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034「ノスタルジア」

「(たった一日しか空けてないのに、何だかモノ凄く懐かしい気がする)ただいま。――わっ!」

「おかえり、木崎くん。よく頑張ったわ」


 玄関を開けて、一秒。荷物を置く暇も無いままに、剛志は廊下から走ってきた和泉に抱きつかれる。この時の和泉は、さながら、優勝が決まって歓喜に沸くラグビー選手のようであった。


「あらあら、お熱いこと。血のつながりは薄くても、もう、すっかり家族同然ね」

「えっと、和海さん。これは、どういうことでしょう?」


 剛志が説明を求めると、和海はフフフと笑いながら帰ってくる直前の様子を説明し、泣き出しそうな顔でハグをしたままになっている和泉に声を掛ける。


「日が暮れても、なかなか帰ってこないものだから、何か良からぬことに巻き込まれたんじゃないかと思って、想像が妄想を呼んで、最悪のケースを想定してたのよ。そこへ、五体満足で帰ってきたものだから、ようやく緊張が解けたってわけ。――ほら、和泉。いつまでもそうしてたら、迷惑でしょう。ちゃんと地に足が付いてるし、心音で、コピーロボットでも無いとも分かったでしょう?」


 和泉は、和海に言われてハタと我に返り、剛志を腕の中から解放する。


「ゴメンナサイ。誰かのことが心配になるなんていう感覚は、初めてだったものだから。腕、痛くない?」

「(知らず知らずのうちに、心の中で、お互いの存在が大きくなっていたんだな)平気です。早く会いたいと思ってたのは、僕だけじゃなかったんですね」

「……オッホン。そこのお二人さん。あたしの存在を忘れてないかしら?」


 和海がわざとらしく咳ばらいをして言うと、二人はにわかに赤面し、剛志は玄関ドアを閉め、和泉と一緒に部屋に上がった。


 社会は、外向的な性格の人物に過ごしやすいように出来ている。

 内向的な人間には、途轍もなく窮屈で不便に感じられる場面が多い。

 しかし、その殻を破ってくれる人物に出会うと、世界は広がるのである。

一ヶ月以上にわたる和泉と剛志のお話は、ひとまず、ここでひと区切り。

この続きは、また別の機会にお話しましょう。

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