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第3話-1 けーいちろーとはマブダチの仲や!

ご無沙汰しております……。漸く私事が落ち着いてきましたので何とか復帰です。

でも今回からの第3話は繋ぎの話になりそうです。

「おはよー」

「昨日のTV見た?」


 月曜日の朝の、どこか気怠(けだる)い挨拶や休みの間の話題が飛び交う教室内。

 その人物が入って来ると、気付いた級友達が皆明るく声を掛ける。


「蓮会長、おはよう~」

「会長、おはよー」

「あれ、今日は副会長は~?」


 という声に律儀にそれぞれ返事していく。


「おー、おはよーさん」

「おっはよ~」

「卿夜は今日休みやで。オニノカクランゆーやつや」


 蓮の返事に、周りの級友達は一様に驚いた顔をする。と言うのも……。


「―――珍しい。確か副会長って小中ってずっと皆勤だったよね?」

「ああ。表彰されてたの覚えてるよ、俺」


 流石は私学のエスカレーター式とでも言うのか、長年の同級生も多い様だ。

 それでも最近は途中入学組も随分増えたらしいが。


「へぇ……卿夜って真面目やったんやな~」

「うーん、何て言うか、お父さんが厳しかったみたい?

 まぁ、お父さんここの理事長だもんね」


 と言う級友に蓮は渋い顔で返す。


「あー……。何か納得やわ。けーいちろーは自分にも他人にもキビシーからなぁ」


 うんうんと頷いている彼に、周りの生徒達は少々呆れ気味だ。


「って、会長……理事長の事友達みたいに言ってるしw」

「会長、理事長に会った事あるの? 忙しいらしくて学園には滅多に居ないって話だけど」


 おおっと、疑惑の目を向けられてしまった。

 しかし蓮はめげるどころか、スマホを取り出すと、まだどこか不慣れな操作で連絡先を開いてみせる。


「逢ぅた事あるってば。編入ん時とかに、な。ほら、今ではメル友や!」

「「「えぇ―――ッ?!」」」



   *   *



 その日、神崎環樹は遅刻した。前日、熱を出して寝込んでしまったからだ。

 と言っても、風邪だとかの病気では無く―――。


「は? 知恵熱ぅぅぅ~?!」


 それは昼休みに、生徒会室で雅やタイチにも声を掛けて昼ご飯ついでに話を聞こうとした蓮が、遅刻の理由を聞いての第一声だった。


「何でまた???」

「―――えっと、その……土曜日に会長さんが帰った後にまた色々あってですね……」


 何故か、恐縮頻りの環樹の様子に意味が分からないと、その時一緒だっただろう雅とタイチの方を見る。


「ああ、その……蓮会長や卿夜さんと別れた後に夏邪(かや)さんと蒼眞(そうま)さんに逢ったんですのよ?」


 古風な曲げ輪っぱの弁当から顔を上げ、雅が説明する。


「そう言えば、蓮会長はご存じですの? 蒼眞さんの事」

「―――知っとるで。……一応」

「一応って何だよ? つーか、あの人は……何だ?」


 それまで黙っていたタイチが妙に真面目な顔で聞いてくる。


「何って……何?」

「いや、その……。あの人、もしかして人間じゃないんじゃないかと思ってな」


 神妙な表情でそんな事を言うが、雅もその意見には同意とまでは行かない物の、批判もしない。

 一人、環樹だけが周りの者の顔を焦った様子で見回している。


「ほー。夏邪さんと違ぅてタイチはちゃんと2級レベルやな。

 そうや。蒼眞は”特級相当”の鬼に分類されとる不老不死の妖怪や。

 平安時代に初めて認識されとる、組織でもほぼ最古参に近い存在や。

 長らく隠居しとったけど、今回前線復帰したってんで上層部(ウエ)はある意味、戦々恐々(せんせんきょうきょう)や」

「戦々恐々って、どうしてですの?

 蒼眞さん、紳士的でとっても良い方に見えましたけど……」


 イケメン好きの雅としては、イケメンで強い味方が増えるのなら願ったり叶ったりじゃないのかと言いたいのだろう。


「……集団ゆーんは、なんやかんやムツカシイんや。

 昔から蒼眞の事知っとる奴らは(おおむ)ね歓迎ムードやけどな。

 いきなり”特級相当”なんてゆーそうそう敵うモンが居らんよーなヤツが降って湧いたら、色々と黒い部分がぞわぞわする人間も居てるねん。

 でもそれは、自然な感情や。誰も責める事は出来んし、それに呑まれるんか乗り越えるんかは本人にしか選択出来ん問題や」


 淡々と話す蓮に、周りの表情は微妙な物になっていて……。


「あれ、どーしたん? みんな、変な顔して」

「蓮、お前、なんでそんなに組織の内情に詳しいんだよ? ホントに、お前は何者なんだ?」


 まるで不審者を見るような目つきのタイチに、蓮は漸く気付いたように腑に落ちた、という顔をする。


「ああ、そうか。そやな。変やんな~。

 でもコレはけーいちろーの受け売りなんやで?」

「「けーいちろー?」」


 女子二人が小首を傾げるが、はっと気付いたらしいタイチが口を手で押さえる。


「ゲッ……それ、まさか……理事長の事か?」

「勿の論やで~♪ けーいちろーとはマブダチの仲や!」


 ケラケラと笑う蓮をよそに、役員と見習いは絶句。


「―――ホントにお前は何者なんだよ……」

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