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第4話-3 なつ……がっしゅく……?

ロゼ顔見せからの、夏合宿へ展開しました。

「へ……?!」


 ロゼッタが呆けた声を出した。


「いや、東方つっても、日本とは限らんのとちゃう? って話やがな。

 みんな、どー思うよ?」


 蓮がそうメンバーに話を振るから。


「まぁ、そう言われれば……?」

「確かにそうかも?」


 小学生組が世界地図を思い浮かべ、同意? する。


「うーん、でも、ほら、『東方見聞録』とかの例もありますから、日本である可能性もありますわよね?」


 ロゼッタをフォローするように雅が言うと、


「そうだよな。”蒼”って言うなら、思い当たる人も一人居る事だしな。

 なあ、卿夜?」

「あ、ああ……。そうだな……」


 とタイチと卿夜も同調する。


「何じゃと?! 思い当たる人とな! そのような方がいらっしゃるのじゃな?!

 何処じゃ?! 何処に行けばお目通り出来る?!

 そ、そうじゃ、ご芳名は何とおっしゃるのじゃ?!」


 瞳をキラキラさせ、頬を紅潮させて興奮気味にロゼッタが矢継ぎ早に質問する。


「え、と……蒼眞さんなら本部所属なんだっけか?」


 余りの勢いに若干タイチが引き気味に卿夜に確認する。


「ああ。一応本部預かりだが、動ける中でも実力が高い人だからな。

 あちこち出張で飛び回っているらしいぞ?

 この間も一緒に東北支部まで行って来たし……」

「―――東北って、あのデュラハンが出たとかって件ですわよね?」


 卿夜から簡単な報告はされていたから、術師組の二人もあらましは知っている。


「デュラハン……? もしかして、胸に穴のある個体ではないかえ?」


 ロゼッタが一転険しい表情で口を挟んだ。


「確か、そんな事を言っていたと思うが……それがどうかしたのか?」


 当時の蒼眞の発言を思い出しつつ、応える。


「現在出没して居る”真祖”を名乗る吸血鬼が、アイルランドに現れた際に狩り逃したとされておった個体なのじゃが……。

 そうか、このような東の果てまで逃亡しておったのじゃな……」


「それこそ、その”真祖(仮)”に受けたダメージを癒やす為に、他のヤツの魂核を奪ってたんやろな。

 でも、自分より格下の妖怪の魂核じゃあ、なかなか足しにはならんかったって事やろ。


 まぁ、でもそのデュラハンの件はもう終わっとるで。

 東北支部長の緋之原さんと蒼眞さんの二人で討伐しとるから。

 ―――それもきっちり魂核破壊レベルで」


 その言葉にロゼッタが目を見開いた。


「な、なんじゃと?! あのデュラハンは討伐レベルSにランクされておった筈……。

 やはり、その”ソーマ”様に是非とも一度お目文字願いたいのじゃ!」


 蓮がやれやれと言いたげに一度ため息をつく。

 そして、こんな事を言い出した。


「そんな簡単に蒼眞さんに逢えるとは限らんけど……。

 それよりこのメンツで『夏合宿』せーへんか?」


「なつ……がっしゅく……?」


 誰かの不可解そうな声。


「流石にロゼをなんの用意も無く本部(お山)には連れて行かれへんからなぁ。

 とは言え、この間の慰労と各人の強化も兼ねて、泊まり込みで5泊6日。

 BBQに肝試し、釣りに花火に、綺麗な水の川もあるから当然水着持参で、ってのはどうや?」


 絶対自分が楽しみたいだけのような気もするが……それでも一同が沸く。


「キモダメシ! ジャッポーネの夏の醍醐味なのじゃ!! 妾も行って良いのかえ?!」


「お前一人に出来へんやろが;

 そもそも置いていったら、オレがけーいちろーに怒られるやん。


 みんな、行くならちゃんと保護者の許可を貰て来る事!

 日程は小学生組は試験休みが無いから、終業式後。

 詳しくは、今から配る”夏合宿のしおり”を確認してや~」


 と、妙に手作り感溢れる冊子を手渡される。

 

「まぁ、手が込んでいますのね?!」

「わ~、面白~い。会長さんの手作りなんです?」

「珍しくPCの前に座って何かしていると思ったら、こんなモノを作っていたのか……」

「もしかして暇なのか、お前?」


 褒める? 女子と、呆れかえる? 男子に別れた高校生組に対し、小学生組は……。


「行きたい行きたい!! エリちゃんにこれ見せるね、蓮さん!」

「おう。連絡先とかもちゃんと書いてあるからな」

「―――あ、座学の講師、春破兄さんなんだ!」


 嬉しそうな正冬の言葉に、術師組が『えッ?!』と驚愕の声を上げ、慌てて日程表の座学の欄を確認する。

 そこには確かに担当講師として”霧江春破”の名が書かれている。


「春破さん、忙しいだろうに座学って……大丈夫なのか?」

「あー、座学はメンツ増えるのと引き換えで、向こうからも頼まれたんや。

 夏邪さんと顕秋さんが受けに来る。

 引き続き、基礎鍛錬はタローちゃんが担当してくれるし、なんなら他の講師も来るかも知れんからお楽しみに♪

 あ、電波は一応届くからスマホもオッケーやで~」


「おお、何気に霧江四兄弟勢揃いか?」

「確かに全員揃うのは珍しいな」

「みんな忙しいから……って、東北じゃボク以外一緒だったんだっけ?」


「……水着なんて持っておらんのじゃ;」

「わ、私も持ってませんから、一緒に買いに行きませんか?」

「でしたらわたくしも、ご一緒しても宜しいでしょうか?

 そうですわ、ミトちゃんもどうです?」

「え、良いの?! 行きたいです!!」


 わいわいと楽しそうに話すのを見ながら、蓮が香箱座りのタローちゃんの頭を撫でている。


「タローちゃんもありがとうな。無理聞いてくれて。

 向こう行ってる間、こっちの事は頼んであるから安心してな」

「ンニャフフ……」


 喉をゴロゴロ鳴らせながら気持ちよさそうに目を閉じている。




     * * * *




 結局、補習に引っかかる者も無く、全員参加で夏合宿の開始を迎えた。


「それにしても、エリナセンセ……二つ返事でオッケー出すやなんて、ちょっとオレらの事信用しすぎとちゃうか;」


 集合場所にミトちゃんと一緒にやって来て、見送りするという絵璃奈に蓮が苦笑する。


「うふふ。それはもう信用していますよ。美統の恩人ですから~。

 では、美統をよろしくお願いいたしますね~、みなさん」


 深々と頭を下げる絵璃奈に、ミトちゃんが元気に「行ってきます!」と返す。

 一行は手を振る絵璃奈に見送られ、歩き出す。


「そういや、向こうまでは”車”って書いてたが……?」

「ん? ああ、タローちゃん、ペットキャリーはイヤやて言うから電車は諦めたんや。

 車はもうちょっと行った先に停まってる……お、アレや」


 と、蓮が指差す先には、学園の来客用駐車場に見慣れない大きめの自動車が……ぶっちゃけるとハイエースのワゴンが停車している。

 しかし、その横でぶんぶんと手を振っているのは―――。


「みなさ~ん、こっちですよ~!」


 卿夜の脳裏に(よぎ)るのは、例の東北出張の帰りの道中だ。

 顔が青ざめ引きつり、その人物を認識した途端足が動かなくなる。


「どうしたんだ? 卿夜……って、硬直してる?!」

「あー、蘇るトラウマってやつか? 大丈夫やで、卿夜;

 顕秋さん、ワゴンの運転は真面(まとも)なん、オレも確認してるから。

 それに今回は小学生ズにタローちゃんも居るし、そんな変な運転はさせへんから」


 それを聞いて少しは安心したのか、まだ青い顔ではあるものの歩き出す。


「……顕秋兄さん; 一体どんな運転したんだろ……;」


 横でまーくんが違う意味で表情を硬くしている。


「さー、みんな! 今日の運転手を務めてくれる、霧江顕秋さん。

 まーくんのすぐ上のお兄さんやで。んじゃ、挨拶!」


 蓮の号令に皆が揃って「よろしくお願いします!」とお辞儀する。

 ……若干一名、ぎこちない挙動をしているが、見なかった事にしよう、そうしよう。

 顔合わせが終わると、荷物を積み込み早速車内に乗り込んだのだが……?


「え、これ、結構良い車じゃない?」

「……任務の時のハイエースと雲泥の差だな;」


 まーくんとタイチがめざとく話していると、蓮がどや顔で解説し始める。


「おお、お目が高い! グランドキャビンていう人も荷物もたっぷり運べる車で、しかも限界ギリギリくらいまでカスタムしてあるからな、こいつ。

 今回の話したら、これ使たらええよって、みこっちゃんが気前よぅ貸してくれたんや」


「お前、また命様を”みこっちゃん”って……その内刺されても知らねぇぞ?」

「大丈夫大丈夫~。さ、みんな好きな所に座ってや。そろそろ出発するで」


 それぞれ思い思いの場所に陣取り、「はーい」だの「いいよー」だのと返ってくる。


 蓮も2列目のシートに座り、運転席へ声を掛ける。


「じゃあ、出発しよか。顕秋さんよろしく~」

「はい、お任せ下さい! みなさんを安全に迅速にお送り致します!」

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