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違和感

 ぐっと背を伸ばし、辺りを見回す。

 ルドルフの車に乗ってからの記憶がない。

 多分、ルドルフかベツレヘムがベッドまで運んでくれたのだろう。

 ……十四時か。

 普段から早起きな方ではないが、これくらいまで遅くに起きたのはいったいいつぶりだろうか。


「スマホ、スマホ……」


 仕事関連の連絡が来てるかもしれないしな。

 …………え?


 俺、三日も寝てたの!?


 確かに疲れてはいたけども、そんなに寝てたのか……。

 連絡が一件も来てなかったのは、不幸中の幸いだな。


「あ、エーデルさん。起きてたんですか!?」

「ああ。さっき目が覚めたよ。……三日間も寝たのは初めてだよ」

「さっきまで、ルドルフさんがついててくれたんですよ? 起きるタイミングが少し悪かったですね」


 あいつ、俺が風邪で寝込んだ時にもそんなことしてたな。


「いや、あいつわざと帰ったんだろ。起きるタイミングくらい、あいつなら読めるはずだしな」

「そうなんですか? でも、かなり心配してる様子でしたから、後で連絡したほうが良いですよ」

「そうだな……」


 あとで、お礼ついでにメールしとくか。


「そういえばなんですけど、デスクの上がかなり汚れてたので、書類だけでもまとめときましたよ」

「あ、まじ!? ありがと」


 まあ、今まで殺してきたやつらの証拠やらなんやらが書いてあるだけだけどな。


「……なあ、カルミア」

「どうかされましたか?」


「なんかあったか?」


 表情が若干強張ってるように見えたし、話すときの声にも少し違和感があった。

 少しの変化かもしれないが、それがどうにも引っかかっていた。


「別に、無理に話してもらおうなんて考えてないから、安心しろ。なんとなく、気になっただけだ」

「……そう、ですか……」


 俺は、他人に対して無駄な詮索をすることが嫌いだ。

 自分がされるのを嫌うからこそ、他人に対してもしたがらないのだろう。


 ……誰にだって、触れられたくないことはある。

 俺にだって、ある。

 だからこそ、前の“(たち)の悪い冗談”に怒りを覚えたんだけどな。


「すまん。もうちょっとだけ寝る」

「……えっ!?」

「てことで、おやすみー」

「ええっ!?」


 三日程度の睡眠じゃ、俺の疲れは取れなかったようだ。

 これからは、無茶しないようにしよう。




 ……行ったか?


 眠気なんて、とっくに取れてるに決まってるだろう。

 あんなの、表向きの言い訳だ。

 さっきのカルミアの態度は、どう考えてもおかしかった。

 というか、俺が質問したときの殺気がえぐかった。

 まじで殺す気満々だった。

 一瞬、ナイフ抜こうか迷ったくらいだ。


「こういう時は、ルドルフに聞くのが一番だな」


 みんなの相談屋、ルドルフ!

 お悩み相談から証拠隠滅まで、何でもござれだ!

 すごい!


「…………はぁ」


 だろうな。

 案の定というかなんというか、要領を得ない返事しか返ってこなかった。

 何だよ、これ。


『一瞬だけ記憶覗いてみたけど、面白そうだったから教えない』


 これだけだぞ!?

 いい加減、人で遊ぶのはやめてほしい。

 ……でも、あいつの過去が関係してるのは分かった。

 これも、あいつなりのヒントなのだろうか。


 ……いや、ないな。

 あいつ、そんなに優しい人間じゃないだろ。


 まあ、これ以上は調べないけど。

 仕事じゃないし、興味ない。

 なにより、カルミアのためだ。

 あいつから話してくれないということは、それだけ重要なことなのだろう。

 もしくは、俺が単に信用されていないだけか。


 俺からすれば、そっちの方が重要な問題だけどな!


 ……というか、ベツレヘムは大丈夫なのか?

 あいつが、怪しい研究所で出されたのなんかを不用心に飲むはずがない。

 だとすると、結構な時間血を摂取していないはずだ。

 流石に暴走まではしないと思うが、それでも腹は減らしているだろう。

 暴走されると、止めるのに骨が折れる。

 ……今のうちにベツレヘムのところに行っとくか。




「ベツレヘム、調子はどうだ?」

「あ、兄貴! 起きたんだ!!」

「ああ。もう元気いっぱいだぜ。それより、血の方は大丈夫なのか? もう、かなり飲んでないだろ?」

「研究所でも飲んでたし、ルドルフからもストック貰ってたから大丈夫だよ」


 飲んだのかよ!?

 いくらなんでも、不用心すぎるだろ!!


「なあ、もうちょっと警戒心持とうぜ」

「なにが?」

「お前なあ……。他人から渡された食べ物なんて、毒が混じってるかもしれないだろ?」

「大丈夫。特に臭いもしなかったし、ヴァンパイアには毒効かないから」


 あ、そうだった。

 ……いやいや、そういう問題じゃねえだろ!?


「あのな、毒じゃなくても、こう、なんか体に悪いもんが入ってるかもしれねえじゃねえか!」

「具体的には?」

「……脂質の高い人間の血」

「飲む前にわかるし、健康体のだった」

「……ならよかった」


 完全に論破された。

 悔しい!


「というか、いくら俺でも多少なりとも人は疑うぜ」

「本当だろうな?」

「ああ、もちろん。だから、兄貴もそんなに神経質にならなくて大丈夫だよ」

「……分かった。じゃあ、俺は部屋に戻るからな」

「うん。ゆっくり休んどけ」

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