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少年、お嬢様と話す。


 僕が山に籠っている間にそんなことが。

 どうして気づかなかったんだ、僕は?


「……具合が悪いのですか?」


 メイドさんの声に僕は我に返った。


「え、えーと、助けていただいたことには感謝します。ちょっと混乱していて」

「混乱?」

「は、はい。僕が知っている国とはずいぶん違うようでしたから」

「そうですか。……朝食をお持ちしました。食事を終えられたころにお迎えにあがります」

「迎え?」

「現当主であられるノインお嬢様があなたをお待ちですから」


 ノイン?

 そういえば、この屋敷はノイン・ロニって人のものだとか言ってたよな。


 なんてことを考えている間に、メイドさんは手早く食事の支度を済ませ、一礼して部屋を出て行った。


 一体何がどうなってるんだ?

 僕が助けたはずの少女はどうなった?

 まさかあの子がノインお嬢様って人じゃあるまいし。


 ……まてよ、ノイン・ロニってことは、ロニ公国の統治者の血筋なのか?

 本当に混乱してきた。とりあえず今は用意して貰った朝食を頂くことにしよう。





 メイドのお姉さんに連れられ、僕はノインお嬢様なる人物が待つ部屋へ案内された。


「この扉の向こうにお嬢様がお待ちです。くれぐれも失礼のないように」

「は、はあ。ところで一つ質問良いですか?」

「なんでしょう」

「あなたの名前は?」

「……私の名前を訊いてどうするおつもりですか」

「いや、色々世話をしてもらったみたいなのに、名前も知らないのは失礼かなと」


 お姉さんは僕の人間性を推し量るように目を細めた。


「……ラシャラと申します。あなたは?」

「僕は、ええと……そうだ、ニル。ニル・ジェーンです」

「そうですか。ではニル様。どうぞ」


 ラシャラさんはドアをノックし、開けた。

 扉の向こうの部屋は広く、その中央にある豪奢な椅子には黒髪の少女が座っていた。


 その瞳の色は茶色――ということは、この少女はナパ人だ。


「体の具合はどうですか、行き倒れの人」

「……あ、はい、おかげさまで元気になりました」

「そうですか。そちらへお座りください」


 僕は少女に勧められるまま、彼女の正面の椅子に座った。


「では、私はこれで」


 と、ラシャラさんが部屋を出ていく。

 残されたのは僕と少女の二人だけ。

 ……ちょっと気まずい。


「私の名前はノイン・ロニ。この屋敷の主人です――と言っても、父の遺産をそのまま引き継いだだけなのですけどね」


 屈託のない笑みを浮かべながら、少女――ノインさんは言った。






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