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第4話-4 しゃーないなぁ……前行くか

なんともぐだぐだしております;

「したら手始めにロゼ拾いに行くで。

 えーと、アイツのホテル何処やっけな……ああ、難波の方か。

 ―――って、ムダにええトコ泊まっとんな;

 顕秋(けんしゅう)さん、先にここ寄って一人ピックアップしてから向かってな」

「承知しました!」


 と蓮がスマホの地図を見せると、顕秋は慣れた手つきでカーナビの行き先を修正、再度入力すると車を始動させる。

 その運転は驚くほど静かで、安全運転の見本とも言うべき物だった。


「―――もしもし、ロゼ? おはよ~さん。

 もうそっち向かってるからホテルの前で待っときや~」


 一方で蓮がロゼッタに電話をしている膝の上には、いつの間にかタローちゃんが陣取っている。蓮が組んだ足の窪みに体を沿わせて(決して収まっているとは言わない)、まるで液体と称されるネコの柔らかさを存分に発揮して、びろ~んと伸びている。


 少しして車が路肩に止まると、タローちゃんをそっと膝から退かせて蓮がドアを開ける。


「おーい、ロゼ、こっちやで!」


 と下りていく。

 先に後部に荷物を積み込み、ロゼッタを伴って戻ってくる。


「おはようなのじゃー!」


 なんとも脳天気そうな声で挨拶してくるロゼッタに、すっかり仲良くなったらしい女性陣から「おはよ~!」「おはようございます」とか声が返る。


「ロゼちゃん、ここ座る? 通路側が良いなら、私奥に行くよ?」

「嬉しいのじゃ~。でも景色が見たいから、窓側が良いのじゃ♪

 ―――こ、子供っぽいって思うかえ?」

「良いんじゃない? 実際僕たち子供なんだしさ」


 なんて小学生組が話しているが、前方ではまた別の会話が……。


「ちょ……タローちゃん; そこオレの席……」


 入ってすぐの2列席左側に蓮が座っていたのだが、今そこにはタローちゃんが丸くなって鎮座している。どうやら膝の上から退かされたのでご機嫌斜めらしい。

 手を伸ばすとシャーッと威嚇までされる始末。


「しゃーないなぁ……前行くか」


 すごすごと助手席へ蓮が移動する。


「―――さぁ、気ぃ取り直して、出発進行や」



    * * * * *



 ※ちなみに、座席順※


   助手席:蓮     運転席:顕秋


           タローちゃん/卿夜  

   タイチ    雅/たまちゃん

   まーくん   ミトちゃん/ロゼッタ



   * * * * *


 

 途中、サービスエリアでトイレ休憩と小腹を満たし、現地へ到着。


「さぁ、着いたで~。夏合宿の地、本部名義のお屋敷や」


 閑静な別荘地というよりは、モロに山奥。でも建物は小綺麗で掃除や庭の手入れも行き届いている。


「―――?」


 タイチがちょっとした既視感に襲われていると、各々荷物を手に玄関前の階段を上り始めている。


「タイチー、置いていきますわよ~?」


 少し先に居る雅が振り向いて笑っている。


「お、おう……今行く!」


 洋風の2階建てのその建物は、少し古びた感じは否めない物の、こんな山の中に建っているとは思えない程瀟洒(しょうしゃ)な造りだ。一応、蓮お手製の”夏合宿のしおり”に間取りは描かれていたが、実物を見ると印象は随分と変わる。

 1階には玄関ホール、厨房、食堂とトイレと洗面にお風呂、応接室に小部屋が幾つかと大きめの部屋が2つ。

 2階には書斎、小部屋が幾つかとトイレ、大きな部屋が2つ。

 1階の渡り廊下の先には小ぶりだが露天風呂もあるという。


「つーか、贅沢な造りやんな~。こんな山奥に。

 それで使うのはせいぜい年に1回くらいて……もったいな過ぎやん;」


 一通り見て回りながら、ボソっと蓮が零したのだが、本当に。


「で、2階の2部屋が女子の部屋や。簡易やけどそれぞれの部屋に2台ずつベッドも用意してあるから、使ってくれたらええ。

 野郎共は1階の2部屋。同じようにベッドも入れてある。部屋割りはそれぞれ話し合うて決めて。

 早速1時間後には春破さん達が来て座学始まるから、それまでには準備済ませとくようにな。

 ―――そしたら、解散!」


 蓮の号令とともに、男女に分かれて部屋割りを決め……?


「蓮さん、蓮さん! 質問!」


「なんや~? ミトちゃん」


 暫くして、女子グループの方から質問が。


「その……お部屋、かなり広かったじゃありません? 一部屋でわたくし達全員で使うというのは出来ません事?」


 すまなさそうにお伺いを立てる雅だったが、他の面々も同じ意見らしく、うんうんと頷いている。


「まぁ、ベッド4台入れても広さは充分やろうしなぁ。皆が一緒がええんなら、どっちかの部屋にベッド運び込こもか?」


 その返事にわっと歓声が上がる。


「なんや知らん間に随分と仲良ぅなったんやな……卿夜(きょうや)、部屋割りは任すで?

 顕秋さん、ベッド運ぶん手伝って貰てかまへん?」


「あ、はい。お手伝いします!」


 と1階の小部屋の一つに泊まる事になっている顕秋を連れて、女性陣と2階へ上がっていく。一方、残された男性陣はと言うと……。


「……で、俺らはどーするよ?」


「そうだなぁ、俺と蓮、タイチと正冬(まさと)君……か?

 それとも正冬君は顕秋さんと一緒の方が良いか?」


 すかさずタイチが異を差し挟む。


「いや、俺どーすんだよ?!」


「顕秋さんが使う予定だった小部屋へ行くか、それとも女性陣みたいにこっちへベッドを1台移動するかだな」


「ボク、蓮兄ちゃんと一緒の部屋が良いな……ダメかな?」


 全然纏まらない。

 その内、蓮と顕秋が下りてきた。


「? なんや、まだ決まってへんのか? 部屋割り」


 呆れたように言われて言葉を返せない。


「いっその事、女子みたいに全員一緒の部屋にするか?」


 蓮の提案に、今度は顕秋が声を上げる。


「え、それ、私も、ですか?」


「その方がええなら、それでもええで?

 1階の角の部屋なら女子の部屋より広いし、ベッド5つでもギリ入るやろ?」 


 瞬間、沈黙。

 全員がベッド5台の状況を想像したのだろう。

 ……流石に狭いだろ、5台は。

 パーソナルスペースもあったもんじゃない、と思ったかは定かではないが。


「―――いや、私は元々の部屋で大丈夫です。

 ……学生時代みたいで楽しそうではあるんですけど」


「じゃあ、顕秋さんは予定通りの部屋で。後はオレらやけど……」


「ベッド4台なら入るかな? ボク、やっぱり蓮兄ちゃんと一緒が良い!」


「俺は……別が良い、かな……何となく。」


 そんな中、ボソボソと歯切れ悪く言い出したのはタイチ。


「そーなん? じゃあ、卿夜とで一部屋使うか?

 あ、でも卿夜とは打ち合わせとか有るから同部屋の方が都合がええんか……。

 なかなか決まらんな; 早よせんと春破(しゅんや)さん達来てまうで~」


 だんだん時間が迫ってくる。部屋割りでこんなに時間を食うとはこれっぽっちも思っていなかっただけに、蓮にも珍しく焦りが見える。


「だったら俺は蓮達と一緒の部屋で、タイチは顕秋さんの隣の小部屋にでも行くか?

 流石にあのだだっ広い部屋に一人は寂しいだろうし」


「まぁ掃除は全館してくれてるから、使えん事はないやろ。

 それでどうや? タイチ」


「―――ああ、それでいい。」


「ほな、さっさとベッド移動させてしまおか……はいはい、動く!」 


 ぱん、と蓮が手を打ち鳴らせるのを合図に漸く男性陣も動き出した。

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