Defeat of the Queen 12
その様子を見ていたディーラーが
ナナミに言った。
「このゲームを降りる場合は、
ブラックさんが賭けた額の半分を出せば、
このゲームを降りることができます。
いかがなされますか。」
ナナミはブラックを見た。
ブラックが賭けたのはダイアチップ5枚。
すなわち、その半分は、
ダイアチップ2枚と、金チップ5枚。
金額にすれば2億5000万fだ。
何もしないで2億5000万fもの大金を失う。
そのショックは大きかった。
だが、ナナミは思考を変えた。
(このゲームは完全に私の負け。
でも、私はラッキーよ。
ゲームが始まる前に勝敗がわかったんだ。
私に残された選択肢は2億5000万f払うか、
悪あがきをして5億f払うか。
ただ、その二択。)
ナナミはチップを手にした。
「降りるわ。」
ナナミはチップ計7枚を差し出した。
すると、またしてもブラックは高笑いをした。
「ハッハッハッハハハ」
「な、何がおかしい!」
ブラックは笑いをこらえ、冷静を装って言った。
「いや、なぁに。
私の方が策が上回っているな、
と感じましてね。」
「策?」
ブラックは持っていた手札を
ドンッとテーブルの上に置いた。
手札を見たナナミはその目を疑った。
「ま、まさか…」
ブラックの手札には
ルジェーロのカードはおろか、
イベントが何一つとして揃っていなかったのだ。
「君は私のハッタリに騙されたのだよ!
こんなに笑えることはない!
ハッハッハッハハ。」
ナナミは怒りよりも唖然とした。
こんな最低でも1ゲームで
100万fもの大金を失うゲームで、
素人が100年働いても稼げないほどの金を
ハッタリで賭けてくる
ブラックの根性に唖然とした。
「これが一流のギャンブラーさ!
惑わされない心を持ってれば
あなたはこれが見抜け、
簡単に防げたと言うのに…」
しかし、
ナナミの口元からは笑みがこぼれていた。
「おもしろいわね。
こうでなくっちゃ。ギャンブルは。」