第3話-7 えーっ?! みんなコレなのッ?!
一人残して集合するまで丸々一話になってしまうとは……; 先が思いやられるなぁ。とほほ。
「あ、起きた。」
まず目に入ったのは蓮兄ちゃん。
ほっとしてそれから、周りを見渡すと―――ここがどこなんだかが分からない。
見渡す限り一面の砂の海と、どんより曇ったネズミ色の空。
ミトちゃんの部屋に居た筈なのに?
しかも、なぜか服が……初等部の制服を着ていた筈なのに、全身タイツって言うのかな? そういうのを着ていて。
おまけに真っ赤で、更には肩とか胸とかにプロテクターみたいな物、腰には玩具みたいな銃の入ったホルスター付きベルト、足にはブーツ……そうまるで、"戦隊物の変身後”的な格好で。
「な、何なのコレ? ていうか、ココってどこ?」
「いや、まぁその~混乱すんのも当然やねんけど、まず先に全員見つけて無事なんか確認せんとアカンねんやんか。
説明はその後になるやろなぁ。―――さ、行こか」
と手を差し出されて立ち上がる。
「い、行くって……?」
「多分そんな離れてない範囲にみんな居てるやろから、近い方から順に拾って行くで。
そうやなぁ……こっから一番近いんは、ミヤビやなー」
見れば蓮兄ちゃんもさっきまでのスーツ姿じゃなくて、変わったデザインの黒いコートを着ていて、ぱっと見た感じじゃ出来の良いコスプレっぽくなってる。
頭にはそれこそサイバー系アニメキャラの様なヘッドマウントディスプレイ? が装着されていて、それを何の違和感もなく使いこなしてる。
先に歩き出した蓮兄ちゃんに着いていくと、確かに少し先で雅さんが倒れている。
……のは良いけど(いや、良くはないけど)、雅さんも戦隊ヒーローのピンクの格好で。
(えーっ?! みんなコレなのッ?!)
「ミヤビ~、起きやー。おーい、朝やでー、ミヤビ~」
多分ボクに言ってたのと同じような事を話しかけながら、ペチペチとほっぺたを叩いてる。
「ん、ん~。……あとごふん~、ママ上~」
「……寝汚いなぁ、ミヤビも~。つーか、誰がママ上やねんw
ほらほら、さっさと起きや、ミヤビ。起きやんとこのまま放って行くで~」
ふっっと耳元に息を吹きかける。
「―――ふにゃッ?! れ、蓮会長?! って、な、何ですの、この服?!」
「よし、起きたな? したら次は……タイチ、やな。ちゃっちゃと行くで~!」
そうなるよね~って思いつつ、プチパニックが収まったら、またも眠気が襲ってきたらしい雅さんを連れて少し歩くと、大鴻池さんが途方に暮れたような顔で座り込んでいた。
ちなみに、戦隊カラーはミドリ。
「おーい、タイチー! 大丈夫かー?!」
「―――?! 蓮?! 雅ッ! と、正冬君も一緒か……。
はぁ……取り敢えず良かった……」
「ほれ、残りのメンバー探しに行くで。あー、そうや。まだミヤビが寝惚けてるから、そっちはタイチに頼むわ」
蓮兄ちゃんの手を借りて大鴻池さんも立ち上がって一行に加わる。
「ん? ……ああ、分かった。雅の奴、寝起きが悪いのは全然直らないな。
ほら、雅、歩きながら寝るなよ」
「ん~~~……」
「じゃ~次は、卿夜か。―――コッチや」
* *
また少し行くと卿夜さんが倒れて……?
うわ、蓮兄ちゃん、早ッ?! 一人で走って行っちゃったよ……。
「卿夜~、起きや~~~ッ!!」
マウント状態になり、胸倉を掴んで持ち上げると、雅さんの時とは違ってビシバシ思い切り頬を引っ叩いている。
「なんて言うか、遠慮の欠片も無いなw おい、蓮、やり過ぎて気絶させるなよ?」
「アホぅ。卿夜はミヤビ以上に寝起き悪いんやぞ?! これ位やらな全然起きひ……ムガッ!」
叩かれたからか、恥ずかしいのか、頬の赤い卿夜さんが、蓮兄ちゃんをグーパンで殴っていた。
あ、そうそう。卿夜さんは青色だね。
「くだらない事バラしてんじゃねーよッ。全く―――って、何だこれ?!
しかも……砂漠???」
「―――はいはい、全員揃てから説明するから。後、たまちゃんとセンセ見つけるで~。
となると、手近なんはたまちゃんか。―――れっつらご~♪」
蓮兄ちゃんが元気よく歩き出す。
* *
そして、たまちゃん? さんが居た。
「これはまた……不思議な状態ですわね?」
漸くしっかり起きた雅さんの言う通り、今までとは状況が違っていた。
戦隊物スーツは多分ホワイト、なんだけど……その人を守るように半透明なドーム状の物が被さってる。
「神崎の使う”壁”みたいだな」
コンコンと、拳で叩いてみながら卿夜さんが話すと、蓮兄ちゃんはなんだか考え事をしていたみたいだった。でもすぐ無言で左手をぺたりと付ける。
「―――ちょっと、離れとってくれるか」
その顔は、僕は初めて見る少し怖い顔で。全員が顔を見合わせて、ある程度の距離を取る。
すると、蓮兄ちゃんの触れている所からバチバチと派手な放電現象? を起こして、全体にまで広がる。
「―――――……る。”キカイ”せよ」
呟きとともにドームに大きな亀裂が走り、木っ端微塵に砕け散った。
その時の蓮兄ちゃんの表情が、何故か、目に焼き付いた。
冷徹な、そして断罪する神かの様な―――。あんな蓮兄ちゃん、ボクは知らない……。
背筋が急に寒くなった気がして、足が動かなかった。
卿夜さん達が駆け寄る中、僕だけがじっと見ていたせいか、蓮兄ちゃんがこっちを向いて笑った顔はいつもの明るく人懐っこい表情で。そしてやっと、僕もみんなの輪に入る。
倒れていた人に、気付けをしてみるけどその人は起きないままだった。
「むぅ……しゃーないな。置いていくっちゅー訳にもいかへんし。
負ぶって行くか。その内気ぃ付くやろ。
―――後は、センセだけやな」
「居場所は分かるのか?」
「はっはっは、お任せあれ~。オレ様にかかれば……」
卿夜さんに聞かれた蓮兄ちゃんは、これぞ”ドヤ顔の見本”って態度でディスプレイ? を操作しているけど……。
「―――って、あれ? 反応無いやん?! 何でッ?!
さっきまで出とったのに?! センセ、何処行ったー!!!」