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第3話-6 これは、オレらの専門分野や

長くなりそうです……。

「うっわー! ホントに良い部屋~!!」

「眺めがとってもよろしいですわね!!」


 と言うのが、最上階のエリナ先生の部屋にお邪魔して、リビングへ通された女性陣の第一声だった。すっかり環樹も雅も目をキラキラさせている。

 大きな窓から燦々(さんさん)と日光が入るゆったりとした作りで、ちょっとしたガーデンパーティも出来そうな庭付き。


「確かにこれだけでも価値あるよ。”一番良い部屋”ってのも頷けるな……」


 思わず自宅と比較してしまったタイチが遠い目をする。


「―――で、センセ。早速で悪いけど、会って欲しいゆー人は何処に居るん?」


 蓮はそんな仲間達には目もくれず、先を促す。


「あら、折角だからお茶でも入れようと思っていたんだけれど……。

 そうよね、先に会って貰った方が良いかも知れないわね~。

 皆さん、こちらへ……」


 と案内されたのは、淡いピンクを基調にした、女の子の部屋?

 静かな部屋だが、ベッドには誰かが寝ているようだ。


「あれ、誰か寝てるの? 具合悪いのかな……入って大丈夫?」


 環樹の言葉にエリナは少し悲しげに頷いた。


「たまちゃん。それにみんなも。―――なんか感じへんか?」

「へ?! え、っと……?」


 環樹が周りを見てみると、みんなそれまでの表情とは一変していた。


「明らかに……何か()いていますわね。確かに初等部で感じたのと同じモノですわ」

「ああ。あっちのは”残り香”だったって訳か。或いは”移り香”か」

「お二人さん、ご名答~。まーくん、センセ。これは、オレらの専門分野や」



     *     *



鞆成(ともなり) 美統(みのり)……。姉の娘なので姪っ子になります」

「ミトちゃん……ああ、えっと、仲の良い友達はみんなミトちゃんって呼んでて……」


 後を継いで説明しようと正冬が断りを入れるが、高校生組は意外とスルー。


「ん、それで?」


 蓮に先を促される。


「うん。ミトちゃんのご両親は高名な研究者なんだ。そのご両親に、ミトちゃんが小4の時に海外の大学から是非とも招きたいって声がかかったんだって。

 勿論ご両親は彼女も連れて行くつもりだったらしいんだけど……。

 でもミトちゃんは、叔母であるエリナ先生と一緒に住むからって日本に残る事を選んだんだ」

「お友達と離れ離れになるのが心底イヤだったみたいでね~。『一生のお願いだから!』って頼み込まれちゃったの。

 私もこちらへ赴任する事が決まっていたし、何より可愛い姪っ子の頼みだし、渋る姉夫婦に二人で一緒になって必死に説得したのよ~」


 エリナは懐かしそうに話すが、またすぐにその表情が曇ってしまう。


「姉夫婦が海外へ行っても、それまでと変わらず過ごしている様に見えていたのだけれど……。

 私が気付かない内に、美統にはストレスになっていたのかしら。

 今年に入って少しした頃から、美統が体の不調を訴える事が増え始めたの。

 保健の先生に相談したり、あちこちのお医者様に見て貰ったりもしていたのだけれど、全然原因が分からないままで……。

 とうとう今月に入った辺りで床に伏せる日が多くなってしまって」


 責任を感じているのだろう、エリナはすっかり塞ぎ込んでいる。


「ミトちゃんが休むようになってみんなも心配してたんだけど……。

 お医者さんじゃ原因不明なら、兄ちゃん達ならどうなんだろう? って思って相談したんだ」


 正冬も思い詰めた表情で訴える。


「さっきもゆーたかも知らんけど、もう大丈夫や。安心しぃや。

 ……てか、ホンマ間に合ぅて良かったわ。後もう一週間も遅かったら、ヤバかったかも分からん」

「―――えッ?! そ、そんなに悪い状態だったの?!」


 驚く依頼者達に、蓮は珍しく渋い顔になる。


「この状態のままやったら、その内彼女自身の体力が保たんようになって……て、―――あれ???」


 気付くと、他の面々は全員その場に(くずお)れ、伏している。


「うわー。香焚くの早すぎやゆーねん……;

 ま~たタイチに怒られるやん、オレ」


 あーあ、とでも言うようにボソッと吐き出した蓮。


『それはマスターが、みんなにきちんと説明していないからでしょ?

 いつもマスターに振り回されて、怒りたくもなるあの子達の気持ちは痛いほど分かるわよ?』


 いつの間にか蓮の隣には、古代ギリシャ風? な衣装を纏った女性が呆れ顔で寄り添っている。


「ムーさん……相変ーらず正論過ぎてぐぅの音も出ーへんわ……」


 がっくりと意気消沈しながらも、しっかり術式を構築していく。


「さぁ、ほんならオレらも行こか。ミトちゃんの”夢の中”へ―――」



   *     *



「―――くん、起きや~。もう朝やで~」


 聞こえてきた呑気な声に、意識が覚醒し始める。それはまるで深い海の底から、ゆっくり浮上していくような感覚で……。


「―――ッ?!」


 ボクは思わず飛び起きていた。

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