第1話-9 イヤやったら直すけど?
何故かパンケーキのお店で改めて自己紹介……?
結局、良く行くラーメン屋さんが、運悪く定休日だったらしく、近くにある別のお店へ入った……んだけど。
なんでも流行りのパンケーキのお店? らしくて、店内は女の子でいっぱい。
会計さんがちょっと引いてる……。
一方、会長さんと書記さんはうきうきとメニューを眺めながら品定めしているし、副会長さんは財布の中身を確認している。
「悪い、高いのはナシで。金下ろしてないし、チャージもしてない」
どんよりした表情で副会長さんが宣言する。
「むー。折角のたまちゃん歓迎会が……。まぁ、無いモンはしゃーない。
たまちゃん、雅、どれにするん?」
「ほ、ホントに良いんですか……?」
「えーのえーの。卿夜のウチはお金持ちやし。
たまちゃんの歓迎会なんやから、もし万が一足らんかったら、オレが補填するし」
「言っとくが、例え家が金持ちでも、俺もがそうだなんて限らないんだからなッ!!」
ほ、ホントに良いのかな……。副会長さん、半ギレ気味ですよ?
「わたくし、コレにしますわ~♪ 一度食べてみたかったんですの~」
内心ドキドキしながらメニューを見つめていると、書記さんが満面の笑みで宣言する。
「ふーん、イチゴのやつな。たまちゃんは?」
「わ、私はこっちのにします! やっぱり基本でしょ、と言う事で」
「ふむふむ、たまちゃんはチョコバナナ、と。で、野郎共は? コーヒーだけ?」
「……ああ。甘い物は苦手だしな」
という会計さんと、
「そこまで苦手じゃないが……、今はいい」
副会長さん。
「オッケー。したら、おねーさーん! 注文お願いします~」
* *
「……蓮、なんだ、ソレは?!」
暫くして、全ての注文が運ばれてきた。
会長さんの前に置かれているのは、一際高そうな、そしてチョコと生クリームにフルーツもたっぷりの豪華パンケーキセット。
「―――見ただけで胸焼けしそうだな、おい」
会計さんは、言葉通り? 視界に入れないようにしているみたいで。
「お前は遠慮という言葉を知らんのか?!」
副会長さんが頭を抱えている横で、私と書記さんは思わずスマホを取り出して一枚パチリ。
「凄い! 何て言うか、貫禄が違う!!」
「ホントですわね……次回はコレにしますわ!」
「じゃ、頂きまーす♪」
「―――蓮、せめて味わって喰えよ。」
副会長さんが恨めしそうに声を掛ける。
「ん。分かってる~」
* *
まったりと美味しい物を食べながら、改めて自己紹介しようという話になった。
「じゃあ、私から。
高津 雅ですわ。生徒会では書記……って事になってますけど、これと言って何もしてませんわね?
あ、クラスは一年D組ですのよ」
「雅とは、時々合同授業なんかで一緒になるな~」
と、会長さんが言うと、書記さんが笑って話を継いだ。
「そうですわね。わたくし、蓮会長を初めて見たのも雨で体育が合同授業になった時でしたわ。
体育館でバスケをやっていたんですけれど、全然知らない人が凄く活躍していて、妙に気になったんですのよ? ―――あんな人、居たかしらって」
「まぁ、そら確かに知らん人やわな~。オレ、高校からこっちやし」
「次、俺か?
さっき蓮も言っていたと思うが……二年B組の大鴻池 泰智だ。
いつの間にか会計にされちまってた。同意した覚えは全くないんだが」
どーも、会計さんも巻き込まれ組っぽい?
「ええやん。タイチ、理数系なんやから数字に強いやろ?」
しかも、かなりアバウトに……。
「そう言う問題じゃないだろうが。今日みたいな方の活動にまで駆り出されるし。
―――全く、良い迷惑だ」
「そんな風に言いながらも、何だかんだ手伝ってくれんねん、な? タイチ」
「……と言うか、お前、初対面から俺の事”タイチ”って呼んでたよな?」
思い出した、と言わんばかりの言葉にも、会長さんはしれっと
「ん? そうやっけ。イヤやったら直すけど? オオコウチさん? ヤストモさん?」
改めて呼ばれてみて、急に会計さんの顔色が悪くなったような……?
「……いや、今、何か背筋が寒くなった。―――”タイチ”で良い……」
「合点承知~。じゃー、次、卿夜」
「一年A組、皇﨑 卿夜。副会長をやっている。
最近、蓮の所為で気苦労が絶えん……」
「オレを巻き込んだんは卿夜の方やろ? 自業自得っちゅうもんやで。
で、オレはおんなじクラスの桜庭 蓮。ってもう知ってるな。
何でか知らんけど、生徒会長なんかやらされてんねん、卿夜のせいで」
その言葉に、即座に副会長さんが聞き返す。
「なぜ俺のせいなんだ?」
「いやいや、卿夜のせいやって。
卿夜が生徒会選挙なんか出るから、出馬候補と目されてた連中がビビって軒並み降りたってもっぱらの噂やん。
―――まぁ、ジャンケン負けたんはオレやねんけど」
「まぁ、あっきれた~。
会長と副会長どっちやるかってジャンケンで決めたってホントでしたのね?」
やれやれだわ、と言いたげな書記さん。
が、会計さんは今更だが……と前置いてから副会長さんに問い質す。
「お前ら……と言うか卿夜、お前なんで一年から生徒会選挙なんて出たんだよ?
確か中学でも生徒会役員やってたけど」
「ウチの学校は、生徒会やってたら部活入らなくて良いからだ」
即答。そして一同、沈黙。
「―――そ、それだけ????」
「やれ練習だ試合だと煩わされないで済む。中学時代はそんなヒマは無かったからな。
高校に入ったら入ったで、”仮免”とは言え1級になったんだから、任務も多少はこなさなきゃならないし、蓮の手綱は握っとかなけりゃ何するか分からんし、で生徒会が一番好都合だと思ったからだ。運営に関しては、大体分かるからな」
「あのー、卿夜さん? オレは暴れ馬かなんかなんですか?」
会長さんの心外そうな言葉にも
「……まぁ、あの暴れっぷりだしな」
「そうですわね~。凄かったですもんね~」
と、書記・会計コンビは納得している。
「え―――。うーん。
なんちゅーか、そこまで暴れたつもりもなかったんやけどなぁ。
なんか久々に楽しかったもんやから、つい……な」