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第2話-1 何故お前がここに居るんだ?!

すみません……話無理矢理切り替えました。しかも学園離れてます……。

「ええと、蒼眞(そうま)様……。この後の”別件”というのはどういった物なのでしょう?」

「いや、まだ私も詳しくは聞いていないんだよ。

 一度本部に戻って春破(しゅんや)君に聞いてみないといけないんだ」


 と、蒼眞は軽く言うが、ここから本部までは車でもたっぷり一時間以上掛かる距離だ。

 気安く手伝うだなんて言ってしまった事を夏邪(かや)が後悔し始めた頃、それまでキョロキョロと何かを探していた風だった蒼眞が、目的の物を見つけたのか裏道のとある場所で立ち止まる。


「蒼眞様? 本部へ戻らなくて良いんですか??」


 戻るなら早く戻らないと……と夏邪は焦るが、蒼眞はのんびりした物で。


「大丈夫だよ。―――まぁ、見ていてご覧」


 微笑まれて、ドキリとする。この人と居ると、どうにも心臓に悪い……。

 蒼眞は目の前にある、雑居ビルの、、、非常口なのだろうか、よくある金属製のドアのノブに手を伸ばす。

 本来なら施錠されているであろう筈のそのドアは内側へと事もなげに開く。


「え、あれ、どうなって……」


 こういう所のドアって、外側であるこちら側に開く筈では……?


「さ、行くよ、夏邪」


 差し伸べられた手をとっさに掴むと、想像した以上に強い力で引っ張られる。

 向こう側がとても明るいのか、一瞬目が(くら)んでしまった。思わず閉じた目を、ゆっくり開くと本部の建物が目の前に―――。


「―――どうした?」


 何が起こったのか分からず、呆然としている夏邪に、蒼眞が声を掛けた。


「あ、いえ……、こ、これは……」


 後ろを振り向くと、半開きになったドア……の形に向こうの裏道が見えている。


 こ、これは、もしかしなくても、―――どこ○もドア……?!


 あの誰でもが知っている青いネコ型ロボットの有名なアイテムの一つの様な現象が目の前で起こっているッ!!!


「あー……多分、夏邪が考えてる事は分かるけど、実際はまだちょっと一人じゃ無いと跳べないだけだから……。私としては、不本意なんだよ」


 ドアごとは作れないから、ドアも探さないといけないしね。なんて言って蒼眞は苦笑する。

 いえいえいえ。一時間以上の距離を、ほんの一瞬で移動出来てしまうだなんてそれだけでも凄いんですけど!

 眼を輝かせてこちらと向こう側を見比べている夏邪だったが、


「……そろそろ閉めても良いかい? いつまでも繋いでいると疲れるから」


 と言われて慌てて謝る。


「す、すいませんすいません!!」


 あああああ。蒼眞様にはさっきのアリと言い、今のど○でもドアと言い、何だか恥ずかしい所ばかり披露してしまっているような気がする―――。な、何とか挽回したい……。


「さて、春破君どこに居るかな……。―――ん?」


 誰かが建物の方から走ってくる。背の高い、三揃えのダークスーツをカチッと着込んだ青年だ。


「あ、シュン兄! ……じゃない、春破兄様」


 ついいつもの様に呼んでしまい、言い直す。


「別に私の前では構わないよ。私だって、本人には”シュン”と呼んでいるしね」


 その人物は全速力で走って来て、本来居る筈では無い妹を見(とが)める。


「夏邪ッ?! 何故お前がここに居るんだ?!」

「ああ、すまない、シュン。手伝ってくれると言うから私が連れて来たんだよ」


 なんてしれっと言う蒼眞に、思わず大きな溜息がこぼれ落ちる。


「蒼眞……手伝うったって、夏邪はまだ二級だぞ?

 大体、お前が居るなら手伝うも何も、見てるだけだろうに」


 夏邪の兄、春破は現在一級術師である。それも”仮免”などと揶揄(やゆ)される成り立てホヤホヤの卿夜とは違い、準特も近かろうと囁かれる程の実力者だ。


「シュン兄……特級相当の蒼眞様と一級のシュン兄が任される任務ってどんな物なの?」

「どんなって、基本は変わらず討伐だ。ただ、今回はちょっと厄介そうだから俺達二人で行かされるだけさ。

 まぁ、蒼眞が居ると現地までの交通費も時間も要らないからな」


 最後はニヤっと笑って話す。


「あ、さっきのどこで○ドア!!」

「そうそう。今回遠いからホント助かるんだよ~。サンキュー、蒼眞♪」


 バシバシと背中を叩かれる蒼眞は、しかし何やら複雑そうな表情で。


「正直、期待されてるのはそっちなんだろうとは思っていたけれど、そうあからさまに言われるとちょっと、その、萎えるな……」

「はは、冗談だよ。でも、助かるのは本当だぞ? 何せ目的地は東北の山奥だからな」

「東北? 珍しいね……。北の方の任務が本部に回ってくるなんて」


 本来なら、東北支部が処理する案件の筈なのに? と不思議に思った夏邪に、春破が説明する。


「いや、そもそもは東北支部の担当だったんだけどな。どうにも手に余るっていうんでこっちに回って来たらしい。

 で、(みこと)様のご指名で俺達が行く事になったのさ」


 命様とはこの組織の中心人物で、代々女性が指名される。

 組織に属する術者に取って、精神的拠り所でもあり、また、数少ない特級の能力者でもある。


「それにしても、ミコトも人使いが荒いよ……。

 この間は九州だったのに、今度は東北だなんて―――」

「それだけ蒼眞が頼りになるんだから仕方が無いさ。

 実際問題として今実働出来る特級なんて、蒼眞だけだからな」

「私は特級じゃなくて、飽く迄も”特級相当”なんだけど。

 で、今回はどんな内容なんだい?」


 諦めたように、仕事内容の話に入るよう促すと、春破は表情をキリリと戻して告げる。


「東北支部からの報告によれば、目的地……山奥の過疎の進んだ村だと言う話なんだが―――夜な夜な百鬼夜行が起こっている……らしい。

 その原因の調査と、必要ならば討伐も、というのが今回の任務だ」

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