暇つぶし
カルミアの一件も終わり、色々と落ち着いてきた今日この頃。
仕事もあんまり入ってこなくなっており、俺は暇を持て余していた。
「で、俺の家に来たと」
「そういうこと」
ルドルフのところだったら、何かあるだろうと踏んでいたのだが……。
「俺も、ここ最近は暇なんだよ。というか、俺の仕事の六割近くがお前からの依頼だしな」
「お疲れ様です」
「そう思うなら、もう少し丁寧に仕事してくれ」
「やだよ、面倒くさい」
俺はこう見えても、というかどう見ても不器用なんだ。
そんな奴が、証拠消しながら殺すなんて、ほぼ無理だ。
「そういえばだけどさ、前に頼んだ施設の人間って、どうなったの?」
「俺のコネと力で証拠消したし、今は普通に働いてるぜ」
「そうか。犯罪とかは」
「今のところは、無いな。お前に恩を感じてるやつが多いし、今後も大丈夫そうだ。それに、お前の脅しをトラウマ級に格上げしといたから、当分は犯罪なんてできそうもない感じだがな」
勝手に俺のイメージを悪くするなよ。
まあ、それであいつらが更生出来たのであれば良いのだが。
「あとは……おーい、こっちに顔を出したらどうだ?」
「ん?」
……えっ!?
「あ、あの、お久しぶりです……」
「アイリス!? どうしてここに!?」
「うちで秘書兼お手伝いとして雇うことになったんだ。復職させることもできたんだが、どうしてもってことでな」
「いくら足を洗ったとはいえ、私が犯罪者であることには変わりがありません。ですが、少しでも正義の仕事ができればと思い……」
「ルドルフの仕事なんて、汚れたのばっかだろ」
「いえ、あの、どちらかというと、エーデルさん方の補佐に尽力していこうと考えています」
「いや、俺の仕事も正義じゃないし、全体的にドッロドロだぞ。……それとさ」
俺は、ずっと気になってたことを口に出した。
「お前、そんなに人見知りだったっけ?」
ずーっと、壁から顔を少しだけ出して喋っているのだ。
俺と最初に会った時とか、もっと堂々としてただろ。
「いえ、人見知りとかでは……」
「は?」
「あ、あの、すみません……」
「うわー、お前、そんなんだとモテないぞ」
「え、俺が悪いの!?」
何が何だか、まじでさっぱりなんだが。
「そういえばだけど、俺がカルミアの親を殺したってのは、お前経由で知ったのか?」
「いいや。俺は記憶を覗いたときに知ったけど、それは言わなかったよ。そっちの方が面白そうだったし」
「面白いかどうかで物事を判断するなよ」
「いいじゃねえか。それで今日まで何とか生きてきたんだから」
「…………。まあ、いいや。なんか面倒くさくなってきた。てかさ、どの辺まで記憶見たの?」
「八割方。能力からヴァンパイアだった先祖の名前、あとはどうやってお前のことを知ったのかも」
「……あ、そういえば、あいつに聞いてなかったわ。俺の本名って、どっからばれてんの?」
まじで仕事に支障をきたしそうなレベルで身バレしてるからな。
元が分かるのであれば、そこを真っ先に叩き潰しに行く。
「あー、悪い。俺もそこまではつかめてない。ただまあ、ある程度の憶測はついてる」
「まじで!? ちょ、教えてくれ! 今からそこをギタギタにつぶしてくるから」
「うーん、黙ってた方が面白そうだから、却下!」
「ふざけんな」
「まあ、あえてヒントを出すとするなら、お前も会ったことのある奴だな」
「まさか、お前じゃねえよな?」
「なわけあるか! 俺にだって人の心はあるんだ。弟子のお前を売るような真似はせんさ」
「ならいいんだが……」
俺があった中で殺してない奴なんて、かなり限られてくるしな。
少し考えたら、割り出せそうな気がする。
「って、もうこんな時間か! 今日は、俺が食事の当番だったわ。ごめんけど、もう帰るわ」
「了解。血液とかは、そこの荷物入れに入ってるぜ。……それと、帰り道は気をつけろ」
「ああ。ありがと。それじゃあ、また今度来るわ! アイリスも、またな」
「は、はい!」
急いで荷物を担ぎ、車へと猛ダッシュする。
今からなら、ギリギリ間に合いそうだな。
冷蔵庫にもまだ材料が残ってたはずだし、なんか適当にレシピ考えれば大丈夫だろ。
……………………。
閑静な住宅街に、鋭い金属音が響いた。
……危ねえ、ギリギリセーフだな。
ナイフを持ってきててよかった。
「……で、お前はまた何の用なんだよ。ローレル」
「いえ、少し話したいことがございましたので」




