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少年、現状を知る。


「えーと、助けて頂いてありがとうございます。僕はニル・ジェーンです」

「お礼なんていいんですよ、ニルさん。それよりも、あなたはどうしてあんなところに倒れていたんです?」

「あんなところ?」

「ええ。私の屋敷の門の前に倒れていたのです。びっくりしました」


 ノインさんが声をあげて可笑しそうに笑う。


 っていうか、僕が屋敷の前に倒れてたって?


 山の麓にいたはずなのに?


 ふいに、僕と契約するとか言っていたあの少女の顔が思い浮かんだ。

 恐らくあの子が運んで来たんだろう。なんとなく確信があった。


「あ、ああ、それはすみません。本当は山奥で一人暮らしをしていたんですけど、ちょっとした事件に巻き込まれて」

「事件?」

「そうです。えーと、暴漢に襲われている女の子がいて、その子を助けたのはいいんですけど、そこで気を失ってしまって」


 うんうんと興味津々な様子で頷きながら、ノインさんは相槌を打つ。


「それで、どうなったんですか?」

「あとは、僕もよく覚えていません。気が付いたらこの屋敷で寝かされていました」

「大変でしたね。お怪我はなさっていなかったようですが、もう大丈夫なんですか?」

「ええ。おかげさまで。でも、こんなに情勢が変わっているとは知りませんでした」

「情勢……?」

「僕が知っているのはロニ公国で、ルクト帝国なんて国じゃありませんでしたから」

「……ロニ公国は滅びましたから。七十年前、私の曽祖父の代で。それから私たちはルクト帝国に諸侯の地位とこの屋敷を与えられたのです。諸侯と言っても、権力は何もない名ばかりのものですけれどね」


 ノインさんが自嘲気味に笑う。

 ちょっとデリカシーのない話題だっただろうか。


 だけどなんとなく、僕が山籠もりをしている間に起こった出来事については分かった気がする。


 とにかく、ロニ公国は滅亡して、シュニ人の地位は向上したんだ。父の望んだような差別のない平和な時代が来たんだ。


「ですが、私は曽祖父のしたことを恨んではいません。むしろあの方は立派なことをなさったと思っています」


 沈黙を埋めるようにノインさんは言った。


「シュニ人との融和政策―――ですか?」


 ノインさんが頷く。


「そうです。結果としてシュニ人に支配されるようになったとしても、不幸な思いをする人のいない平和な国を創ろうとしたこころざしは立派です……本当なら、そう評価されていたんでしょう。今、このようなことになっていなければ」

「このようなこと? ルクト帝国に侵略されたことですか?」

「いいえ、違います。……シュニ人がナパ人を支配し、住む土地を奪い、『ナナバン』という蔑称を与え、居住区に強制隔離している現状のことです」


 『ナナバン』?

 強制隔離?


「一体、どういうこと……なんですか?」

「そのままの意味です。シュニ人はナパ人を効率よく支配するために、一つの居住区に強制的に隔離したのです。私は―――いえ、私の曽祖父、祖父、そして父は、ロニ一族はそれを受け入れ、諸侯としての暮らしを享受してきたのです。同じ民族であるナパ人に救いの手を差し伸べることもなく」



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