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馴染んだ血

残酷な描写が含まれます。

苦手な方はご注意ください。

 こいつ、マジか!!


「血を、血を……」


 吸血鬼の特徴である、目の赤色化が起こっている。

 見た感じ、極度の飢餓状態みたいだな。

 吸血鬼化で体力を使い果たしたか。


「おっと……」

「う、うがぁ……!!」


 急に跳びかかってきやがって。

 吸血鬼というよりか、獣だな。


「さて、どう動きましょうか」

「う、うう……」


 ずいぶんと苦しそうだし、一思いにやってやるか?

 だがまあ、こいつがどれだけ強くなったのかも気になるしなあ……。


「ほらほら、俺が相手してやるよ」

「ぐ、うう、うぐ……」


 唸ってばっかじゃねえか!!

 攻撃も直線的だし、あんまり知性が感じられないな。


「血が欲しいんだろ? ほら、俺のをやろうか?」

「血を……よこせ……」


 動きが滑らかになってきたか。

 血が体に馴染んできたようだな。


「エー、デル……」

「お、どうかしたか?」


 ついに話し始めたか。


「じゃあな」

「は?」


 こいつ、何かするつもりか?


「ぐえっ!!」


 奴が腕を振るったと同時に、強烈な圧力が腹部を襲った。

 ……これは、能力か?


「まったく、面倒くさそうな力を手に入れやがって」

「が、があっ……!」


 能力使って、飢餓が進んだろう。

 血を取り込まなきゃ、死んじまうぞ。

 ……ん?


「おま、止まれ!!」


 こいつ、部屋から急に飛び出してった。

 どこに向かうつもり……!?

 あの血が保管してあった部屋か!!

 今のあいつが血を取り込んじまったら、流石にまずい!!

 能力も格段に強くなるし、身体能力の方も飛躍的に伸びてしまう。

 ああー、くそ、間に合ってくれ……!!




「遅かったな」

「てめえの方は、随分と早かったな」


 くそ、間に合わなかったか。

 タンクが割れ、中から血が溢れ出している。


「改めて名乗らせていただきましょう。私の名前はヨハンと申します」

「へー、興味ないね」

「……そうですか。私は、無事に進化できたようですね」

「ああ、不運なことにな」

「降伏するなら、今のうちですよ? 十秒待って差し上げます。その間に逃げだせば、あなただけは見逃してあげましょう」

「バーカ。こちとら、殺し屋だぜ? 依頼された内容は、絶対に遂行する」

「そうですか。それでは、死んでください」


 ヨハンがこちらに向かい、手を思いっきり振るった。


 集中しろ、俺。

 この一撃で、相手の能力を見極めろ。


 ……いや、無理だろ。


「ぐ、ぐうっ……」

「ほう、これも耐えられるのですか」

「あったりまえだ。俺をなめ過ぎだぜ」


 やべえ、死にかけた!

 これは、強すぎるだろ!!

 もしかしたら、ベツレヘムにも届くかもしれない。


「だからって、負けるわけにはいかねえんだよ……!」

「いまさら何をしようが、私に勝つことなんてのは不可能です」

「さて、それはどうかな?」


 能力の正体を見極める。

 そんなこと、する必要ねえや。




 エーデルがナイフをしまい、両腕をだらんと下げた。

 ヨハンの方はといえば、何をするつもりなのかを未だに理解できていないようだ。

 しかし、それも一瞬のうちだった。

 ヨハンが手のひらを正面に向け、能力の準備を始めた。

 全力で放つ能力。

 直撃してしまえば、エーデルにも穴をあけてしまうだろう。


「死ね」


 エーデルが防御をしようとする間も無く、ヨハンの能力が放たれた。

 ちょうど心臓の真上に当たる場所に、ヨハンの技が直撃した。

 しかし。


「それで、終わりか?」

 

 その立ち姿は、攻撃を受けたとは思えないほどだった。


「じゃあ、今度はこっちのターンだ……!」


 それだけ告げ、エーデルが一歩前へ踏み出した。

 すると、それまで薄明かりで照らされていた部屋が、急に真っ暗になった。


「エーデル、何をした?」

「お前が知る必要はない。あばよ」




 扉を開き、少し重たい足を引きずりながら、部屋から歩み出た。


「依頼は無事に達成だな」


 頬の血を拭い、ぼそりと呟く。

 あとは、この施設につかまってたやつらの処遇を考えないとだな。


 


 部屋の天井いっぱいに飛び散った血が、不気味な音を立てて滴り落ちた。

 周りを見れば、壁も床も真っ赤に染まっている。

 しかし、その中にはヨハンの影も見当たらなかった。

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