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第4話-1 厄日やー……

新キャラ登場……。

「また転入生が来るそうだな?」


 と問われてため息を盛大に吐き出す。


「あー、学園の方にも正式に通達来たんか~。

 そうらしいで? 知らんけど……」


 投げやりに応えたのは、またも化学準備室に入り浸って勝手にコーヒーを入れている生徒会長。


「なんだ、歓迎ムードにはほど遠いな?」

「うーん、イタリアからの留学生……てのがフツーの留学生やったらな。

 実の所、ヴァチカンからの斥候みたいなモンやろうしなぁ。

 どんな人間なんか、見極めんとアカン、のやろなぁ……あー、めんど。」


 ばったりと机に突っ伏す。


「面倒と言えば、お前が面倒を見る人数もまた増えたらしいが……。

 どんな感じなんだ?」

「……タローちゃんにも手伝ってもろて、何とかやってるけど。

 ちょっとずつ鍛えられてはおるカンジかなぁ。

 新入りは小学生二人やで。まーくんとミトちゃん。

 流石にこの学園に来てるだけあるわ。二人とも素質は充分ある。

 ―――その内センセにも手伝って欲しいねんけど?」


 顔だけこちらを向けてそんな事を言う。


「俺に何をやらせたいんだ……; 相変わらず無茶ぶりだな」

「ん~、そうやなぁ。タイチがもーちょい吹っ切れてくれたら、センセに当ててもちょっとは歯ごたえ出そうやけど、まだ無理かなぁ」

大鴻池(おおこうち)か……。ん? 大鴻池と言えば、祖霊の件はどうなったんだ?」

「そっちもまだまだ……今のままやと喰われてまうだけやし。

 てか、あんなにメンタル豆腐やとは思わんかったわ……;

 そっちの方から何とかせんとアカンかもなぁ」


 またぐったりと突っ伏す。


「ホンマ、人教えるやなんて柄にも無い事させんとって欲しいわ。

 卿夜(きょうや)だけやった筈やのに……何でこんな事になったんや?!」

「人が周りに集まるのは、ある意味人徳だぞ。誇っておけ」

「センセ、他人事やと思てからに……その内引き摺りこんだるからな~」




   * * *




 梅雨明け間近、そして期末試験も間近といった頃、(くだん)の留学生はやってきた。

 ピンク髪ツインテールにピンと立ったアホ毛が2本、白いシスター服の様な物を身につけた小学生……いや、現地でスキップしているとかで正真正銘高校生という話らしい。

 とは言え、同じ年代の正冬まーくん美統ミトちゃんよりも更に低い身長で、小学3年生と言われても納得しそうな感じだ。

 そしてもっと問題なのはその口調。

 某探偵漫画のコピーではないが、『見た目は子供』の少女の名は


(わらわ)はロゼッタ・ブルー・カスティリョーネじゃ。宜しく頼むのじゃ」

「なんでロリ婆……いや、のじゃロリ口調やねん; 属性盛り過ぎやろ……」


 と蓮が愚痴るのも仕方ない。そして更に。


「あー、蓮。留学生は生徒会に任せるぞ。学園長からのお達しだからな」


 と担任の土岐塚(ときづか)にも厳命されてしまう。

 クラス中の視線が集中する中、あからさまに嫌そうな顔をした蓮がガックリと机に突っ伏した。


「厄日やー……」





   *  *  *




「―――と言う訳で”ロゼッタ・ブルー・カスティリョーネ”嬢、イタリアからの留学生や」


 早速その日の夕方、呼び出しを掛け、メンバーに紹介する。


「何が『と言う訳で』なのかがさっぱりなんだが;」

「まぁ、お可愛いらしい方ですわね!」

「高校生……? へ? スキップ? 頭良いんだな~」

「僕らと同じくらいかな?」

「そうだね~。友達になれるかなぁ?」

「ナァ~~~ゴ」


 上から卿夜、(みやび)泰智タイチ正冬まーくん美統ミトちゃん、タローちゃん。ちなみに環樹(たまき)泰智タイチに事情を説明している。


「ほんじゃ、イタリアやのぅてヴァチカンから、て言うたら分かり易いか?

 おまけに属性持ちやで……」

「属性?」


 と言われて全員首を傾げたのだが……。


「ほれ、ロゼ。自己紹介してや」


 と蓮が少女の頭にぽんと手を置くと、それまで黙っていた少女がギロッと睨め付ける。


「頭を触るでない! 何度言えば分かるのじゃ?!」

(やかま)しいわ、ちびっこ。はよ自己紹介!」


 クレームを無視する蓮に苛立ちつつも、言われた通り自己紹介を先にしようと思い直し見知らぬ面々に向き直す。


「コホン。……改めましてじゃな。

 妾の名はロゼッタ・ブルー・カスティリョーネじゃ。どうぞ宜しく頼むのじゃ」


 ポカーン。蓮と環樹を除く全員が呆けた様に無言だった。


「な、なんじゃ?! 妾が何か間違うたのか?!」


 一転、不安げに蓮を見上げる。


「いや、お前の言葉がな……。今の時代の言葉とは盛大にかけ離れとんねん。

 そんな古い時代の日本語、誰に習たんや;」

「ジャパニーズアニメーションとか、由緒正しい古典文学、とかじゃったな?」

「―――極端過ぎやろ。

 まぁ、こんな訳で日本語の意思疎通には問題は、一応ない。

 んで、ヴァチカンからは何て言われて来てるんや?」


「『何て』もなにも、ただ、『ジャッポーネの若い同業者と交流してきなさい』としか言われておらんのじゃ。

 信じる信じないはお主らの自由じゃが、上同士で話は付いておる筈じゃ。

 本国から帰国の命令が出るまでは、お主らと行動を共にさせて貰うぞよ」


「ふーん。閉鎖的なあちらさんには珍しいな。

 で、ロゼ。同業者的な意味で聞くけど、お前どんくらい強いんや?」


 ロゼッタは待ってましたとばかりにドヤ顔になる。


「妾はこの年にして栄えある”ドミニオンズ”の9番隊に属して居る!

 なかなか居らぬのじゃぞ? 崇め奉るが良い!」


 と、エッヘンとでも言うように仁王立ちし、腰に手を当て胸を張る。


「ドミニオンズ……て事は中位三隊の第4位か。まぁ、そこそこやな。

 とは言え9番隊て最下位やないか;

 そうなると、やな―――お前、せいぜいこっちの3級くらいか」

「え、3級なの? だったらボクと一緒くらいじゃない?」


 黙って聞いていた正冬(まさと)がぶっちゃけた事を言い出した。


「え、正冬君、3級ですの?!」


 正真正銘3級の雅が驚く。


「正式には昇級試験受けてないけど、春破(しゅんや)兄さんには確実に3級は受かるだろうって言われてるから、今度受けてみようかなって思ってるんだ」


 えへへ、と照れ臭そうに話す正冬だが、美統(みのり)が不満そうに声を上げる。


「えー、ズルい! まーくんが受けるんなら私も受ける!」

鞆成(ともなり)さんはまだ無理だろう; 実技は恐らく充分だが、基礎知識がまだ怪しいしな」


 冷静に卿夜に諭されて美統ミトちゃんはガックリ……。


「だって細かすぎるんだもん……。ホントにアレ全部覚えなきゃ駄目?」

「最悪死んじまう事も無いとは言えないからな~。

 最低限、自分の力の特徴と敵との相性を覚えてないと危ないから」


 実戦経験も徐々に積んでいる泰智タイチが先輩らしく重要性を説く。


「まぁ、リスク回避の為に2級以下は必ず上級術師の責任者が付くか、ベテラン含む複数人数での運用が絶対だから……。

 先日の鞆成さんの一件もそうだっただろう?」


 卿夜が例を出して任務における体制の説明も補足する。


「あ、てことは蓮さんが責任者で、引率だったんだっけ」


 美統がこの間の状況を思い返して納得したように頷いたのだが、ぼそっと泰智タイチが零す。


「―――引率……されてたんだな、俺達」

「……そうですわね; でも、蓮会長が居なかったら私たち、美統ちゃんの案件すら、全然知らずに終わったかもですもの」


「そうだったんだ。じゃあ、蓮さんに繋いでくれたまーくんに感謝しなくちゃね!」


 と、自分そっちのけで盛り上がる人間達に、ロゼッタが痺れを切らせる。


「妾を放置するでない!! 意味が分かるように話すのじゃ!!」


 ―――あ……。そういや自己紹介の途中でしたっけ?

 と、ちょっと気まずい雰囲気になるが、そこは空気を読まない蓮が強引に自己紹介へハンドルを切り戻す。


「えーとな。ロゼが来る直前にへっぽこな夢魔の事件があってな?

 その被害者であり、同時に『力』に覚醒した朱鷺之台学園初等部6年1組、鞆成美統ちゃんと、同じく6年1組、霧江正冬君。彼の家は代々優秀な術者を排出する家であり、正冬君自身も高い素質を持った子や」


 と蓮がしれっと小学生組の紹介を始める。


「鞆成美統です。友達からは”ミトちゃん”って呼ばれてるよ」

「僕は霧江(きりえ)正冬です。ここでは”末っ子”とか”まーくん”とか言われてる」

「まーくんは4兄弟の末っ子やからな。

 んで、先に猫又のタローちゃん。この辺りのネコ達のまとめ役で、オレらの教官でもあるから、絶対に祓うなよ? まぁ、お前じゃ絶対に祓えんやろうけど」


 まるで敵でも見るような目付きのロゼッタに釘を刺しておく。


「ンナァ~~~ゴ!」


 一声鳴くと、義理は果たしたと言わんばかりにお手々ないないで座り込む。

 

「安心し過ぎやろ; まぁええけど。

 それから高校生組。オレは同じクラスで生徒会長の桜庭(さくらば)蓮。と、もう一人同じ1年C組で神崎珠樹。彼女も最近『力』に目覚めたまだ初心者や」


 蓮に示され、ぺこりと頭を下げる。


「神崎珠樹です。なんだかまだ全然良く分からないんですけど……会長さんに突然生徒会見習いにされてしまいまして。あ、”たまちゃん”と呼ばれてます」


「次が、1年A組の皇﨑(おうさき)卿夜。生徒会副会長で、理事長の一人息子でもある。んで、絶賛反抗期中や。あ、術者としては”仮免”の1級や」


 卿夜としてはこんなに短い紹介文の中で幾つも引っかかる文言があるせいか、こめかみがヒクついているがかろうじて会釈する。曰く後で覚えとけよってヤツである。


「皇﨑卿夜だ。宜しく」

「おお、そなたが理事長の……」


 ロゼッタが声を掛けるが卿夜はツーンと無視。その様子にボソボソと蓮にぼやく。


「ほんに反抗期じゃのう……」

「そうやろ、面倒臭いやろ?」


「聞こえてるぞ!! お前ら!!」


 卿夜が怒鳴るまでが1つのルーティン。


「えー、1年D組高津(たかつ)雅。生徒会書記で、階級は3級やっけ?

 まぁ、雅は2級受けたらすんなり通るやろうけどな。呪符術の家系のお姫様や」

「高津雅ですわ。宜しくお願い致しますわね」


 綺麗なお辞儀をし、にっこりと笑う。


「最後が2年B組大鴻池泰智(やすとも)、生徒会会計。階級は2級。雅の幼馴染みでツッコミ役やな。メンタル豆腐並やけど、攻撃に氣を纏わせて戦う武闘派や」


「大鴻池泰智、通称タイチだ。てか、メンタル豆腐並は余計だろうが!!」

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