第1話-11 いつもの関西弁じゃない!
なんか、会長君居ないと話が転がらないデス……。
「じゃあ、取り敢えず呼び方の件は終わったな。
―――そろそろ出るか?」
何となく、周りの視線を感じるのは気のせいではないみたいで。
先程からひそひそと聞こえる声の中に『朱鷺之台』とか『生徒会』とか『会長居ない』とか。
何気に会長さん、他校の女子にまで人気あるんだ……。
「蓮が帰った時点で俺達も出れば良かったかもな……」
入った時から居心地の悪そうだった会計さん……じゃなくて、大鴻池さんがボソッと零す。
会計明細の紙を持って副会長さん……もとい、皇﨑さんが先に行く。
「と~っても美味しかったですわ~。卿夜さん、ご馳走様♪」
一人ニッコニコなのは雅さん。
「あー、はいはい。そりゃ良かった。俺は懐が寒いよ……」
しかし、レジで聞かされたのは、もう会計が済まされていた事。
「先程、お先に帰られたお連れのお客様がお支払いになられましたよ~」
* *
「ったく、払って行くならそう言え。―――蓮のボケ」
ムスッとした顔で皇﨑さんが毒突いている。
結局、商店街を抜けた先の公園で話す事になった、んだけど。
私と雅さんがベンチ、皇﨑さんと大鴻池さんは両サイドに立ったまま。
「で、どうするんだ?」
「―――どうする、とは?」
大鴻池さんが聞いたけど、皇﨑さんはオウム返し。
「いや、だから……神崎にどう説明するんだって意味だよ」
「どうもこうもない。そのまま話すしかないだろうが。
俺達は”妖怪退治の組織に属している術者”だと」
「それはそうですけれど……」
えーと、そういう話って本人居ない所でするもんなんじゃ……?
「あ、あの……じゃあ、生徒会の皆さんは、全員そうなんですか?」
「そうでもない。今日のこのメンツだけだ。
執行部はあと庶務と広報が居るが一切関係ないし、各委員会の委員長も一般人ばかりだからな」
と、皇﨑さんが教えてくれるけど、別の疑問が湧いてくる。
「えっと、じゃあどうして今日みたいな妖怪退治? やってるんです?」
これには雅さんが答えてくれる。
「卿夜さんが”仮免”ですけど1級になったからでしてよ。
わたくし達の属してる所では、1級になったらある程度の任務が課せられますの。
なので、わたくしはオマケと言うか、後学の為にと言うか、そんな感じでお手伝いしてますの。
まぁ、それ以外にも蓮会長が気になるのもありますけれど……」
「雅は昇級試験受けてないだけで、実力的にはもう十分2級は受かる筈なんだがな?」
大鴻池さんが溜息と共に零す。
「わたくしはちゃんと高校生活を楽しみたいだけですわ。
大体、卿夜さんの方がおかしいんですわよ。
高校一年で1級なんて……昇級の最短記録かなり塗り替えたって聞きましたわよ?」
「約束したからな。―――蓮と。1級になるって」
何故か遠い目をしている皇﨑さん。
「蓮と? 何だ、俺はてっきりお袋さんの件が影響してるのかと思ってたんだけどな?」
うぅーん。段々訳が分からなくなってきたカモ。
皆さん幼馴染みっぽいけど、その辺私知らないんだもん……。
「―――ああ、悪いな。俺達、元々術者の家系とかで付き合いが長いんだ」
困った顔をしてるのを気付いたのか、皇﨑さんが断りを入れる。
「そんななのに、卿夜さんが突然蓮会長を連れて来たものですから気になってしまうんですわ」
「確かにな。しかも遠い親戚だなんて言って。
―――それにな。
さっき、蓮と俺が鳥妖の相手しに下に降りた時あいつ言ったんだよ。
『巻き添えを喰らっても、文句を言うなよ』ってな。
その時の蓮が……俺は、無性に怖かった」
あれ、何だろう、違和感が……? えーと、えーと、えーと……?
「怖い……って蓮会長が、ですの?」
「ああ。蓮が、だよ。
まぁ、すぐにいつものアイツに戻ったけどな」
―――あ、分かった!
「いつもの関西弁じゃない!」
「それもある。もう一つは、俺を振り返った右目に火が……灯ってた。
オマケにアイツはいとも簡単に鳥妖を落とした揚げ句に、一瞬で消しちまった。
最近俺は、たまに現場の後始末なんかを手伝わされるんだが……あんなデカい妖怪を一瞬で消し去るなんて初めて見たよ。
だからこそ、アイツが何者なのか余計に気になる―――」