表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/54

第3話-5 そ、そーゆーもんですか……?

たまちゃん、すっかりモブ化してないか?

 その人は、階下へ降りる階段のすぐ手前で待ってくれて居た。

 壁に背中を預け、何をするでもなくただ瞑目(めいもく)するその姿が、妙に絵になるというか―――。


「……蓮兄ちゃん!」


 声を掛けるのを、自分が少し躊躇(ためら)った事に気付いて、何だか少しモヤモヤした気分になる。


「ん? お~。まーくん、もう終わったんか?」


 そして彼の発した言葉にもう一度盛大にモヤッとする。

 黙ってれば、超イケメンだけど、話すとコレだもんな……と。

 蓮は正冬がそんな事を考えているなどとは露知らず、メガネを外すとやたらと目をしぱしぱさせている。


「……どうしたの?」

「いや、そのな……これ、卿夜のん借りたんやけど、スんゲー度がきつぅてなぁ。

 なんか頭痛なってきた……」

「あー……。そのメガネ、レンズすごく分厚いもんね……。

 えっと、蓮兄ちゃんだけ? 卿夜さん達は?」

「この辺見てもろてる。そろそろ戻ると思うけど……あ、お~い、こっちやで~」


 と廊下の向こうの人影に向かって蓮が手招きをすると、その一団が気付いたのだろう、小走りに駆け寄ってくる。


「お疲れ~。―――どうやった?」

「”変な感じ”は確かにあるな。但し、この辺りじゃ気配が薄すぎて判別が難しい気がする」

「前より探知能力は上がってると思うのですけれど……」


 あれだけスパルタ訓練受けたのに、と悔しそうに雅が零す。

 そこへ、知らない声が。


「あらまあ、そうだわ~! 何だか見覚えがあると思ってたけれど、やっと思い出したー。

 高等部の生徒会のメンバーね~」


 卿夜達一行は正冬と一緒に居た女性に突然そんな事を言われてキョトンとしている。


「? 蓮、この方は?」

「ああ、まーくんの担任のセンセ。今回の……ホンマの依頼者、やな」



    *     *



 詳しい話は場所を移して、という事になり、先生には先に用事を済ませてもらう。職員室の前で待っていると……。


「蓮、さっき言ってた本当の依頼者って、どういう意味だよ?」


 正冬を気にしつつも、タイチが聞いてくるが、答えたのは卿夜。


「今回の件は、本部からも正式に俺達に対処命令が下りている。

 曰く、解決出来るならやれ。出来ないならもっと上が出張る事になるから見極めてこい、と」

「……そう言えば卿夜さんってこの地域の担当者って事になってらしたのでしたっけ。

 やっぱり一級ですものね」

「あ、そう言えばお山に物を取りに行ったって、関係あるんです?」

「ま、その辺は後のお楽しみ、やな。お、センセ出て来たで?」


 職員室から出て来たエリナは、中で繋がっているという更衣室で着替えたらしく、さっぱりとした

パンツスタイルだ。


「ゴメンなさいね、お待たせ~」

「で、何処で話しすんのかはもう決めてあるん?」

「ええ。私のお部屋で……。貴方達に是非会って欲しい人が居るの……」

「あ、その……エリナ先生は教職員宿舎に住んでるんだ。だからすぐそこなんだけど」


 朱鷺之台学園では、教職員にも宿舎が用意されている。

 主に新任教師向けという事になってはいるが、辺りの物件よりも割安なので希望する者も多く、なかなか空きが出ないが、空室が出た場合には大抵高い倍率で抽選になるというのは、有名な話。


「確か、あの宿舎はもの凄~く応募が多いのですわよね?

 先生くじ運がよろしいのね」

「ああ、いえ、それがね……。私、とある事情があってマンションを引っ越す事になったんだけど、なかなか次のお部屋が見つからなくて本当に困っていたの。

 そしたら、ある日理事長さんに呼び出されて―――」


 卿夜が『理事長』という言葉に反応して不機嫌そうに視線を反らす。

 それにまたエリナが反応してオロオロし出すのを、苦笑交じりに蓮が取りなす。


「ああ、卿夜は遅い反抗期みたいなもんやから、気にせんと続けて」

「え、……ええ。理事長さんがおっしゃるには、『開かずの間』状態になっている部屋でもよろしければ、教職員宿舎を使えますが、どうなさいますか? ―――と」


 あまり聞き慣れない言葉が、混じっていたような? 環樹が思わずと言った様子で質問する。


「って、『開かずの間』って何ですか?!」

「その話なら、わたくし聞いた事ありますわよ?

 ええと、何故か、ずっと昔から教職員宿舎の一番良いお部屋が空室のままになっているって、確か朱鷺之台七不思議の一つに入っていましたもの」

「な、七不思議ッ?! そ、そんな物まであるんですか?! この学校って」


 環樹が素っ頓狂な声を上げるが、他の面々は何を今更ってなもんで。


「別に、七不思議くらい古い学校なら何処でも転がっているだろう?」

「むしろ、よくもまぁ朱鷺之台(ウチ)クラスの学校で7つで収まってるなと」

「そ、そーゆーもんですか……?」

「”そーゆーもん”ですわよ~。―――多分」


 なんて話をしつつ、一行はゾロゾロと歩いて行く。教職員宿舎は学園敷地の南東端にあり、学園全体を囲む塀と繋がった形になっている。

 学園内から宿舎を通って外部へも出られる様になっており、その辺は学生寮とは一線を画している。

 建物自体はごく普通の高級マンションぽい感じで、その上オートロック完備。


「こんな今っぽいマンションで『開かずの間』だなんて……」

「いや、待て! ここがこんなに綺麗なのは何年か前に大規模な改修工事をしたからだ!

 抽選倍率が跳ね上がったのだってそれからだからな?!」

「ほー、さすがは理事長一家の御曹司やん? よぅ事情をご存じで」


 と蓮に言われて、卿夜はまたも渋い顔になる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ