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後編:義臣のお詫び

 全てあの馬鹿親父の性だ。今年は翡翠と約束していた。バスターの治療兵の試験に合格したら、誰もが見れるものじゃない名スポットから花火を拝ませてやると……



「今年も賑やかだなぁ」

「全くだ。だけどよ、花見と夏祭りを一緒にやるのもうちぐらいなもんだな……」


 白真と修の目の前に広がるのは、酒盛りをして花火見物の場所を確保するTEAM社員。そしてどこから召喚したのか桜の木まである。

 とにかく楽しければ構わないのがTEAMたる由縁だ。


「だけどさ、白は紫織と回るんじゃなかったのか?」


 修の最もな疑問に、白真は涙ながらに答えた。


「そうしたかったんだけどよぉ。快ちゃんが掃除屋会に行っちゃうから、翡翠が一人で可哀相だって紫織も行っちゃったよぉ」


 ここに犠牲者がまた一人。おそらく白真のことだ、間違いなくサプライズは考えていたのだろう。


「まあ、紫織は翡翠が大切だからな。それに優奈と咲もデートより翡翠を選んだんだ。今日ぐらい許してやれ」


 修の言い分に白真は納得するしかなかった。翡翠が夏祭りを楽しみにしていたことは誰もが知っていることだった。


 去年、翡翠は高熱でうなされて花火が見れなかった。翡翠が唯一残ってる母親との思い出、それが花火だからこそ快はこの夏祭りの花火を名スポットで見せたかったのである。

 恥ずかしさをごまかすために条件も付けたわけだが……


「分かってるよ。修ちゃん、今年は快ちゃん抜きで射的勝負しよう」

「ああ、そうだな。お前らも行くか?」


 花見に参加している翔達に修は声をかけると、


「行くよ。それにそろそろ翡翠が迷子になるだろうし」


 翔の予想は見事に当たるのである。



「はぐれちゃった……」


 林檎飴につられて少しふらふらしてると、いつの間にかその視界から友人達はいなくなっていた。


「どうしよう……」

「お嬢ちゃん! 俺達と遊ぼう!」


 急に肩を抱かれ翡翠は驚く。性質の悪い酔っ払いだ。


「いやっ!」


 条件反射で翡翠は軽く投げ飛ばす。それでピンクの浴衣が少し着崩れた。


「おお、痛い痛い。骨が折れちゃったなぁ」

「あ〜あ、どうしてくれるのかなぁ」

「実際に折られたいのか?」


 そこに現れたのは義臣だった。突然訪れた寒気に周りにいた者達のほとんどが崩れる。


「おじ様っ!」

「翡翠、今回のお詫びだ」

「えっ?」


 パチンと指を鳴らしたと同時に、翡翠は一瞬にしてその場から消えたのだった。



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