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第1話-14 あなたも試験受けてみません事?

こう長くなってくると、どこで第一話を終わらせれば良いのか……機を失ってしまった気がします。

「そうだよな……。元々昆虫苦手じゃ無い俺だってアレはちょっと、パスしたいな。

 もしゲームなら『アリだーーーーッ!!』って倒しに行くけどさ」


 ムシが平気な男の人である大鴻池さんですら気持ち悪く感じるらしい、その巨大なアリはズシン、ズシンと地響きまでさせてこちらへ近付いてくる。


「……うーん、みんな、目に見える情報に囚われ過ぎだな。

 この結界は成長加速の術が掛かっているんだ。どういう事が起こるか、分かるかな?」


 蒼眞さんが私達の方を向いて問いかける。


「……成長加速? て事は、図体だけはデカいけど中身はスカスカ―――?」

「成長の速度に能力が伴っていないと言う事ですわよね?」


 ほぼ同時に返事をする幼馴染み組。

 でも私はそういうの、全然分かんないし。と、ちょっぴり拗ねていたのが蒼眞さんに見透かされちゃった。


「転校生さん。キミも興味があるなら勉強してみると良い。周りに優秀な先生が居るからね。

 で、カヤ。キミの場合はどうやら苦手な相手で悪いけれど、ちゃんとターゲットを見極めるんだ」

「……は、はひッ……そー、まさま。で、でも……ひ、ぃぃぃぃぃ!!!」


 後退(あとずさ)りしながら、思いっきり腰が引けているカヤさんの後ろに回り、蒼眞さんが両肩を掴む。


「本体を見抜け、カヤ。二級術師なら、その能力はある筈だ。

 そちらの学生さん達も、目を凝らして良く見てみるんだ。今見えているモノとは違う本体が見えてくるから」


 そう言われても、私には無理だろうなーなんて思いつつじーっと巨大アリを見つめてみる。


「……あ、あれ?」


 ある瞬間、あの大きな蟻が消えちゃった。でも、あの半透明のワンコさんはちゃんと居るのに?


「―――ああ、見えますわ。あんなに小さいモノでしたのね」

「俺も見えた。てか、あれ氣精(きせい)並じゃないか?」

「―――蒼眞様、もう、大丈夫です。私にも、見えました」


 それまで硬直して震えていた夏邪さんが、しっかりとした口調に戻っている。


「キミ達は筋が良いよ。術師にとって”眼”は大事だからね。今の感覚をしっかり覚えておいて」


 薄く笑うと、蒼眞さんが掴んでいた夏邪さんの肩を放す。


「さ、カヤ、頼んだよ」

「はい、任せて下さい。もう、見かけに惑わされません!」


 と、どこに持っていたのか夏邪さんは一振りの日本刀をすらりと抜いた。


「転校生さん。犬の視線の先をよく見てごらん。何か、小さいモノが浮かんでいるのが見えるだろう?」


 蒼眞さんに言われて、ワンコさんの視線を追って見ると……あ、居る!

 さっきの生物室で見たような、ふよふよしてるのが一匹……?

 ん? 一匹で良いのかな? それとも一個、とか???

 私がしょうもない事を考えている内に、夏邪さんが白刃を振り下ろし、無事に巨大アリ……に見えていた物を倒したらしい。


「はい、お疲れ様。今日の訓練はここまでだ。―――お前も、ご苦労様」


 蒼眞さんが、戻ってきて尻尾をブンブン振っているワンコさんの頭を撫でると、その姿が溶けるように消えてしまった。


「キミ達も、引き留めてしまって悪かったね。私達ももう結界を解いて撤収するよ」

「あ、あのっ……」

「どうしたの? 転校生さん」

「わ、私、神崎 環樹って言います! この間は、助けて下さってありがとうございました!」


 この間のお礼、言ってなかったから、言葉と同時にぺこりと頭を下げる。


「そうそう、神崎さん。いや、”たまちゃん”の方が良いのかな? 確か、生徒会に勧誘されてしまったんだよね」

「な、なんで知ってるんですか???」

「私は、朱鷺之台学園に関わる事は大抵知っているんだよ。……じゃあ、機会があったらまた会おう」

「では、皆様、失礼します」


 蒼眞さんは見惚れるような笑顔を残して、夏邪さんと去って行ってしまった。

 その直後、結界が解かれたのだろう、土曜日の夕暮れの街のざわめきが耳に戻ってくる。



     *     *



 家へ帰る道すがら、話題はやっぱり蒼眞さんの事になる。


「何か、不思議な人だったな、蒼眞さんって」

「イケメンなだけで無くて、特級相当の術者でもあるだなんて、ステキですわよね~」


 やっぱり雅さん、イケメン好きなんだな~。


「でも何で特級”相当”なんだろうな? それに今まであんな人が居るのを聞いた事すら無かったってのも気になるし……」


 大鴻池さんの疑問は雅さんも思う所らしく……。


「ええ。特級相当の術者ならば、今までに名前くらい聞いた事がありそうですのに……」

「なんか、凄そうなんですね、特級って……」


 妖怪退治の組織の中の話は、外の私にはよく分からない。


「まあな。本来、術者の階級は一級の上に準特(じゅんとく)って呼ばれてる”準特級”と言うのがあって、更にその上が”特別級”、さっきの蒼眞さんの特級だ」

「―――どっちも”特”が付くから分かり難いんですけれど、特級の方が上って覚えて下されば大丈夫ですわ」


 確かに分かり難い……。


「む~~~。

 えーと、確か皇﨑さんが仮免一級で、大鴻池さんが……???」

「俺は二級」

「私はまだ三級ですわ」

「それから、カヤさん? が、、、」

「夏邪さんもまだ二級の筈だ。今度昇級試験受ける事になってるから……。多分それで訓練中だったんだろうな」

「蒼眞さんに訓練して頂けるんでしたら、わたくしも二級への昇級試験受けてみようかなって思っちゃいますわ♪」

「お前は訓練しなくても十分二級なら受かるって……」


 呆れたように大鴻池さんが零すけれど、雅さんは聞いてない。


「そうですわ、たまちゃん! あなたも試験受けてみません事?」

「え、ええええええ―――ッ!?!?!」

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