少年、戦慄する。
「……覚悟を」
「それが何かを成し遂げる者の条件だ。力を持つ者の必然だ。そして、タクシャカの死から始まるのだ。この帝国の崩壊が―――ノインのための世界が」
そのとき、僕の背筋に悪寒が走った。
クロの演説を聞いたから―――ではない。
背後から強烈なプレッシャーのようなものを感じたからだ。
危険を感じた時には既に僕の体は動いていた。
「伏せろ、クロ!」
「!?」
僕は階段を駆け上り、剣の柄でクロを弾き飛ばしていた。
同時に僕の足元の階段が爆ぜた。
その衝撃で僕は階段から転がり落ちた。
「……っ!?」
「今のを躱すとは、ただものじゃあないみたいだねぇ」
足音を響かせ廊下の奥から現れたのは、大柄で筋肉質な、長い髭を生やした男だった。
男は、刀身の細い剣を握っていた。
「お前は、一体……!?」
立ち上がり剣を構え直した僕に対し、男は驚いたような顔をする。
「へぇ、まだ戦う気かい。今の一撃で戦意を失ってくれればお互いに楽だったろうにねえ」
男が着ているのは真っ白な礼服のようなものだった。
どこかの軍服のようにも見える。
「質問に答えてもらってない」
「うん? ああ、お前は何者か、という質問だねえ。まあ、同じようなことを訊かれたとき、俺はいつも同じ答えを返すようにしてるんだ。……教える必要はないってね」
「!」
男の気配が変わる。
凄まじい気迫―――殺気だ。
僕は思わず一歩引きさがっていた。
引き下がって――――いた?
何を怖がっているんだ、僕は。
何のために素振りを続けたんだ。
何かを守り―――そして。
何者にも負けないためじゃなかったのか?
「っ……」
僕は歯を食いしばり体の震えを止め、男に向かって剣を構え直した。
「向かってくるかい。自分の心には素直に従うべきだと思うけどねえ……ま、良いでしょう」
そう言うと、男は剣を鞘へ納めた。
「……?」
「斬ってみなさい。逃げないから」
「『この斬撃消えるよ』!」
体は動いている。
剣は敵を捉えている。
なのに。
―――なのに。
「いやあ、驚いた」
「……!」
僕の剣は、男の指先で止められていた。
音を超えた、光速の抜刀が。
「この技を使える人間が居たなんてねえ。やるじゃない、君」
「う、嘘だ」
「嘘じゃない。これは現実さ」




