第1話-1 生徒会見習い?!
何故か生徒会の妙な会議に同席させられた、転校ホヤホヤの一年生……。
神崎 環樹は困惑していた。
自分は、今日この学園へ転校して来たばかりの転入生だった筈なのに。
どうしてこんな所に居るのだろう、と。
目の前では、生徒会のメンバーだと連れて来られた時に紹介された人達が、なにやら会議をしている。
だけど。内容が……おかしくない?
「したら次。えー、なになに?
『生物室のホルマリン漬けのネズミが夜になると中で泳いでいる』……って生物室はこの間一掃した筈と違うんか?
まさかもう何か入っとんのか?」
と何やらA4の紙を見ながら話しているのは会長の桜庭 蓮さん。
鮮やかな赤い髪が目を引くけど、対照的な碧い瞳も印象的。背が高くて体格も良いから、何かスポーツでもしてるのかも知れない。
「この間のは、隣の付属中学だ。ウチの生物室は掃除していないぞ。
―――まだな」
返事をしたのは副会長の皇﨑 卿夜さん。
緩くウェーブの掛かった、黒に近い紫の髪を後ろで一つに結んでいる。
ノンフレームの眼鏡も相まって、とっても頭良さそう……。
「ふふ。蓮会長ったら、未だに中等部と高等部の区別が付いていませんのね。
いい加減覚えなきゃダメですわよ?
この間も校舎を間違えて、中等部に行っちゃって遅刻してましたでしょ。
土岐塚先生の検問に引っかかってましたものね」
書記の高津 雅さん。
日本人形の様な長くて美しい黒髪と、同じく黒い瞳、白い肌。本当に日本人形みたい……。
「アレは、その、なんや。まだ居眠っとったんや……。
てか、オレはお前らと違ごて、高校からやから、校舎とか色々慣れるまでに時間掛かんねんってば」
ごにょごにょと尤もらしい説明を言いながら、会長さんが副会長さんに紙を手渡す。
「言い訳するな。
―――じゃあ、今回はこの件で良いのか?
でも、ウチの生物室、か。そんな気配には覚えが無いんだがな」
「ん~、オレはあるで? 極微かやけどな」
「まぁ、いつもながら、蓮会長の探知能力は群を抜いてますものね。
では、いつまでも校内に不穏の種を残しておく訳にもいきませんし、今回はこの件で良いんじゃありません?」
「よし、じゃあ決まりだな。
で、決行日時だが……そうだな、明日土曜日の午後2時、で良いか?」
「構いませんわ。
ちゃんと予定は空けてありますから♪」
書記さんが嬉しそうに承諾する。
「雅はいっつも協力的やな~。こっちのんは完全に『余計な事』やのに」
不思議そうに問いかけるのは会長さん。
「ふふ。蓮会長のファンですもの、私。それに何て言うか、勉強にもなりますしね」
書記さんの、ちょっと妖艶な笑みに会長さんの顔が一気に顰めっ面になる。
「ファンって……何やそれ?」
「良かったなぁ、蓮? 評判ガタ落ち炎上中なのに、ファンが居てくれて」
ニヤニヤ笑いの副会長さんが弄る。
「ガタ落ちっちゅうたって……勝手に盛り上がって勝手に炎上されてもなぁ。
ある意味、オレは卿夜に引き摺られてるだけなんやし~。
あ、そーや! たまちゃん、明日の昼から学校来られる?」
初めて話が回ってきた!
それにしても、たまちゃん????
「え、えっと……はい、来れます、ケド」
何か、ニコニコしてる会長さん以外の視線が痛い気もするんですが……。
「で、蓮。
このお嬢さんはどちらの方だ?」
副会長さんのちょっと厳し目の声がした。
「1-Cの神崎環樹ちゃん。今日転入したてのホヤホヤ。
そんで、オレが生徒会見習いにしたん」
「「「―――はぁ?!」」」
み、見習いって何―――ッ?!
「見習いって……何だ、そりゃあ?! 聞いてないぞッ!!」
それまでの冷静沈着そうな表情がかき消えてしまった副会長さん。
書記さんも目を丸くしているのに。
「そりゃそーやろ。オレが、ついさっき決めたんやから」
事も無げに会長さんは言い放った。