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第2話-7 そんな筈、ある訳が無いのに

丸々一ヶ月以上間開いてコレですか。うぅ、申し訳ありません……。とほほ。

「シマ……ですか?」

「ああ。ここからではよく見えないけれど、奴の鎧の胸には大きなヒビが入っているんだよ。

 それこそ、鋭い物で突かれた様な大きなヒビが……」


 と話す蒼眞の表情は何故か浮かない物で。


「何か、気懸かりでもあんのか? 知ってる奴、だったとか」

「ああ、いや……。奴本人を知っている訳じゃ無い。

 ただ……残り香のような気配に覚えが有る様な気がしてな。

 そんな筈、ある訳が無いのに―――」


 じっと手を見つめて話す顔は普段見た事もない程険しくて。

 そんな蒼眞の頭を、紅蓮の大きな手がポンポンとする。


「目の前の敵に集中しろよ? ―――って俺に言われてちゃしょーがねぇな?」


 はぁ―――。

 大きな深呼吸をして、いつもの表情に戻る。


「そうだな。お前に言われている様では本当にダメだな。

 まだまだ感覚が戻っていないという事にしておいてくれ」


 と苦笑気味に笑う。


「ふん。勝手に隠居して山ん中に長い事引き籠もってるからそーなるんだよ。

 ちゃんと働け、俺みたいに」

「―――はいはい。心配しなくても、既にミコトにこき使われてるよ。

 先週は九州、今週は東北ってね……おっと」


 話していると、氣弾の様な物が降ってきた。蒼眞がそれを受ける様に左手の平を翳す。

 バチバチと火花の様な物を激しく発するそれを易々と受け止めると、両手で粘土でも捏ねる様にぐにゃりと伸ばす。そうして細い棒状になったそれを、


「返すぞ」


 と黒騎士目掛けて投げ返す。


「相変わらず器用な事を……。何処まで本調子なんだか分からんな、おめぇは」

「全盛期にはほど遠いよ。何しろ隠居だから」

「―――言ってろ」



   *   *



 二人の会話に割って入る事も出来ずにただ聞いていた面々。


「そ、蒼眞様って隠居してたの? 若そうなのに?」


 夏邪のひそひそ声に春破が呆れる。


「本気で言ってるか、それ?」

「夏邪姉、時々僕より大ボケるからねぇ」

「え、ちょ、顕秋! それちょっと酷くない!?」


 流石に自他共に認める? 天然ボケの弟には言われたくない!

 夏邪としてはそう言いたいのだろうが、兄弟と卿夜は溜息物だ。


「良いか、夏邪……蒼眞は―――」


 春破が呆れつつも説明しようと口を開くが、そこへ当の蒼眞から声が掛かる。


「シュン、どうする?」

「へ? どうする、とは???」

「そろそろ向こうも痺れを切らしているから、いい加減お相手しないとね。

 だから、出るか守るか、どっちが良い?」


 蒼眞はにこやかに聞いてくれているが。


「―――格上二人に任せるよ。足手纏いにはなりたくないから」


 先程の恐ろしいまでの状況を見ては、おいそれと混ざる気にはなれない。


「じゃあ、私か紅蓮が疲れたら交代して貰うよ。それで良いかい?」

「オーケー。まず無いとは思うけど、それまでは見学しとく」


 ほぼ本音を吐き出すと、彼は形の良い眉を寄せて苦言を返す。


「あんまり気を抜くのも感心しないけど―――。

 期待されてるなら、なるべく出番の無いように頑張るとするよ」


 一方紅蓮は会話にも混じらず柔軟体操のような感じでせっせと体を動かしていた。


「さぁ、こっからは本番だ。本気出せよ、蒼眞?」


 如何(いか)にも意気揚々といった様子で紅蓮が笑っている。


「隠居開けに無茶言わないでくれ」


 勘弁してくれとでも言いたげな蒼眞が、ふと卿夜に視線を止める。


「―――? 何?」

「卿夜も一級なんだから、何かあったら頼むよ」


 途端に卿夜の顔が歪む。


「仮免一級なんて、クソの役にも立つもんかッ」

「拗ねない拗ねない。誰も最初から完璧な人なんて居ないんだから。

 大事なのは努力を惜しまない事。卿夜は得意だろう? 努力」

「別に、得意でも何でも無い。目的があったから、だから……。

 だから別に、もう―――」


 何故か言い訳でもしている気分になってくる。特段悪い事をした訳でも無いのに。

 そんな卿夜に仕方が無いなぁという感じで蒼眞が苦笑を浮かべる。


「折角才能有るのに勿体(もったい)ないよ。―――じゃあ、行ってくる」


 蒼眞と紅蓮がまた頭上に居る黒騎士へと跳ぶ。


「お待たせ。さぁ、始めようか―――」

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