少年、ひどい目に遭う。
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ロニ公国。
大多数のナパ人と少数のシュニ人によって構成された国だ。
シュニ人はナパ人に虐げられ、奴隷のような扱いを受けている。
そんな国に、僕――ニル・ジェーンはシュニ人とナパ人の混血として生まれた。
父は国の有力な地主で、シュニ人を保護するために活動していた。
だけどそれを良く思わない人たちも多く、父は暴徒に襲われ、馬に繋がれ街中を引きずり回された挙句、みせしめとして民衆の前で首を刎ねられた。
幼かった僕と母はなんとか逃げのびたが、元々体の弱かった母はすぐ病に倒れ死んでしまった。
そして、十五になった僕は、山奥の小屋で一人暮らしていた。
※
「おい、お前――その瞳の色、シュニ人だな?」
「え?」
その日は、僕がたまたま日用品を買いに街へ降りていた日だった。
振り向いた瞬間、僕は顔を思い切り殴られていた。
石造りの地面に頭から倒れこみ、体中をひどく打ち付ける。
「シュニ人が道の真ん中を歩いてんじゃねえよ」
起き上がろうとした僕の体を上から足で踏みつけながら、男が笑う。
その後ろで追従笑いが聞こえた。
どうやら複数の人間がいるらしい。
――――シュニ人とナパ人の違いは、その瞳の色だ。シュニ人は燃えるような赤、そしてナパ人は茶色の瞳をしていた。
僕の瞳の色は母譲りの赤色だった。
「ぼ、僕は」
「ナパ人様に口答えするのか? この汚ねえシュニ人が」
男が唾を吐き捨て、それが僕の顔に掛かった。
それを見て、男の取り巻きが笑う。
通行人は僕を見て、見ないふりをするか、まるで汚いものを見るような目でこちらを伺いながら通り過ぎていく。
「僕は、ナパ人だ」
「嘘を吐くな!」
男の蹴りが僕の鼻先を襲った。
ごきっ、と嫌な音がして、激しい痛みと共に口の中が血の味でいっぱいになるのを感じた。
「嘘じゃない、僕は、僕の父はナパ人なんだ」
「なんだと?」
男は地面に倒れたままの僕の襟首をつかみ、僕の体を持ち上げた。
「ほ、本当だよ。だから暴力はやめてくれ」
「……だとしたらてめえの父親はゴミクズだ」
「な、なんだって?」
突然の言葉に僕は面食らった。
そんな僕に、男は生臭い息を吐きかける。
「シュニ人の女に産ませた子なんざ便所にでも捨てておけってんだよ。てめえの親父のせいで、ナパ人である俺様の目が汚れただろうが」
「……!」
頭の奥で何かが弾けた気がした。
気づけば僕は男に掴みかかり、彼を地面に押さえこんでその首を締めあげていた。
「て、てめえ……」
顔を真っ赤にしながら男が呻く。
「お、お前みたいなやつがいるから、父さんは!」
僕の頭には首だけになって街の広場に晒された、父の姿が思い浮かんでいた。
シュニ人とナパ人の平和のために戦って、そして殺された父の姿が。
―――だから、目の前の男が許せなかった。
直後、僕の側頭部に鈍い痛みが走った。
その勢いのまま、僕は再び地面を転がった。
見上げると、警官が僕を蔑むような目で見ていた。
「……ナパ人に対する暴行罪だ。お前を連行する」
「そ、そんな、先に殴って来たのはこっち――」
僕の口を塞ぐように、警官が再び警棒を僕に振り下ろす。
目の前で火花が散り、僕の意識は途絶えた。
最後に聞こえたのは男の声――シュニ人のくせに、ざまあみろ――そんな声だった。
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