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第2話-8 ……何か他に楽しい事は 無かったのか;

―――夏邪さんの将来が少々不安です。

 紅蓮の攻撃は、その巨躯(きょく)に似合わぬスピードと、圧倒的な剛力による体術+α。

 一方、蒼眞の攻撃は変幻自在だ。剣であったり、術であったり、そうかと思えば紅蓮とのコンビネーション技を繰り出したりもする。


「―――楽しいねぇ。昔を思い出すぜ。なぁ、蒼眞?」


 そんなに何度も”楽しい”と言われても、その、困る。


「……何か他に楽しい事は無かったのか;」


 呆れたように聞く蒼眞に、紅蓮はさも面白くなさそうに鼻を鳴らす。


「んなもん、有るかッ! 挙げ句の果てには東北支部の支部長なんぞに祭り上げられちまうし……。

 現場にもおちおち出られねぇんだぞ? ストレス溜まりまくる一方だっつーの!」

「傘居も言ってたね……」


 なかなか心労が絶えなさそうな感じだなぁと傘居の心中を察するに同情を禁じ得ない。

 だがまぁ、紅蓮はそこいらの雑魚などでは相手にもならない程の存在で有るのは事実なのだから、それもまた仕方ないのかも知れない。


「そういや、先週は九州に行ってたんだって?」


 紅蓮が話題を変えてきた。


「ああ。そうそう、ヒメに逢って来たよ。ヒメも今では九州支部長だものな。

 紅蓮もヒメも随分偉くなって……」


 蒼眞の言葉に紅蓮の表情が渋くなる。


「チッ……。アイツ、元気だったか?」

「月に一度は支部長会議が有る筈だろう? 顔ぐらい合わせているんじゃないのか?」


 確か、以前の通りなら―――。


「……傘居に代理で行かせてる」

「そ、そう……」


 ますますご愁傷様な話だ。蒼眞の記憶が正しければ、支部長会議はお歴々が居並ぶ席でそれはそれはお堅くて重た~い場である。

 そこへ幾ら東北支部長代理という肩書きが有るとは言え傘居が行かされるのは、色々な意味で針の(むしろ)だろうに。


「傘居も可哀想に……」


 などと、ごく普通に会話しているようだが今は戦闘中である。

 先程の様なスピードは出していない物の、代わりに本気を出した上級術者二人を相手にしていては、元々手負いだという黒騎士は半ばサンドバック状態で。


「さぁ―――、大体今の力加減も把握出来てきたし、そろそろ終わりにしようか?」

「まさか、さっきから持ち技ガンガン使ってたのは隠居開けの肩慣らしかよッ?!」

「いやいや、そんな事……まぁ、多少はあるかな?」


 ククク、と彼には珍しく喉の奥で(わら)う。


「笑ってやがるし……。

 もし本気で怒ったら、ミコトやヒメなんかよりも、おめぇが一番恐ろしい気がするぜ、俺はよ」

「―――ご冗談を。あの二人に比べたら私なんて、とんでもなく大人しいのに」



   *   *



「シュン兄。さっき何言いかけてたの?」


 上空での攻防―――というよりは一方的に黒騎士がダメージを増やしているようにしか見えないそれを、見上げながら夏邪が思い出したように口に出す。


「え、ああ。蒼眞の事だよ。お前、全然気付いてないみたいだけど」

「???」


 キョトンとしている夏邪に兄は思わずこめかみを押さえる。何だか本当に鈍痛がしてきたような気分になる。


「お前、本当に二級か?」

「な、何で今更?! ちゃんと二級だってば!」

「じゃー、緋之原支部長が何者かは分かるんだよね?」


 横からニコニコ笑顔の顕秋がツッコんでくる。


「なにもの?! ―――何者ってなに?!」


 はぁ―――。ますます頭が痛くなりそうだ。春破は帰ったら妹の座学も特訓だな、と決意した。


「緋之原さんの正体は、鬼―――それも炎を操る事に長けた赤鬼だ。

 そんで、さっき支部に傘居さんって居ただろう? あの人は唐傘お化け」

「え、ええええッ?! じゃあ、みんな妖怪なの?!

 何で妖怪が妖怪退治の組織に入ってんの?!」

「彼らは人間と共存する道を選んだ妖怪達だ。有名所では、九州支部長のヤマヒメ様もそうだ」


 上級術者にとっては、何を今更……な話である。

 もう長年ずっと、組織は良き友人である妖怪達と共に歩いているというのに。


「―――じゃ、じゃあ……蒼眞様も?」

「勿論―――と言いたい所だが蒼眞に関しては素性がいまいちあやふやなんだよな……。

 でも、普通の人間じゃ無いのだけは確実だぞ?

 何しろ、ほぼ不老不死で最初に存在を確認されたのが平安時代なんだから」

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