第3話-12 ―――もしかして、メンタル豆腐並なんか?
やっと次のエリア進みましたー。
落ち込むタイチにフォローが……。
「あー、一応タイチの名誉? の為に弁明しとくとやな~。
ココでの"体力"ゆーんは、心の強さゆーか精神の強靱さゆーか、まぁ、そんな感じで現実での肉体の体力とはまた違うんやで?」
と言う事を蓮が言い出した。
「えーと……でしたら、タイチは……」
ちょっと言いにくそうにミヤビが蓮の表情を伺いつつも口に出す。
「さっきの組み手でもちょっと思たんやけど、―――もしかして、メンタル豆腐並なんか?」
………………。
そう言えば、蓮のヤツ確か『意外と打たれ弱いんか?』とかなんとか言ってなかったか?
ガク―――ッ!! 心なしか、またHPバーがちょっぴり減ったような?
「―――意外、だな?」
「ええ。むしろ一番精神力は強いかと思っていましたわ」
「心の強さなんて、一概にどれが要因とか単純なもんでもないからな。
でも、今の状態だけでゆーたら、タイチより卿夜とミヤビの方がココでの"体力"はあるんとちゃうか?」
やれやれと言いたげに、タイチの背から環樹を移そうとしていた卿夜が口を挟む。
「だったらこれからは俺が神崎を背負っていけば良いのか?」
「いや、待って。
多分、たまちゃんココでは目ェ覚まさんと思うねんな~。
このエリアには幸い、敵とか居らんから良かったけど……この先もそうとは限らんし。
たまちゃんは先に現実に戻しといた方がええかも知らんなぁ」
顎に手を当てて、考えつつ話す蓮が、悩んだ末に早退案を出す。
「と言うか、やっぱり敵さんとやらが出ていらっしゃいますの?」
「まぁ、そう考えるのが普通だろうな。
戦隊物の世界観なら、ザコ敵の戦闘員とか、怪人とか……」
「……そう言う物なのか?」
「大体そうだよね。怪人倒したら不思議パワーで巨大化して、ヒーロー側も合体巨大メカに乗って倒すっていうのがお約束だし」
皆が戦隊物の敵の話で盛り上がる間にも、ずっと魔王コスプレままの蓮がたまちゃんの前にしゃがみ込んで唸っていた。
「―――で、お前はなんで困ってるんだ?」
珍しい物を見た、と言わんばかりに卿夜が声を掛ける。
「んー、オレが出来る方法やと、たまちゃん現実に戻って一人だけになってまうねん。
訳が分からんままパニックなって眠り続けてる周りを起こされたら、この世界から退場してまう事になる……。
正直、今回失敗したら、後それ程何回もチャンスはない」
ぐしゃぐしゃと髪をかき乱す。
「あーもー、しゃーない。―――ムーさん!!」
『はいはい、お呼びかしら?』
突然古代ギリシャ風衣装の女性が現れた。
―――だ、誰ぇッ?!!?!?!?
「たまちゃん頼めるか? オレらが戻るまで寝かしといて」
『ご要望とあらば……でも、大丈夫?』
「何が?」
『この後とか、その……彼らとか?』
"ムーさん"が気遣わしげな視線を送ったのは"彼ら"こと、固まっている卿夜達。
「あー……。まぁ、説明する。じゃあ、たまちゃんのエスコート頼むわ」
『では早速。―――また後ほど……』
女性はふわりと眠り続けるたまちゃんへと寄り添い、笑顔を残して二人とも消えた。
「―――消えた……」
「いいい今の誰ですの?! 蓮会長?!?!」
「まさか、幽霊?!」
「……なんかもう驚くのも疲れてきたな、おい」
四者は四様の反応を見せる。
「で?」
「で、とは?」
「―――説明しないのか? するって言ってただろ」
「あー、そのー。ムーさんは……どないゆーたら分かり易いんかが分からん……」
暫く頭を抱えた蓮だったが、何か閃いたらしい。
「ムーさんは意思疎通出来るスタ○ドか、ペ○ソナみたいなもんやって思といてくれたらええかなぁ……」
「―――なんだそれ? 意味が分からん」
やっぱり卿夜には通じない。
「いや、もう卿夜は理解不能なん分かってる。
むしろ卿夜以外が分かってくれたんなら、それでオッケーやねんけど……どない?」
「俺はス○ンドなら分かるかな?」
「ボクはどっちも分かるよ~」
「わたくしは、ペル○ナでしたら……」
という返事にホッとした様に蓮が続ける。
「そーか、良かった。まぁ、スタン○と違ぅて、複数居るし、○ルソナみたいに付け替えるっちゅー訳でもないから、厳密にはどっちも同じやないねんけど。
ネタばらしすると、ある意味、これがオレのチート能力の一端でもある訳よ」
「……うーん、分かったような、そうでもないような気がしますわ……」
「まぁでも、話してくれるって事は信用してくれてるって意味だよね?」
「あんまり胡散臭がられても困るからな~。
こんな特殊な場所に居てるんやし、多少なりともチームワークを守る為にも、な?
さぁ、ええ加減次行くで? あんまりのんびりしてられへんからな」
* * *
ドアを開けたら、そこは砂の海から一変、高層ビルが建ち並ぶ、オフィス街のような場所だった。
酷く無機質な感じで、行き交う人や車も、更には街路樹や植え込みすらも一切見えない。
代わりに僕らを待ち構えていたのは、戦隊物ではおなじみの戦闘員……っぽい、全身タイツの人型をした、、、なんだっけ?
「別に、人型しとるけど人間が入っとる訳やないから、じゃんじゃん撃っていき。
泥人形みたいなもんやと思といたらええから」
と、最初に一発ヘッドショットで倒した蓮兄ちゃんが言うとおり、撃たれたソレはぐしゃりと崩れて一塊の砂山になってしまった。
それから暫く、撃っても倒しても湧いて出てくる戦闘員もどきを捌きながら進んでいくと、公園の
ような拓けた場所に出た。