拠点作成のチュートリアル
バイクってのは危険な乗り物だ。
俺の兄貴もガードレールに突っ込んで全治1か月のケガをしているし兄貴の友達なんかはダンプに衝突して亡くなっている。
でも乗ってると風が気持ち良いんだ。彼女を後ろに乗せて海岸沿いを走って朝日を見たりなんてのはとても良い気持ちだ。(妄想)
なんて妄想をしながら運転するのは危ない事だ。皆は気をつけよう。俺は……ちょっと気をつけるのが遅かったみたい。
「あれ?」
俺は運転を誤ってガードレールレールに突っ込んだ。しかもそれを突き抜けて俺は崖へ飛び出して……海へ落ちた。
「うわーーーーーー!!!」
落ちた。
落ちた。
落ちた。
ガシャン!!!
「ん? あれ?」
海に落ちたはずの俺は小さい衝撃でバイクに乗ったまま地面に着地した。地面? 直前まで目の前は海だったけど?
というか周りは海じゃなくて森になっていた。爽やかな風がさわさわと流れる気持ちの良い森。
陽の光が眩しい。
めっちゃキャンプ向きの場所じゃん。
なんて考えている場合ではない。
ここらどこ? 死んだ先の黄泉の国?
ドルン、ドルン、ドルン。
バイクのエンジンが唸る。黄泉の国って死ぬ前の物の持ち込みは可なんですか?
草が生茂る森をバイクでノロノロと進んでみる。これは夢じゃない。夢じゃないと思い込んでいる夢でもない。ここはもしかしてかの有名なバイ○トンウェルですか?
「そうだ。スマホ。スマホ。」
ポケットからスマホを取り出しててチェック。迷子は110番に連絡だっけ? と考えていたがスマホには電波が入ってなかった。
「死後の世界は圏外か。ま、そりゃそうだよな。黄泉の国だもんな。これからどうしよう。」
トゥトゥン。
と、スマホから聞き慣れた音がした。これは質問型AIのsalut (サリュ) の起動音だ。
「では拠点作成始めましょーーー。」
そこからは聞き慣れた電子音声が聞こえた。
だけどいつもとテンションが違う。拠点作成?
「拠点作成って何?」
「拠点作成は拠点作成でしょ! 拠点作成しないと飢えて……死ぬよ? モンスターにやられて……死ぬよ? ウサギのように孤独で……死ぬよ! 拠点作成のチュートリアル開始する?」
「ええ……じゃあはい。お願いします。」
ここはモンスターがいる? モンスターがいる世界に来ちゃった? てかなんでサリュがこんな流暢にしゃべってんの?
「オッケー。チュートリアルを開始しまーす!
ちゃんと聞いてね?
①まず土地を支配しましょう!
自分の支配地域にしないと何も始まらないよ!
まずは周囲の敵性生物を排除してね?
②次に資源を集めて建造物を作りましょう!
支配地域に拠点を建造だ!
資源の集め方はわかるね? 感じて手をかざすのさ。
建造物の作り方はわかるね? 感じて手をかざすのさ。
オッケー?
③拠点ではたらく仲間を集めましょう!
一部の建造物は働き手が居ないと機能しないよ!
仲間にする方法はなんでも良いよ!
勧誘、服従、脅し好きなの選びな?
以上!
わかったかな? では拠点作成がんばってくだたい!」
「ええ……。よく分からん。敵性生物? が周囲にいるの?」
「ええと、ちょい待ち……今、検索してるから……。はい! 周囲1キロに敵性生物はいません! あなたは周辺を支配しました! 既に支配してました!」
早い。早いよ。展開が早いよ。
「で、次は資源を集める? 手をかざすって?」
そう言って目の前の木に手をかざしてみると。木がライトアップされた。
(木材20個葉っぱ100個を回収しますか? Y/N?)
おおう。びっくりした。目の前に黒いウインドウで選択肢が現れた。目の前に急に現れたら驚くよね?
「ええと。YES。はい。」
承認すると……ストン。
心持ち俺の体重? が増えたような感触があった。
「え? 今、俺は木材をゲットした?」
「はいはい。ゲットしましたよー。初資源ですねー。ゲットした資源はすとれーじに入ってますよ。すとれーじの確認の仕方はわかるな?」
「いや。分からん。」
「考えるな。感じろ。心のすとれーじを……」
感じろって何だよ。と思いつつもストレージを感じようとしてみると確かに俺は木材20個を持っているという感覚があった。
「お、感じた? じゃ次は建造物だね。作れる建造物の確認の仕方はわかるな?」
いや、だからわかんねーよと思ったけどどうせまた感じろとか言われるだろうと思って感じてみた。
「お……心のせっけいず……木のブロック、木のはしご、木のフェンス、木の小屋、木のドア、木の机、木の椅子、木のベッド、木の剣、木の盾、木のカブト……他にもたくさんある! なんか色々作れる感じがする!」
作れそうなんで試しに木の小屋を作ってみる。
テテン。と、木の小屋が現れた。そしてチャリンと俺の体に何かが溜まる音がした。
「経験値ゲット! 拠点で色々すると経験値が貯まります。経験値が増えるとつよくなるからいっぱい貯めてね!」
おおう。
よく分からんが俺はここで拠点を作ることになった。