始まり (1)
どうも、私の名前はブラッド。
元々は西洋で死神をしていたのだが、日本地獄の方が仕事環境……主に給料の方が良かったので転職というものをして現在は日本地獄で閻魔の右腕をしています。
そう、死神なのに魂を狩るのではなく何故か閻魔の補佐官をしています。
「………はぁ」
転職した時は西洋にいた時と同じように彷徨っている魂を狩っていた。しかし、たまたま職場に視察に来ていた閻魔に気に入られ、現在に至る。
「えーと、今日の裁判は残り3人………もういっぺんにやっちまえよ。現世でさえ、集団面接とやらをしているのに」
「そんなことしたら恥ずかしい過去とかが他人にバレちゃうね」
「知らん。どうせ他人の私達が見ているのだから1人くらい増えたところで変わらんだろう」
深い溜息を吐きながらこの後開かれる裁判に必要な書類を集めていたブラッドの姿を可笑しそうに笑うこの男は凛夜。同業者で死にそうな人の魂を引っこ抜いてきたり、病院で徘徊している霊を引きずってきたりと………何かと問題を起こしている。
「あ、そうだ。裁判の前に話があるから来いって閻魔が言ってたよ」
「………それいつの話だ?」
「さぁ?3時間くらい前?」
何故それを今言うんだよ、コイツ……と首を切り落としたくなる衝動を抑えようとしたが、我慢できず、頭を思いっきり叩いてから資料室を出る。
いでぇー!!という悲痛な叫びが聞こえてきたが、無視だ、無視。
「しかし、話とは一体何だ?」
ここ最近は問題は特に起きていない。亡者が逃げ出したという情報もなければ、獄卒が職務放棄したという情報も入ってきていない。
「給料upの話だったら嬉しいが………」
そういう話だった場合は裁判後でも出来る。裁判前に話をするとなれば、仕事に関するものになる。
そんなことを考えているうちに裁判所に辿り着いたブラッドは挨拶も無しに中へと入っていけば、法壇で仕事をしている閻魔大王が居た。
「閻魔大王」
「ん?あ、やっと来た」
「凛夜の奴に今さっき呼び出しの件について聞いたので遅れてしまいました」
「あー、やっぱり彼伝えてなかったか」
泣く子も黙る閻魔大王と言われているこの方だが、普段からあのような迫力があるわけではない。むしろ、普段はのほほんとしたおっさんだ。
しかし、おっさんだからと舐めた態度をするのは禁物。東の大魔王と言われているお方だ。私達が怖がらないようにこの態度で接して下さっているだけであって、実際はもっと身震いするような恐怖を感じさせる方だ。