表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/54

第1話-2 オススメは焼きそばパン

化学準備室で遭遇したのは、同級生で且つ、生徒会長とかいう関西弁の生徒。

 時間は少し戻って、昼休み。


 無事、転入の紹介も済んで、やれやれと思っていたら、終業の鐘が鳴るなり新しい級友達に質問攻めにされる。


「ねえねえ、神崎さん。何処に住んでるの?」

「兄弟とかは居る?」

「入る部活動もう決めた?」


 矢継ぎ早な声にオロオロしていると、丁度、4限目の担当でもあった担任の土岐塚(ときづか)先生から助け船? が。


「おいおい、そんなに質問攻めにしたら転校生が困るだろう?

 ああ、そうだ。蓮! お前、ヒマだろう? 転校生に色々教えてやれ」


 土岐塚先生がそう言ったら、すぐに生徒から返事があった。


「せんせー、残念! とっくに会長居ませんよ?」

「何だと?! ……アイツ; 何処行ったんだ?!」


 がっくりと、脱力してしまう。最初に抱いた無愛想というイメージが急激に崩れていく気がする。


「だったら仕方がない……。神崎、ちょっとついて来い」

「は、はい!」


 環樹は慌てて立ち上がった。



   *   *



「悪いな。化学準備室に寄って、荷物を置いてからになるが、まずは食堂に案内するか……」

「い、いえ。全然、大丈夫です!」


 なんて会話を交わしつつ、先生が化学準備室だろう部屋の引き戸を開けたら、何だか良い匂いに鼻を(くすぐ)られた。


「おっかえり~。ちょーどコーヒー沸いてるで~」


 中には既に人が居て、何故かコーヒーを淹れていた。

 あ~、良い香りだな~。と、ついほっこり和んでしまったけれど。


「蓮! 何でお前がここに居る?!」


 土岐塚先生のちょっと怒った声が。


「ん~? いやぁ、美味(うま)いコーヒー飲みたいなーって思て。

 ああ、オレかてなんぼなんでもタダで飲ませろなんて言わへんし。

 そっちの、机の上にある総菜パン、好きなん先に取ってええで」


 見れば、指さされた机の上には山のように(うずたか)く積まれた大量の総菜パンや菓子パンが。


「いや、そうじゃなくてだな……。

 ―――はぁ、もう良い。で、幾つ貰って良いんだ?」

「半分以下なら。

 あ、転校生のカノジョもココで一緒に喰ってくか?

 今なら入れ立てのコーヒー付きやで?」


 何だかとっても土岐塚先生と仲が良さそうなその生徒さんは、多分、名前からしてさっき先生が私を案内させようとしていた人? ……みたいで。


「は、はい! って、良いんですか?」

「えーよー。

 オススメは焼きそばパンと、フルーツサンド……、と、後何()ぅたっけ???

 まぁ、とにかく、好きなん取りや。コーヒーもうすぐ入るし」

「コイツがああ言い出したら、梃子(てこ)でも動かんからな。

 神崎、パンが嫌いでなければ大人しく貰っておけ。

 それに、コイツが入れるコーヒーは美味いぞ」

「じゃあ、遠慮無く頂きます♪

 えっと~、何が良いかなぁ……」


 うわ、ホントにいっぱいある!

 コロッケパン、ホットドッグ、ハムカツサンド、塩パン……お勧めは確か、焼きそばパンにフルーツサンドって言ってた様な?


「す、すっごい……確かにお勧めなだけある、この焼きそばパン!」


 ふっくらとしたコッペパンに、これでもかと詰め込まれた焼きそばの真ん中には、タコさんウインナーが! 今にもこぼれ落ちそうな絶妙なバランスで盛られている。 


「そやろ~。その焼きそばパンは毎回速攻で売り切れるからな。なかなか争奪戦激しいねんで。

 んで、フルーツサンドも今日のんは一番人気の白桃入りやからな~。

 なかなかええ戦果やったわ」


 ふぅー、とまるで一仕事終えた感漂わせまくりな様子で、コーヒーの入ったちょっと大きめの断熱

紙コップを手渡してくれた。


「砂糖とミルクはセルフサービスな。そっちのカゴに入れてあるから。

 で、転校生のカノジョはパンその二つだけでええんか?」

「あ、はい。充分です」

「したら、センセは?」

「俺は……、この3つだな。―――おお、悪いな」


 先生もコーヒーを受け取る。


「じゃー、頂きまーす!」

「い、頂きます!」

「頂きます」


 お行儀良く、ちゃんと手を合わせて三人揃って頂きますしてから食べ始める。


「あ、忘れてた。はい、コレ。

 除菌ウェットティッシュ買ぅて来たんやった」


 ガコンと大きなボトルタイプの容器が机に置かれる。


「蓮、お前……この部屋に居着く気じゃ無いだろうな?

 紙コップに、砂糖やミルク、更にウェットティッシュと言い……だんだん物が増えているじゃ無いか;」

「えーやん別に。有って困るモンでもないやろな?」


 とその人はからからと笑っている。


「全く……。神崎、コイツは桜庭(さくらば) (れん)と言ってな。

 お前と同じ1年C組の生徒で、且つ今期の生徒会長だ」


 呆れ果てた口調で語られた話はなかなかに耳を疑う内容で、思わず聞き返してしまう。


「え、一年なのに生徒会長なんですか?」

「ああ。まぁ、コイツの場合、相方が学園の超絶有名人だったのも原因なんだろうが……。

 高等部からの編入組が、幾ら試験が満点だったからって、一年から生徒会長ってのは、前代未聞だぞ?」

「む~。何べんも言うてるけど、編入試験は超マグレやってんってば。

 そやのに卿夜(きょうや)のヤツが、突然『生徒会選挙出るぞ!』とか言い出して……。

 オマケにジャンケン負けてしもて会長なんかやらされるし……。

 何か、もう、この春からの状況がジェットコースターみたいで……。

 オレ的には『どーしてこーなった?』って感じなんやけど」


 はぁ~と、ため息と共に会長さんがしみじみと愚痴る。


「まぁ、諦めるんだな。皇﨑(おうさき)に見初められたのが運の尽きだ。

 あの行動力の高さには驚かされる」

「何かねー。

 ムダに行動力あるっしょ? オレも正直ビビったわ~。こんなヤツ居るんやー、って。

 あ、そうゆーたら、今日って隔週の会議の日やんか……。

 ―――面倒やなぁ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ