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P.B.S  作者: 春秋夏冬
一章
10/10

ガーディアンズ 3



 あまりにも軽く、あっけらかんとした一言に花は耳を疑った。


「太陽と月を模した瞳は、霊力を貯める器の役割も兼ねてるんだ。だから、余程の有事の際には(えぐ)って喰らって、力とするんだけど」


「え、えぐ……?」


 エグい。何が(えぐ)いって話が。瞳を抉るだとか、そんな軽く言われても、蘞いとしか言いようがない。


「その分の霊力は髪に」


 言いながら髪を撫ぜるリリノの顔が、でれでれと緩む。緩んでも十二分に見れるのだから、美人は得だ。


「髪には霊力が宿るって言うだろ。……へへ、生まれたばかりのの時にね、一度だけお会いしたんだ」


 そしたらさぁ! とどんどんリリノのテンションは上がっていく。酒でも飲んでんのかと聞きたくなるくらい、その顔は赤い。


「そしたら、そしたらさぁ。私の髪を手に取って……あの大英雄、須佐之男命がだよ? それだけでも人生の絶頂か??? って感じなのに、綺麗な髪だって褒めて……褒めて下さって……もう死ぬかと……」


 何なら今の方が余程死にそうな顔色な気がしないでも無いのだが、赤すぎて。これは逆上せているのだろうか。何にだ、大英雄への憧憬か、若しくは風呂か。ちょっと心配になってきている花だが、リリノの熱の入った語り口は止まらない。


「その後でね、須佐之男(叔父貴)私の髪を梳いて、そこにたっぷり霊力を込めて贈って下さった。そんな訳だから、私の髪は海原の青を帯びた黒——即ち濡羽色なのさ」


 両の御目と流れる御髪。授かったそれらを持って、三柱の威光をその身で示す。


「そりゃもう愛着湧いちゃうよね。母さんと叔父上の瞳、叔父貴の髪。どんな姿に化けたとしても、こればっかりは変えられないし、変える気もない」


「化ける?」


 気になって問えば、ちょっと落ち着いてきたらしいリリノは笑って答えをくれた。


「ん? ……ああ、この姿は昔の憑座の容姿を参考にしているだけでね。そもそも私は、書物に宿った付喪神。人の姿は作りもの、いくらでも変えられる」


 「男性体にだってなれるさ」と軽く言われて、いよいよ花は驚いた。


「元が低位の付喪神だからさ、母さんみたいな名のある神でもなし、性別だって必要ないんだ。今の見た目は女だけど、姿がそうってだけで、私が無性別であることは変わらないのさ。性別に左右される神性でもないからねぇ」


 こういう容姿に化けてほしいってリクエストがあれば、受け付けるよ? なんて悪戯っぽく微笑まれて、慌てて花は首を横に振る。


「だ、大丈夫です」


「あらら、まあ気が向いたらいつでもどうぞ。……あぁ、因みにケイトもそうだね。あいつも性別が無い」


「ケイトさんも? それは……、合成獣(キメラ)だからですか?」


「さあ……、そこまで詳しくは聞いて無いや。あ、奏は見たままに男だよ」


 そろそろ上がろうか、とリリノが立ち上げる。すっかり長湯をしてしまった。それに倣って立ち上がって、花はふと思い出した。


「リリノさん、ケイトさんと奏さんは庭で何をしているんですか?」


 先ほどの会話。ダイニングを出る前、ケイトはリリノに庭に結界を張るように頼んでいた。すでに結界の中であるラピュタに、二重に結界を張って何をするというのだろう。


「気になる?」


 何故か嬉しそうに身を乗り出して、リリノがそう聞くものだから、その勢いに押されつつ花は頷いた。




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