第3話-2 ……もふもふ////
東北出張には卿夜だけ居たので、今回はそれ以外のメンバーで。
「そんな事より、その二人と会ぅて何でたまちゃんが知恵熱になるねんな?」
と、改めて聞かれてタイチと雅は顔を見合わせる。
「―――知らん」
「―――知りませんわ」
ズコ――――――ッ! ドンガラガッシャンッ!!
妙な座り方だった蓮が椅子ごと……それこそ某新喜劇のような盛大な転け方をしてみせた。
パチパチパチ! 見ていた三人ともが拍手。
「ほー、見事に習得したな」
「芸と違ゃうわ!! 今のんはマジ転けや!!」
「え、そうでしたの?!」
ガタガタと椅子を起こしてばつが悪そうに座り直す。
「―――も~、お前らには聞かんとくわ。で、たまちゃん。何で熱出したんな?」
やれやれだぜ的な空気を醸しながら、もう一度聞いてみる。
「いや、その……そんな大した事じゃないんですよ、全然?
雅さんが、私も試験受けてみないかって言ってくれたので、色々考えてたら、なんか頭の中がグルグルしちゃって……」
そのグルグルがぶり返してきたのか、環樹は眉を顰めて両のこめかみを指先で押さえている。
「試験って、術者のか? まぁ、高位のんやなかったら多分受かるやろうけど……。
つーか、試験とかよりまずはもっと初歩的な事から始めなアカンのと違うか?」
「初歩的……?」
* *
蓮の提案で、放課後に再び生徒会室に集合。
「で、具体的にはどういたしますの?」
「ん~、やっぱ基本の”キ”てゆーたらまずはこっからやろ?
タローちゃーん、入って来てや~」
と、開いている窓に向かって誰かを呼ぶ。
「??? えッ?! ね、ネコ?!」
窓枠にヒョイと飛び乗ってきたのは普通よりも大柄な茶トラのネコ。
そのたっぷりした見た目を裏切り、ネコらしく身軽そうに部屋に入ってくると、蓮の胡座の上に座る。
「タローちゃん、重いがな;」
文句を言う蓮に、ナ~ゴと一声鳴いて悠々と顔を洗い始める。
「も~、しゃーないなぁ~」
ホンワカとした空気になってなんとなく和んでいたけれど。
―――ちょ、ちょっと待って!
「えっと……ここ、3階……?!」
「あ、そうだった……。蓮、”そちら”は?」
我に返ったタイチが説明を求める。
「こちら、タローちゃん。この辺のネコ達のまとめ役や」
「―――猫又さん、ですわね」
「そうそう。そやから、ホンマは尻尾も2本やねんで」
と両手に一本ずつ尻尾を持ってゆらゆら振ってみせる。
ナゴ~(ちょっと怒)。
「ごめんごめん。そやけど、ちょっとぐらい触らしてくれてもええやんか~。
オレとお前の仲やん?」
ニャ~ン~(やれやれ)。
「な、仲良いんですね……」
「逢ぅたんはこっち来てからやねんけどな?
なんや、意気投合してしもて。色々教えてもーてんねん」
「―――教えて……って一体何をだw」
思わずツッコむタイチに、
「……もふもふ////」
どこだかで見たことある様な反応の雅、
「―――うっ、……」
どこか引き気味の環樹、と三者三様の反応。
「およ? たまちゃんはネコ苦手か?」
「……え、っと……その、うん、いや、ハイ……。昔、引っ掻かれた事があって……」
「うーん、心的外傷か。
タローちゃんは無闇矢鱈と人様を傷つけたりはせーへんねんけどな。
―――ホンマに無理か? 無理やったらまた別のセンセ……」
気遣う言葉に、環樹が恐る恐る手を伸ばす。
タローちゃんもすいっと首を伸ばしてじっとしている。
……。
……。
……。
もふ。
なで、なで、なで。
激しくぎこちない手つきだが、頭を撫で、それまで止めていたのだろう息を吐いた。
「……何とか大丈夫そうやな。ほんなら始めよか~」