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第1話-13 特級相当!!

第一話……って言うより第一章みたいな長さになってきました……。

「そんな、まだ全然ですよ! 色々な事がありすぎちゃって……」

蒼眞(そうま)様……お知り合いなのですか?」


 カヤと呼ばれた女性が不思議そうに私と、この間の人を見つめている。


「ああ。この間も結界に入られてしまってね。

 その時に知り合ったんだけど、後で上から大目玉食らっちゃって。

 ―――あ、いかん。今回もだな……」


 参ったなぁ、とでもいう風に髪をかき混ぜるその人は、やっぱり見れば見る程キレイな人だなーと思う。


「あ、あのっ、アナタは、その……」


 それまでその場の空気に飲まれた様に黙り込んでいた雅さんが、唐突に声を掛けた。


「これは……高津家の姫に大鴻池の坊ちゃん。

 ―――申し遅れました。(わたくし)は蒼眞と申します。

 今回は彼女―――霧江夏邪さんの補助官として臨場しております」


 流れるような自己紹介の後、一礼するその仕草がまた何というか、美しい。


「ほ、補助だなんてッ! 恐れ多いです、蒼眞様!! お止め下さいッッ!!」


 大慌てで否定する夏邪さんに、大鴻池さんが固まったままの雅さんを横目で見ながら質問する。


「夏邪さん、蒼眞さん? ……ってどういう方なんですか?」

「……本人居るのに、人に聞くんだ」


 苦笑する当の本人を前に、夏邪さんは気にしながらも説明してくれる。


「蒼眞様は”特級相当”の術者として、今回私の昇級試験の為の訓練に力を貸して頂いております」

「「特級相当!!」」


 雅さんと大鴻池さんが二人揃って声を上げる。


「え、何、それって凄いんですか?」

「す、凄いですわよ!! 現在、特級にランクされる術者は数える程しか居ないんですもの!」


 興奮しきりの雅さんと、


「でも、最近誰かが特級認定されたなんて話、聞いてないけど……」


 意外と冷静な大鴻池さん。


「そうだね。私の場合、正式な特級ではないんだ。だから、”特級相当”。

 ええと、なんて言うんだったか? そうそう、”仮免特級”という所かな?」


 その『仮免』で皆が思い浮かべたのは多分、同じ顔なのだろう。


「だ、駄目ですよ、吹き出しちゃ……」

「そう言う神崎だって、笑ってるだろっ」

「ま、まさか、他の皆さんもそんな風に仰ってるんですの?!」


 それまで微妙に硬かった空気が、それで一変した感じがする。


「じゃあ、時間も時間だし、そろそろ最後にしようか」


 時計を確認して、蒼眞さんが声を掛けると、夏邪さんは見るからに残念そうな顔をする。


「―――そ、そんなぁ……。やっと順番回って来たのに……」


「すまないな。まだ、この後別件が控えていてね。それとも、手伝ってくれるかい?」


 ぱぁっと夏邪さんの表情が明るくなる。


「わ、私で良ければ、是非!!」


 随分と前のめりな夏邪さんの返事に、微かに微笑むと彼は頷いた。


「そうか。ならば春破(しゅんや)君には私から連絡しておくよ。

 じゃあ、この場を片付けよう」

「よろしくお願いします!」


 訳が分からず二人のやりとりを眺めていた私達は、蒼眞さんに提案をされる。


「良かったら、君達も見学していくと良い。

 今日の訓練は、ある意味皆に共通する心得(こころえ)みたいな物だからね」

「は、はぁ……」


 結局、分からないままにそのままその場にとどまる事になる。

 私達の生返事にも、蒼眞さんはふわりと微笑んで、その場に片膝を付くと、左手の平を地面に沿わせる。


「さあ、少しの間、力を貸しておくれ」


 そう言って、左手をそのまま引き上げるようにすると、そこには半透明の液体で出来た様な犬……それも、ドーベルマンそっくりな物体? が現れた。


「もうそろそろ、ターゲットも大きくなっている頃だから、ここまで追い立てて来てくれないか?」


 ドーベルマン? は蒼眞さんの方を向いて「ワフ!」と返事をすると、勢いよく駆け出していった。


「おい雅、今の、何だ?!」

「わ、分かりませんわ……式神でもなさそうですし……」


 ぼそぼそと幼馴染み組が話していると、夏邪さんも同じだったのだろう、蒼眞さんにお伺いを立てる。


「そ、蒼眞様……今のは、何ですか?」

「地脈の力を借りた物……かな。私は式神系の術が苦手だからね」


 苦笑気味に蒼眞さんが言うけれど、幼馴染み組は二人で唸っている。


「特級相当ってあんな事出来るのが居るんだなー。逆に式神より凄くないか?」

「そうですわね……デキるイケメンさんだなんて、素敵ですわ~」


 あ、あれ? 雅さん??? もしかして、イケメン好き???


 遠くから何か、音が聞こえる。ワンワン、という犬の鳴き声と共に近付いてくる。

 角を曲がって見えた、ターゲットの姿は―――。


 ……アリ?


 そう、よく見かける、昆虫の蟻。ただし、何故か見上げる程に全体が大きくなっている、アリなのだ。何て言うか、その……。


「……うーん。何だか随分グロテスクに仕上がってしまったな。大丈夫か? カヤ、みんな」


 と、蒼眞さんが気にする程にそれはリアルにモロ昆虫で、正直、気持ち悪い……。一番反応したのはカヤさんだった。


「ム、ムシ……ッ!!」


 顔面蒼白というのは、この事だろう……と言えるくらい、色を失い、表情も引き攣っている。


「夏邪さん、もしかして昆虫苦手だったのか?!」

「え、いえ、そんな話は聞いた事もありませんけど……確かに、アレは、かなりキモいですわ……」

「そうですよね……ゴ○ブリよりはまだマシかもだけど……やっぱりキモいですよね……」

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