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第3話-3 先 に 言 え よ 。

繋ぎの話……のつもりでしたが、どっこい。新キャラ登場に新展開?

 ―――僕は、正直まだ迷ってた。

 一番上の兄さんに相談すると、もの凄く考えた末に絞り出す様な声で謝罪され。

 次の兄さんに相談すると、その日は仕事だから~と即答で断られ。

 姉さんに相談すると、まだまだ自分は未熟だから云々と言葉を濁された。

 仕方なく、この地域の担当の人に電話を掛けてみるとこう言われた。


「今から言う番号に電話してみろ」


 曰く、この辺りでは一番の……ヒマ人だから、と。

 学校から帰って来て、これまでのあらましがこんな感じ。

 そして、今僕の手には聞き書きした誰かの携帯ナンバーがある。


「緊張するなぁ…………。僕、知らない人に電話するのめちゃくちゃ苦手なのに……」


 でも、泣き言を言ってても始まらない。ひょっとしたら、友達の命にまで関わるかも知れない事だ。苦手だ何だとくだらない事で迷ってなんていられない!

 僕は何故か床に正座になって、スマートフォンの数字を一つ一つ確認しながら押していき、念のためスピーカーにしておく。

 呼び出し音が鳴る。

 このまま出なかったら、後でもう一度……。という期待は(もろ)くも崩れ去り、3コール目で電話の相手に繋がった。


『はーい、もしもし~?』


 え、この声―――?!


「れ、蓮兄ちゃん?!」


 思わず、もう耳慣れた感じすらあるその人の名前を呼んでいた。


『なんや、知らん番号やから誰かと(おも)て出たら、まーくんかいな。

 後で番号登録しとくわ。で、どないかしたんか~?』 


 一気に緊張の糸が途切れた。

 ああ、もう、腹が立つなぁ! あんなに迷ったのは何だったんだよ!


「蓮兄ちゃんの番号だったなんて……。もー、卿夜さんも人が悪いなぁ。

 蓮兄ちゃん、今電話しても大丈夫?」


 電話の向こうは何だかやたらうるさい。一体どこに居るんだろうかと不思議に思いつつ、忙しくはないかと確認する。


『大丈夫やで? あー、でも、ここはうるさいか。出るから、ちょっと待ってな?

 タローちゃん、ちょっとの間よろしくな~。電話してくるしー』


 背景に聞こえている破壊音や悲鳴? に混じって何故か随分ダミ声なネコの鳴き声が聞こえた。それから引き戸の音っぽいのが聞こえて、次は何かガサガサしてる。


『ごめんごめん。こっちやったら静かやろ』

「蓮兄ちゃん、今何処に居るの?」

『何処て……学校(ガッコー)の生徒会室。

 タローちゃんの実践スパルタ教室開催してんねん』


 クツクツと可笑(おか)しそうに笑いながら返って来た答えは、僕には全然意味不明で。


『へーきへーき、ちゃ~んと結界の中で暴れてるから心配ないで。

 で、どーしたん?』

「え、ああ……その、ね……」



   *     *



「おい、なんで俺達まで一緒に行かなくちゃならないんだ?」

「初等部なんて何年ぶりでしょう……」

「わーわーわー、すっごい広い! 向こうって何ですかね???

 かてーかきょーしつ……?」

「……静かにしろ、お前ら」

「オレもここの初等部入んの初めてや。

 ほー、へー……。卿夜達はここ通ってたんやろ?」


 見るからに若い五人組が、玄関受付で渡された許可証を首から下げて、静かな初等部の廊下を賑やかに歩いて行く。


「えーと、6年の教室って言ってましたっけ?」

「そうそう。まーくんは6年1組やからな」

「まーくん???」

「……霧江四兄弟の末っ子の正冬(まさと)君だろ。

 蓮、お前いつの間に正冬君と仲良くなってたんだ?」

「……お前ら、いい加減静かにしろ。正冬君に恥かかせる気か?」


 卿夜の苦々しげな一言に、蓮以外の面々が『ちょっと意味が分からない』という顔になる。


「―――なんだ、また蓮から何も聞いてないのか?

 今日は正冬君の授業参観の保護者代理だぞ?」


 一瞬の間、そして。


「「「えええ―――ッ?!」」」

「だから、静かにしろって……おい、聞いてるか?!」


 キイテナイヨ―――ッ!!!


 三人の心の声は間違いなくハモっただろう。


 何せ、昨日の土曜日の放課後、一週間ぶっ通しだったタローちゃんのスパルタ教室終了後、唐突に蓮が言い出したのだから。


「みんな、明日の昼からヒマか~?」


 なんて、軽いノリで。


「ヒマやったら、特訓の成果を確認したりしなかったりしちゃいませんかー?

 集合は高等部(ココ)の門の前に……えーと、13時ジャストで」


 と、最後まで軽いノリで話していたから授業参観だなんて全然……。

 それに今日顔を合わせてからだって、


「6年1組の教室ってどこやろ?」


 としか―――。

 しかし、卿夜はかっちりと制服を着用し、蓮に至っては何故かブランド物と思われる高級そうな三つ揃いスーツを、これまた一分の隙もなく着こなしやがっている。

 またそれが嫌みなほど様になっているのが腹立ちポイントでもあって。


「先 に 言 え よ 。」


 何とも言えない静かな怒りを(にじ)ませてタイチが(うめ)く。


「……卿夜さんはいつからご存じでしたの?」


 唇を尖らせジト目の雅。


「俺は月曜の夜だ。正冬君からの電話の内容を聞いてな。

 で、今回の修行の成果を見るのにもちょうど良いんじゃないかと俺が金曜の夜に提案してみた」

「そう言えば、皇﨑さんって月曜日はお休みで、土曜日も放課後は来なかったんでしたね」


 がっくりと肩を落とした環樹。


「卿夜は土曜日の昼から、ちょっとお山(本部)に物取りに行ってたからな~。

 お、あそこやな。6年1組」 

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