


 良かった、勘を信じて。

 最悪、腕の一本や二本もってかれてたかもしれない。


「では、本日のところはお別れとしましょうか。近々、協会に関する連絡を入れさせていただくので、そのおつもりで」


 それだけ言い残し、ローレルは真っ暗な森の中を消えるように駆けていった。


「……くそが」


 これだけ俺のことを知っておいて、ヴァンパイアハンター協会に誘ってきやがるのかよ。

 最悪だな。

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