018:四門ダンジョン。其の5
案内された村は、取り立てて珍しい村でもない。
レド達『星空の記録』、リード達『南十字星』、アプリ達『ノラノラ』、ユララ達『戦乙女騎士団』、サーフ達『剣客商売』、マユア達『アマツカサ』の6個PTがこの村に入る。
一行の統率者のレドは村を観察し納得した。
近くにいたサーフ達も納得していた。
「戦う為にいるよう村じゃないか」
「そうだな。調べさせた方がよさそうだな」
「いえ必要ありません」
村の入り口の方の扉が閉まる。
村は中立エリアの為に、誰も武器を抜かない。
声を掛けたのは一人エルフだ。
「ユウルより聞いております、レド様ですね。そちらがピローテス殿」
「戦う意思はない」
「それは困ります」
「理由を聞こう」
「森の呪いの原因たるエルダーエント様をどうかにしてもらわねばなりません」
「なるほど、俺達の力を当てにするとは、随分と人の好い話だな」
「安心してください。貴方のようなお人好しで情に弱いタイプの方なら安心です」
聞いていた者が噴き出す。レドを的確に表現したような台詞だ。レドからすれば面白くないらしい苦虫を噛み潰したような顔でいた。
人の悪そうなエルフはにこりと微笑み。
「好い性格しているなエルフ」
「それ程でもありません。PTのリーダーのみおこしてください」
「そのPTの従者は」
「お好きなように」
「家族は」
「家族?」
「内に娘がいるのさ」
「PTの一人とカウントさせていただきます」
「ティア残れ」
「わん」
「ああ。ユキカゼも残れ」
「わん♪」
「ユキカゼ一緒!」
「わふ♪」
レド、従者の三名、リード、従者の2名、アプリ、ユララ、サーフ、マユアの6名と従者5名が寄る。
「集まりましたか、こちらへ」
案内されて移動する中、後ろには壁が生まれ、仲間達との物理的な合流が不可能になる。
リーダーたちは慌てず騒がず。
「何してくれんのよ!このくそエルフ!」
「ピュシー、お言葉が悪いですよ」
「リャナも思うでしょ?」
「こう言う方は目的のために手段を選ばない方です。言っても意味はありません」
「もう!」
「エルフ、妙な真似を次にしたら後ろから突き刺すぞ」
クーが物騒な台詞を言う。
「ご安心ください、これ以上はありません」
「人質って訳か、反吐が出な」
サーフが吐き捨てる様に言う。
「我々にも時間はそれ程ありませんので」
「自分たち可愛さか、斬りたくなるような奴だ」
「そうですね」
「悪いなエルフさん、俺の身内達は仲間想いでさ」
「好い事です」
エルフが止まる。
「ここが呪いの森の中核、古木の居城です」
『古木の居城』と言う迷宮らしい。巨大な木がそそり立つ、優に100mは超える様な巨木だ。
「海の呪いを解いたレド様にお頼みしたい、どうか呪いの森の呪いを解いてほしい」
「ふむ。さて好意的な見方をしても、仲間を人質に取った挙句にお頼みしたい?命令ではなく?それは誠意に欠けることはではないか?それともエルフの礼儀とはそんなモノか」
「時間がありません。呪いが今以上になれば、もうこの森が居られません」
「虫が良過ぎないか」
「どうしても必要なのです。PTのリーダーのみなのですから」
「どうする?」
マユアが話しかける。
「連絡してからPTを組むぞ、全く人の悪いエルフさんだ」
「申し訳ない」
初めて詫びたエルフに、それぞれは仕方がないと言った顔で連絡をし始める。
連絡し終えてからPTから抜け、PTを結成した。
「名前はどうする」
「ごちゃまぜだな」
PT名『ごちゃまぜ』
「なんという名前にしてくれたのだ!そんな」
「騒がしい奴だなPT名ではないか」
「人斬り言っておくが名前は体を表すという」
「どうでもよい」
「サーフ、言っておく事がある」
「なんだ?」
「リャナはあの世界での副官だ」
サーフの時が止まった様に硬直する。
雫が頬を伝う。
悪辣な外道の人斬りの目にも零れる感情があったらしい。
「この世界では涙は隠せないからな」
「不便な話だ」
サーフが涙を何度も拭う。
「久しくでございます」
「であるな。言ってくれればよかったものを」
「お優しいサーフ様なら泣いてしまいますもの」
「お前らしいな」
「人を逢うては人を切り、鬼に逢うては鬼を切り、仏に逢うては仏を切り、心に会うては涙を流すもの、お懐かしゅうございます」
「彼奴は」
「今は何処にいるのか、世界の根本は同じですが、何せ広いのが悩みです」
「そうか、まだ望みはあったか」
鬼の目にも涙と言うものかもしれない。
「人斬りの涙か」
「分かるだろうクー」
「ああ懐かしい人に逢いたい、出来たら声が聞きたい、出来たら話したい」
「〆っぽくなる前にスキルと装備を構成するぞ」
▽スキル・装備変更及び登場人物紹介。
[レド]:星空の記録のリーダー。主に錬金術士、召喚士+騎士+弓使いも可。
特徴:186cm。髪色は白髪に近い銀髪、瞳色は黒、肌色は褐色。
種族:ダークエルフ 性別:男性+女性(理由は下記に記載)
謎の液体を触れた為に女性アバター化、ただ男性アバターにもなれるが、娘の様なティアのリクエストで、主に女性アバターを使う事も多く、男性アバターと使い分ける。体格はリアル基準より少し高めになってしまい、初めてレドを見るプレイヤーからの正直な感想は巨人族、調合士としては腕前は健在で、今では高い知名度を持つ。前衛としては盾+剣+槍、後衛としてはクロスボウ+魔法を使うPTの司令塔。
[主要武装]スキル枠50+5、テイム従者+7、サモン従者+6。
暗黒騎士剣〝暗黒剣士〟暗黒騎士槍〝暗黒栄光〟〝雷神之小盾〟特殊展開装甲〝破壊工作型〟、連射クロスボウ+属性矢、耐性胸当て、衣類、ウェアラブルPC+入力リング
[リード]:『南十字星』のリーダー。アーチャー+テイマー+サモナー
種族:エルフ 性別:女
『星空の記録』とは『始まりの七日間』より共闘する間柄、なんだかんだ言って仲良しPTでもあり、良く行動を共にするPTのリーダー、テイマー&サモナーでもあり、クロスボウの使い手でもある、生産では調合・栽培を行う。エントナイトのアロマ、種族不明のクーを連れ、本人がれほど強くはないプレイヤーなのだが、従者により豊富な数を用意できるのが最大の強みである。
[主要武装]
連射式クロスボウ〝ポンプ式クロスボウ〟+属性矢、耐性胸当て、衣類、サモナー型ウェアラブルPC(レンズ型)+入力リング
[アプリ]:『ノラノラ』のリーダー 元素魔法使い
種族:ヒュム 性別:女
固定PT『ノラノラ』、従者を連れない指輪使い達のPTのリーダー、元素魔法使いであり、ややもすれば辛口になりがちであるが、冷静な方であり、その場の流れに抵抗する様な性格でもあり、流されるようなことはしない。『星空の記録』の縁で『南十字星』とは顔見知りで有り、身内のような二つとは仲が良い、隠れて色々と研究する方であるらしく、生産スキルもかなり豊富になっている。
[主要武装]
長杖〝元素重力〟魔女っ子の衣装。特殊展開装甲〝破壊工作型〟
[ユララ]:『戦乙女騎士団』のリーダー 騎士職魔法騎士
種族:エルフ 性別:女
固定PT『戦乙女騎士団』のPTリーダー(騎士団長)、所謂アレな女性(百合百合)ながらも身内禁止令が出されている鉄騎士団、ピローテスと女性アバター時のレドの組み合わせが、とある百合アニメの様で、かなり嬉しい組み合わせらしい、縦ロールのお嬢様風のアバターを持ち、ゲームを楽しむ以上はと両手騎士剣と魔法を使う騎士職の魔法騎士を楽しむ、生産では鍛冶・木工担当し、指揮ぶりの方は堅実、石橋を叩いて渡る口。
[主要武装]
両手騎士剣〝戦乙女の剣〟騎士衣装、戦乙女鎧〝戦乙女の甲冑〟特殊展開装甲〝近接型〟
[サーフ]:『剣客商売』のリーダー 侍職剣客
種族:ヒュム 性別:男
対人戦の専門家で集まる人斬り集団『剣客商売』のリーダー、戦闘能力はけた違いに強く、個人戦に関していえば最強のPC、PT対PT戦でも強く、指揮ぶりは悪辣の一言に尽きる、特に心理戦を得意とし、悪辣な計略で敵を叩き潰す、個人としての性格は義理堅く、弱者の味方、負け組につくタイプの破滅型ではあるが、大切なモノの為には涙を流し、それを守るためには全てを投げ出し鬼ともなるような男でもある。
[主要武装]
打刀〝人斬り〟 脇差〝胴貫き〟 侍衣装 特殊展開装甲〝近接型〟
[マユア]:『アマツカサ』のリーダー 騎士職竜騎士
種族:バハムーン 性別:男
固定PC『アマツカサ』のリーダー、特に目立つような記録はないが、かつての西部の森でのエネミー軍との衝突で一軍を率いた男、目立つような事を嫌い、その後は適当に過ごしていた。ジョブは騎士職、クラスは竜騎士、槍は訳が有って使わず、盾と片手剣で戦う、攻守のバランスが整ったタイプのバランス型の前衛、地味なタイプではあるが、無理なく勝つ為に目立たないが、地味に有能なタイプ。
[主要武装]
片手剣〝晴天〟中盾〝閃光〟全身甲冑〝フルプレート〟特殊展開装甲〝近接型〟
▽従者紹介
[ピローテス]:レドの従者、ナイト&ダンサー
特徴:168cm 髪色は白髪に近い銀髪 瞳色は黒 肌色は褐色
種族:ダークナイトエルフ 性別:女 従者タイプ:手懐け(テイム)
『始まりの七日間』より行動を共にするレドの従者、テイム従者であり、サモン従者とは違い、死んでも復活はしない。『星空の記録』の従者たちのリーダー担当、ティアの姉の様な者でもあり、レドの居ない時は大抵仲間の世話やティアの面倒を見る、また騎獣の世話もする為に忙しい、剣・槍・弓・盾の扱いに長け、特に弓による騎射の腕前は高い、口調の方は男性的、時々丁寧な口調にもなる。性格の方は武人然としているが、口が上手い。
[主要武装]
暗黒曲刀〝暗黒牙〟暗黒騎乗槍〝闇騎士槍〟暗黒騎乗弓〝闇弓〟竜騎士小盾〝竜騎士盾(ドラゴンナイト・バックラーカスタム02)〟連射式クロスボウ〝ポンプ式クロスボウ〟+属性矢、耐性胸当て、戦技型ウェアラブルPC(レンズ型)+入力リング
[リャナ]:レドの従者 上位地母神
特徴:167cm 髪色は金髪 瞳色は碧眼 肌色は乳白色
種族:上位地母神 性別:女 従者タイプ:召喚
『刀京』編で従者となった女性、魔法専門ともいえるほどの豊富な魔法スキルを持ち、武具に関しての能力は殆どない、即死系の魔法の成功率は高く、集団の4割は即死させる。またレドにとってみても欠かせない従者でもあり、固有スキル【豊饒の大地】によって植物を育てることが可能な戦闘・生産の両方で貢献する従者、何故かレドに忠誠を誓っており常に傍で居たいと願う女性従者。『四門』編での過去の一部が明かされた。
[主要武装]
片手用杖〝姫将軍〟スペル型ウェアラブルPC(レンズ型)+入力リング
[ピュシー]:レドの従者 上位妖精
特徴:155cm 髪色は赤 瞳色は茶色 肌色は乳白色
種族:上位妖精 性別:女 従者タイプ:召喚
『刀京』編の従者召喚スキルを取得した時に、自動的に召喚が出来る様になったサモン系従者第一号。武具を扱う能力は皆無に近いが、回復魔法・元素魔法を扱える、浮遊・飛行の他にNPC言語、MOB言語が扱える、レドの薬などに高い効果を持つ妖精の鱗粉を創り出すために、何かと働くが多い、また低消費のMPの為に、何か重宝されている。コストパフォーマンスに優れている以上の性格が非常に明るい、この為に数多く活躍する。
[主要武装]
片手用杖〝最後の千年〟スペル型ウェアラブルPC(レンズ型)+入力リング
[ルリ]:
特徴:50cm 毛色は朱 瞳色は瑠璃色 肌色は朱
種族:朱雀 性別:♂(性別は任意に変更可能) 従者タイプ:召喚
『四門ダンジョン』編の朱雀編よりレドのサモン型従者となった、性格の方は無口、寡黙、無表情と言ったもので、瑠璃色の目からレドが名付けた名前の時にも鳴かないなど、徹底した無口で有るが、戦闘中に鳴く程度にはある。強力なサモン型の従者であり、現時点で最強の神獣でもある。また『四門ダンジョン』編のキーマン的な物でもあり、レドの意思の答え性別すら変更するので、かなり強力な従者と言える。
[主要武装・主な荷物]
なし
[アロマ]
種族:エントナイト 性別:男 従者タイプ:手懐け(テイム)
リードの従者、エルダーナイトから、エントナイトに成長した。ジョブは武道家、クラスは格闘士、似たようなタイプのフォルゼンとは似たような構成を持つ。性格の方も似ており、やや寡黙、必要な事は話すだけではなく、必要と判断すればインテリの様にも説明できるほど知識が豊富、リードの知識袋としても活躍する。採取系も数多く、従者たちの中でも一目置かれる存在、戦闘においては防御を優先しがち。
[主要武装]
小手&盾〝ガンレッド・シールド〟執事服など多数。戦技型ウェアラブルPC(レンズ型)+入力リング
[クー]
種族:不明 性別:男
リードの従者、種族は不明、ジョブも不明、クラスも不明、ただ槍の達人で有り槍は相手を倒すために使い、相手を殺害するための物と考える節があるが、戦経験は豊富であるらしく、古い戦いの事には詳しい、口数は少ないが高い知性を見せることが多い、レドやバッシュとは仲が良く、同じ様な従者仲間のアロマとも仲が良い、顔付きは美青年と言った所で、体格は立派であり191cmに届く、正体不明な所もあるが人柄は割と良い。
[主要武装]
槍〝クーの槍〟衣類多数、戦技型ウェアラブルPC(レンズ型)+入力リング
▽
「おしPTごちゃまぜ」
レドが言うが名前が名前なのでテンションが落ちるリード、アプリ、ユララの三名の女性PC達が居た。男性PCのサーフ、マユアは全く気にしない。
従者の5名は、妙な物を見ていた。
レドの従者でサモン型の朱雀のルリが何故かいた。
基本的に召喚しなければ現れない筈なのだが、何故か実体化していた。
「マスター」
「ん?え?」
ピローテスが呼んで振り向いたレドが見た妙な生き物、レドのサモン型従者の朱雀、このルリだ。
相変らずの無表情な朱雀は、適当に座っていた。
「えーと?え?」
他のメンバーも振り向くと、レドの従者が居たわけで、誰もがあれと思う。
「ルリ」
「・・・」
「まだ呼んでないが?」
「・・・」
主人の都合お構いなしの朱雀らしい事は分かる。
「MPがぁ」
最大MPの30%消費のリャナ、1%の消費のピュシー、20%消費のルリ、単純に計算して51%が消費された計算になる、しかもこれは絶えずなので、回復はしない。
残ったMPは49%、半分程度だ。
「・・・」
「そんな顔をするなよ。分かったよ。お前も来い」
ルリが立ち上がり、羽ばたいてレドの頭に乗る。そして気持ち良さそうに座る。
「せめて肩に」
「・・・」
仕方ないと言いたげに嘆息したルリが肩に降りる。
「ああMPが、分かった突くな」
嘆くようなレドの顔の朱雀は頭で殴る。
「愉快な従者だな。主の都合などはお構いなしなんて」
リードが可笑しそうに笑って言った。
「仕方ないか、リード飲んでおけ」
渡されたドリンクを受け取るリード。
薬品へのラベルにはMP増加薬とあった。
「MPの最大値を増加させる薬だ。まだ試作段階なので一時的な物に過ぎないがな」
「おおさすがはポーション」
「おいリード、それは辞めてくれ、ティアが覚えたらどうする?」
「今は居ないからな」
「てめえ激マズポーションを飲ませるぞ」
「阿保をしていないでどうするのだ」
アプリが冷静に言う、他のメンバーも似たり寄ったりだ。
「レド様、言うのもなんですが、お姉様版になってください」
「おい」
ユララのぶれない発言に、全員が突っ込む。
「ルリ、あまりマスターを困らせるものではありませんよ」
「・・・(こくり)」
何故かリャナの言う事は聞くらしい、誰もが謎の従者と思わずにはいられないが、そんな従者に言う事を聞かす従者のリャナは色々とあるらしい。
「あー。すげえ面倒な事になりかけているような」
レドがぼやく、人の悪いエルフの目付きが険しい。
「今すぐに行くから、どうせMPが呪い元なんだろ」
「はい。よく知っていますね」
「呪いの海も同じだった。ちなみにあっちの方は双子の姉妹だったが」
「ちなみになのですが、どの様な解呪法で?」
「種族を戻した」
「・・・よくできましたね」
「色々とあんのさ」
「エルダーエント様の呪いはMPが元です。これをどうにかしなければこの森は全て枯れます」
「そいつはまあ困るな」
「そう言ってくれるのなら」
「落ち着け、そのエルダーエントの事だが、理性はあるか?」
「ございます」
「じゃあ従者契約は可能か?」
「それを聞いてどうするのです?」
「従者にしたのちに種族を戻して」
「・・・」
「従者契約を解除する」
「・・・人が良過ぎのも考えモノですよ?」
「おいおい俺の様なMP脆弱な奴が扱えるかよ」
「まあ色々と苦労なされていますし、ええまあ少し気分がいいです」
「好い性格しているなエルフさん」
「よく言われますよ。従者契約はエルダーエント様が望めば可能です」
「おし、じゃあ原因を聞こう」
「はい。話せば長いのですが、まあ平たく言えば北部の獣王の呪いです」
「獣王?」
「北部の玄武を守る一族の王です」
「ほう、玄武」
「ちなみにエルダーエント様は白虎の守護者です」
「へー。白虎、こいつは運がいい」
「二人は大変仲の悪い間柄なのです。いつも争ってばかりでしたが、まあ色々とありまして、呪われてそのまま」
「ぼかすなよ」
「時間がありませんので」
「はいはい。であんたも入るのか?」
「案内が要りますからね」
「ちなみに薬師か?」
「いえ、まあ実家はそうですが」
「ああなるほどそう言う繋がりか」
「はて?」
「ガリバーを知っているか?」
「懐かしい名前ですね。古い友人ですよ」
「いま呪いが解かれて、城下町で暮らしいるよ」
「・・・彼はどうしていましたか?」
「普通に生きていると言いな。一応言っておくが相手はいないんじゃないか」
「・・・なるほどお詳しい」
「ああ。性別が反転する呪いだろ?」
「ええ」
人の悪いエルフは、現在は男性的だが、呪いが戻れば女性に戻るらしい。
知らない者は凍り付く、この性格でこの容姿で女性と言われても困る。
「俺もね。そう言う呪いの液体を被ってね。女になっちまったからな」
「心中お察しします」
「ああ。一時的には戻れるようにはなったが、娘もいるし、別に困らないけどな」
「・・・」
「ああ血の繋がりはない」
「それを聞いて安心しました」
「普通のノンケだからな俺は、変な趣味はないぜ」
「それは何より、さて話もなんですし、そろそろ行きましょう」
「まあ待て、アプリ、ユララ、エルフさんはこのポーションを飲んでMPを増加させてくれ」
MP増加薬を受け取って三人は、直ぐに飲む。
味わいの方は仄かに甘いリンゴ味だ。
「素晴らしい味わいです。薬と言えば不味いのが当たり前でしたが、これは革新的です」
「効果の方は素晴らしいな」
「ええ。レド様のポーションは常においしいですから」
「では参りましょう。それとも何かありますか?」
「たれがやる事は有るか?」
誰もが特になし、レドからすれば周囲の植物に非常に興味があるのだが、我を通す事もなく、無理はせずに特にないと答えた。
「レド殿、無理は話されない方がいいですよ」
「何の話だ?」
「調合士であるのなら周囲の植物に興味がないはずはない」
「まあな」
「後でこの森の種をお渡しします」
「そいつは有り難い」
「全てという訳には行きませんので、自分なりに調合されるとよいでしょう」
「感謝するぜ。俺も何かと入用でな」
「資金的に困っているのですか?」
「金なんてどうでもいい」
「?」
「植物の力がどうしてもいるのさ。あのクソッタレ共に一発かますためにな」
「小僧」
「イーニャの上空にあるそうだ。あの世界のあの場所に行くための場所がな」
「誠か?」
「嘘なんて言うかよ」
「息子と会えるのか?」
「だといいがな」
「協力は惜しまんぞ小僧」
「サーフの息子さんは、サーフ似?」
「いや全く、妻に似て儂なんかより遥かに美丈夫であった。クーと似た様な体格で、顔付きの方はクーより女顔にした感じだ。子供の頃はよく小さい事を嘆いたが、大人になる頃には背丈が大きすぎて今度は服が合わぬと嘆いた」
サーフが懐かしそうに話す、息子と会いたいとおも気持ちは、親ならではの心だ。
「かなりの美男子で、かなりのお洒落さんだった男さ。その代りと言っては何だが、女性からの熱烈なアタックが多すぎて酒を飲んでは愚痴っていた」
「贅沢な悩みだ」
レドの言葉に、マユアは羨ましそうに言った。
纏め役のポーション担当のレド、冷静なアプリ、百合系女子のユララ、ちょっと皮肉気なリード、家族思いのサーフ、地味なマユアと言う、統一感が全くないPTなりに、まとまり感はある、仲間と切り離されたいというのに全く気にならない訳ではないが、気にしてもしょうがないとドライな意見で統一されていたらしい。
「人なりに悩みは小さい大きいは関係ないからな」
「そうだな」
「さてとそろそろPT構成だな」
「前衛の者は前に、後衛の者は後ろに」
マユアがそう言うと、前衛は前に踏み出し、後衛は後ろに下がる。動かなかったレドとピローテスは、器用貧乏ではないが、かといって特化した前衛や後衛には勝らない、ハイレベルな前衛・後衛ではあるのだが、要すれば万能系なのだ。
「俺とピローテスは中衛で行くさ」
「スキルの開示を頼めるか」
▽プレイヤーネーム:レド
スキル構成変更:スキル枠50+5
武器スキル:暗黒騎士剣Ⅰ 暗黒騎士槍Ⅰ クロスボウⅠ
防具スキル:布製Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 革製Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 竜騎士小盾Ⅰ
装飾スキル:アクセサリーⅠ.Ⅱ.Ⅲ ウェアラブルPCⅠ
魔法スキル:暗黒魔法Ⅰ 神聖魔法Ⅰ 従者召喚Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ、付加Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 付加術Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 弱体化Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 弱体化術Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
補助スキル:魔法才能Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 同時使役才能Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 両手利きⅠ 両手持ちⅠ 剛力Ⅰ 眼力Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 発見Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 夜目Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 鷹の目Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 索敵Ⅰ
生活スキル:同時使役Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
生産スキル:
固有スキル:
種族【闇木香】:範囲内のMP/TP自動回復効果。
ジョブⅡ【錬金Ⅱ】:錬金Ⅱまでをスキル無しに行う。
クラスⅡ【調合Ⅱ】:調合Ⅱまでをスキル無しで行う。
ジョブ【騎乗】:騎獣に騎乗できるようになる。
ジョブⅡ【指揮】:将軍専用スキル。範囲内の味方への補正+1
ジョブⅡ【軍学】:将軍専用スキル。軍学Ⅱまでをスキル無しに使える。
クラス【暗黒剣】:ダメージの10%を吸収
クラス【神聖剣】:攻撃ヒット時に神聖属性の追加ダメージ
クラスⅡ【竜騎乗Ⅱ】:総指揮騎士専用スキル。竜騎の能力を引き出す事が可能。
クラスⅡ【テイム】:テイムスキル無しでも行える。
ジョブⅡ【呪音楽Ⅱ】:呪音楽Ⅱまでをスキル無しでも行える。
クラスⅡ【演奏Ⅱ】:演奏Ⅱまでをスキル無しで行える。
ジョブ【召喚士の器】:召喚士としての真価を発揮します。
クラス【従者の心得】:従者が従う様になります。
ジョブ:【矢作】:矢製造可能
クラス:【射手の目】:有効射程距離が延びる
▽従者ネーム:ピローテス
武器スキル:曲刀Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 暗黒曲刀Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 暗黒騎乗槍Ⅰ.Ⅱ 暗黒騎乗弓Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
防具スキル:布製Ⅰ.Ⅱ 革製Ⅰ.Ⅱ 盾Ⅰ.Ⅱ 小盾Ⅰ.Ⅱ 竜騎士盾Ⅰ.Ⅱ
装飾スキル:アクセサリーⅠ
魔法スキル:神聖魔法Ⅰ.Ⅱ 暗黒魔法剣Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 神聖魔法剣Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
補助スキル:魔法才能Ⅰ 魔法剣才能Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 両手利きⅠ.Ⅱ.Ⅲ 眼力Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 発見Ⅰ.Ⅱ 看破Ⅰ.Ⅱ 鷹の目Ⅰ.Ⅱ 梟の目Ⅰ.Ⅱ 蛇の目Ⅰ.Ⅱ 索敵Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
生活スキル:
生産スキル:
固有スキル:
種族【闇木香Ⅱ】:範囲内のMP/TP自動回復効果。
ジョブ【騎乗】:騎獣に騎乗できるようになる。
クラス【暗黒剣】:ダメージの10%を吸収
クラス【神聖剣】:攻撃ヒット時に神聖属性の追加ダメージ
ジョブⅡ【舞踏Ⅱ】:舞踏Ⅱまでをスキル無しで行える
クラスⅡ【剣舞Ⅱ】:剣舞Ⅱまでをスキル無しで行える。
ジョブ:【矢作】:矢製造可能
クラス:【射手の目】:有効射程距離が延びる
ピローテス固有:
【夜の加護】:夜間能力上昇、HP回復
【闇の加護】:光が差さない場所なら能力上昇、MP回復
【日光浴・小】:1時間に20%まで空腹値を緩和する
【食いしん坊】:食欲旺盛になる
【剣豪】:剣系統のスキル能力上昇、与えるダメージ上昇。
【採集者の素質】:採集率上昇
▽
「「・・・・」」
誰もが凝視したのは、固有スキルのその豊富さだ。特にピローテスの場合は個人用の固有スキルまである、どういう育成法とかそれ以前の事だ。
「なんでそんなに固有スキルが多いレド」
「ジョブとクラスを取る分だけ増えるのだ。知らなかったか?」
「つまり一つとか特化型は少ないという事か?」
「少ないな。数が豊富だから固有スキルも増える」
「将軍スキルは」
「ああ。取ったが、あまり使っていない」
「なんのジョブからの進化なのだ」
「進化って程じゃないさ。運営が用意した俺専用ジョブだ。クラスも専用だ」
「インチキだ!」
「システム外イベントを片付けてくれたお礼ってさ」
「なに、では」
「村の事は仕方がないプレイヤー同士の揉め事だ」
「残念」
「と言うか、ピローテスの固有キルは何だ?」
「ピローテス個人のスキルだ」
「それはわかるが」
「何故か持っていた」
「・・・もしかしてユニーク?」
「いや普通のエルダーからの成長だ。知っているだろリード」
「それはまあ、しかし、なんというか、理不尽な気分だ」
「テイム型だからな、アロマもあるんじゃないか」
「ない」
「そいつは残念だな」
「小僧、固有スキル取得は取ったか」
「何の話だ?」
「固有スキルチケットだ」
「あああるぞ?」
「小僧、それを将軍のジョブに使えばどうなる?」
「「!?」」
「さっ使おうか」
▽スキル取得
ジョブ将軍(騎士系レド専用ジョブ)
剣(将軍専用):将軍専用の剣が使用可
槍(将軍専用):将軍専用の槍が使用可
弓(将軍専用):将軍専用の弓が使用可
弩(将軍専用):将軍専用の弩が使用可
服(将軍専用):将軍専用の服が使用可
鎧(将軍専用):将軍専用の鎧が使用可
盾(将軍専用):将軍専用の盾が使用可
具(将軍専用):将軍専用の具が使用可
騎獣(将軍専用):将軍専用の騎獣が使用可
具生産(将軍専用):将軍専用の具の生産可能。
▽スキル変更
スキル構成変更:スキル枠50+5
武器スキル:剣(将軍専用)Ⅰ 槍(将軍専用)Ⅰ 弓(将軍専用)Ⅰ 弩(将軍専用)Ⅰ
防具スキル:服(将軍専用)Ⅰ 鎧(将軍専用)Ⅰ 盾(将軍専用)Ⅰ
装飾スキル:ウェアラブルPCⅠ 具(将軍専用)Ⅰ
魔法スキル:暗黒魔法Ⅰ 神聖魔法Ⅰ 従者召喚Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ、付加Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 付加術Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 弱体化Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 弱体化術Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
補助スキル:魔法才能Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 同時使役才能Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 両手利きⅠ 両手持ちⅠ 剛力Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 眼力Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 発見Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 夜目Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 鷹の目Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ 索敵Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
生活スキル:同時使役Ⅰ.Ⅱ.Ⅲ
生産スキル:
▽
「特に変わらないな」
「LvUPまでの数値は」
サーフに言われ、調べると凄い事に、Lv1上げるのに1000万、四桁がなくなっても、通常の10倍だ。
「普通の10倍だ」
「10倍も遅いのか、性能次第では役に立つかもしれんな」
「そうだな。クラスの方は後々にしよう」
「変態レベルじゃなきゃあいいがな」
「やっかむなよマユア」
「これだったら本気を出すべきだった」
相当に羨ましかったと思われ、悔しそうな感情の混じる声だ。
「まあ次を期待するんだな」
レドがそう言うと、マユアは悔しがる。
「専用ジョブが欲しい、絶対に欲しい」
「確かにな。有れば非常に有り難い」
マユアの意見にサーフも賛同する。
恐らく全員が同じ気持ちだった。
「さてと、木登り大会でも行きますか」
木登りとは言うが、大きいアロマですら2m、その50倍はある高さの木、横にも太く、見えるだけでも100mはある。
相当な巨木らしい。
「中は意外ですが、簡素な作りです」
人の悪いエルフが言う。
「奥は深いですが、一階のみですし、直ぐに付くわけではないですが、木登りをするほどではないですよ」
全員の共通の意見を言えば意外。
「では向かいましょう」
□
巨木の内部は閑散としており、一言で言うのなら木をくり抜いた感じの内部だ。
静かな内部の空間は、外の音が聞こえないほど静かで、一人一人の足音が良く聞こえるほどだ。静寂に包まれる内部は、よく見れば埃一つないほどに清潔な場所だ。
歩く中、特に誰も言葉を発せず、前衛、中衛、後衛の三段階に分かれ歩いていた。
モブ、一般エネミーは居ない様子で、ひたすら歩くだけだ。
何分ほど歩き、人の悪いエルフが止まり、他の者も止まる。
「敵です」
「落ち着け。まずは前衛は前に出て、中衛は後衛の防衛、索敵に頼ることなく、周囲をよく観察しろ、変化はあるはずだ」
レドの言葉に、誰もが素直に動く。
レドがふと気づく。
「上だ!」
レドの怒声が、戦闘の合図となるかのように、上空からスライムが落ちてくる。
「火炎属性で攻撃してください!」
「それには及ばない」
ピローテスが連射クロスボウ〝ポンプ式クロスボウ〟から矢を射る、高速に放たれた矢は、スライムの表面に突き刺さり、スライムは動きを止める。
「なに?」
「マスターご自慢の塗料の付いた矢だ。暫くは動かんよ」
「さて俺は調合しておこう、各自適当に攻撃」
前衛のユララ、サーフ、マユア、アロマ、クーは通常攻撃、ピローテスが援護していた。
後衛は暇そうに適当に暇をつぶしていた。
レドは固有スキル【調合Ⅱ】での調合スキル無しでの調合を行い、適当に作った薬品を小瓶に詰め、ピローテスに渡す。
「粘菌に効くかはわからないが、麻痺効果とスタン効果付きの物だ」
「了解した」
「矢じりに着けてから使ってくれ」
「了解した」
小瓶の中身を矢じりに掛け、クロスボウで射る。
着弾したスライムは動きが更に止まる。
「的がデカいと何かといいな」
「練習にならないのが悩みだ」
「それは贅沢すぎるだろ」
「かもしれん」
通常攻撃で片付け、レドのあだ名はポーションに決定された。
「まっこんなものだろ。上空は見えないほど大きいので、警戒も程々にな」
「ポーション、何かバフ効果の物はないか」
「マユア、俺はポーションじゃない」
「いいから寄越せ」
「一言にバフ効果と言っても種類は豊富でな、防御効果専門も有るし、攻撃効果専門もある、どちらにする」
「攻撃効果」
「他の者は?」
「同じく」
「右に同じ」
「攻撃効果でお願いしますわ」
「防御は要らんしな」
「分かった適当に作る。味は俺好みのフルーツ系にするぞ」
再び調合し、バフ効果の物を作り、前衛に配る。
品質は×7、攻撃専門の効果のみを凝縮したものだ。
味の方はレドの好きな蜜柑味だ。
人の悪いエルフも渡されてから飲んだが、薬とは思えないような味わいだ。
「では行きましょう」
進み始める一行。
次に現れたスライムは二体、ピローテスが素早く無力化し、レドが適当に調合する中、前衛は暇そうに佇み、先程から暇な後衛は適当に時間を潰す。
「先程より麻痺に比重を置いた薬だ。扱い方は同じだ」
「了解した」
矢じりに薬を掛けてから、一体を射る、次にも同じ作業をしてから別の一体を射る。
「うむ。PCは右、従者は左を攻撃してくれ、後武器の耐久度などに問題があればすぐに連絡してくれ」
「さすがはポーション」
「何か貴重な便利アイテムを手に入れた気分だ」
「レド様は万能薬ですわ」
「ふむ。アロマ殿、任せてもらえぬか?」
「構わない」
「神器開放」
〝クーの槍〟が輝き力が解放される。
『千本槍』
千本の槍が現れ、空中より全方位から攻撃し、貫いて倒す。
『1000HIT』
クーを除き全員が呆然とした顔で見つめる。
「耐久度が1程と下がるのが困ったところなのだ」
クーがこともなげに言うが、本人としては悩み所らしい、レドは苦笑してから調合を開始した。
「クー殿、素晴らしい腕前だ」
「かたじけない、単体のみなのが困ったところでもある」
「そうなのか、範囲系に使えばかなり凄い事になりそうだが」
「戦の度にそう思う」
従者の二人は暢気に会話していた。
前衛PCの三名も攻撃して倒す中、レドが調合した修復液をクーに渡す。
「どの様に使うのだレド殿」
「武器にそのまま掛ければ全回復する、適当に作ったので品質は×7だ」
「十分だ」
クーが薬品を掛けると、槍の耐久度は全回復した。
下手なポーションを購入するより、レドを雇った方が何かと便利だと誰もが思う事だ。
「楽でいいな」
マユアが心底に思って言う。他の前衛も同じ感想だ。
「楽に勝てるような相手ではないのですが」
人の悪いエルフは心底に思って言うが、レドと言う調合士の活躍には確かに便利ではある、人の好い情に弱い性格ではあるが、調合士としての腕前には目が見張る物が有る。
本来スライムは強敵なのだが、そう考えしまうエルフだった。
「後衛としては暇だ」
リードが愚痴る様に言った。
「次は召喚獣たちを暴れさせるぞ」
「別にいいぞ。その分楽だしな」
レドがあっさりと許可する。
「ポーション、後衛にも頼めるか」
「俺はポーションじゃない、でどんなものだ」
一口にポーションと言っても数多く、一口に後衛と言っても数多く、一口に魔法と言っても数多い。
「私はMP増幅系」
「私は威力増幅系」
「成功率上昇系でお願いします」
「私は、う~ん~回復量増幅系♪」
「分かった適当に作ろう」
レドか作り始める。一言で言うのなら万能ポーションのような男だ。
飲み物としても味わいが良いので、下手な店で購入せず、レドが店を構えれば誰もが買いに来るような品揃えになりそうだ。
「味付けに関していえば、レモン系にするぞ。嫌いなな奴は居るか」
「私は好きだ」
「同じく」
「レモンですか、出来たらリンゴの方が良いです」
「私もレモンは嫌い」
「分かったリンゴ味に変更しよう」
適当に混ぜて居る様にしか思えないが、レドなりに創意工夫があるらしい。
調合スキルを持つリードやアプリにはわかるが、異なる種の物を数種類混ぜて作っている、現時点では最高峰の混合技法は三重だが、レドはそれより多い四重だ。
四種類の薬品を混合し、適当に作った薬品を後衛の四人に渡す。
注文通りの効果を生み、味わいも爽やかなリンゴ味だ。
「マスター、中衛には?」
「何に使う?」
「何かないかと」
「薬品は多用しない方が良いぞ?」
「・・・」
「別によいが、何系にする?命中率か?ダメージか?飛距離はさすがに無理だぞ?」
レドに無理な事は有るようで、レドを除いた全員の共通した感想は、無理があったんだ。
「・・・両方で」
「味わいの方は」
「蜜柑味を」
「分かった」
適当に作り、混ぜ混ぜした後に渡す。
ピローテスは直ぐに飲む。
「ん?味わいが何やら妙な」
「!?薬品を貸してくれ」
「はい」
渡された薬品の残りを調べる。
レドの顔が輝く、他の者では理解不可能ではあるが、レドが嬉しそうに追加の様に調合し始める。
「ピローテス、お前は運がいい、イレギュラー薬品だ」
「イレギュラー?」
「恐ろしく低確率だが、珍しい効能を持つ確率を有する特異な薬品だ。この薬品の効果は」
「効果は?」
「素晴らしい事にMP大幅増加だ」
「マスター、私は魔法は使い道がないのですが」
「イレギュラーだからデータが少なくてな、これで二回目だ」
毎日の様に、調合しているようなレドが、これ程に少ないのだから、余程に珍しいらしい事は誰にでもわかる。
「む。蜜柑味いが品薄か、うむむ。仕方がない」
在庫管理も必要な技能らしい。
「よし夏も近いしスイカ味だな」
スイカ味のMP大幅増加薬を手に入れた。
今まで静かだったルリが、レドを頭で殴る。
「痛いぞルリ。炎効果増幅でよいか」
「・・・(こくり)」
薬品を調合し、ルリに飲ませるが、直ぐに掃き出し、レドを頭で殴る。
「痛い、おかしいなスイカは嫌いだったか?」
「・・・(ふるふる)」
レドが調べるも、レドの眼力レベルでは調べられない。
「困った。調べられない、ルリ少し調べるぞ」
ルリを眼力で調べる。特殊効果の覧に生産品質+1とあった。
レドが狂喜乱舞しそうだが、意外にも直ぐに追加し、アイテムボックスに納めた。
生産品質+1の謎の薬品を手に入れた。
「ふむ。どのような法則性か調べたいがそれでは楽しみが減るからな」
「どの様な効果なのです」
「生産品質+1」
「・・・幸運でしたね」
「ああ。まあ調べられないから解析は無理だがな、さて薬品も作ったし、もういいぞエルフさん」
「次に向かいましょう」
次に現れたスライムの三体。
「来た来た!現れよ精霊達!」
【従者召喚:ジン】により風の大男が現れる
【従者召喚:エント】により森の古樹が現れる
【従者召喚:クラーケン】により海の大イカが現れる。
「やってしまえ」
暴風、貫く木、津波が現れて襲い掛かる。
あだ名をつけるとしたら、エレメンタラーと言った所だ。
三体はあっさりと消滅した。
「ご苦労様、もう帰っていいぞ」
三体が頷いて消える。
「MPの方はどうだリード」
「素晴らしいな、いつもよりかなり余っている」
「なるほど、大体の数値でよいが何%ぐらい余った」
「%は同じぐらいだが、いつもより1割は多いゲージが残る」
「ふむ1割か、Lv7での1割か」
製作者のレドは渋い顔だ。
どうも効果の方が納得がいかなかったらしい、満足のいかない薬品だったという事になる。
「大した薬品ではなかったか、それなりにやってみたのだがな」
「いや十分凄いが」
「単純に計算して1・42位だぞ?しかも効果は一度のみだ。この薬品シリーズは改良がいるな」
「理系は計算が速いな」
「理系ではない混ぜ物系だ」
何やら当人なりに拘りがあるらしい。
「薬品は一度のみなら、他の者もか?」
「後衛は全員な、前衛はそれなりの時間がある、中衛に関していえば正直分からん。何せイレギュラーだからな。詳しく調べる必要があるが、どうするリード」
「・・・・なら大幅増加を試そう」
「チャレンジャーだな。味は保証せんぞ」
スイカ味のMP大幅増化薬を作り、リードに渡す。
リードも眼力で調べてから飲む。
スイカ味ではあるのだが、妙に変な味わいもついている。
リードの顔が微妙な所だ。
「不味くはないが、妙ななんというべきか、変な味だ」
「後でしっかりと聞くからな」
「後MPが全開した」
「そう言う効果もある」
「イレギュラーとはそんなに効果が高いのか?」
「ああ妙な物が多いが、性能に関していえば下手な薬品の二倍ぐらいが基本だ」
「次に行きましょう」
次にもスライムが現れるが、今度は五体だ。
「私が行いましょう」
即死系の範囲系に属するスペル【ファースト・デス】での成功率は4体が消える。
「効果の程は二倍です。随分と優秀な薬品です」
「ふむ。この薬品は中々素晴らしいな、このシリーズは生産しよう」
「マスター、あまり人体実験はせずにお願いします」
「しかし、効果は使ってみないと分からないしな」
「えーと。人体実験?」
「つまりここにいる全員がそれだ」
味わいと効果に騙されているが、全員が未知の薬品を飲んでいるために、当然の様に人体実験だ。ちなみにレドは飲んでいない。
ルリが怒ったように何度も頭でレドの横顔を殴る。
「痛い、痛いぞルリ」
ちょっと気分が良くなった者も居た。
その間にスライムをピローテスが射てから動きか停まったところで、前衛のフル攻撃で倒す。
「まあ効果の方は凄いが、人体実験は」
「薬品には副作用が付き物だしな」
「ちょっとイレギュラーは遠慮したいですわ」
正直な感想を言う前衛三名。
「私としては随分よい薬品とは思いますが、イレギュラーを除けば味わいも効果も確かですし、まあ人それぞれ、次に行きましょう」
真っ直ぐに進み、今度は遭遇せずに、一つの扉の前に付いた。
扉が形を変える。
剣を持った一体の騎士、エントナイトのアロマより巨大な4mはある。
「ならば私の最大火力だ」
炎魔法の単体系に属するⅢスペル【ファイアーボルト】。
中空より現れた火炎の弾が、凄まじい轟音でぶつかり、一撃で騎士を倒した。
「「・・・・」」
「素晴らしい効果だ!」
「うむ素晴らしいが適当には作るな」
「適当じゃないとランダムにならないぞ」
「ならなくていい」
「残念だな。運試しには丁度いいのに」
人の好い情に弱いが、薬品に関していえば素晴らしい腕は持つが、実験は好きらしく、しかも適当に作った薬品を飲ませる人体実験が好きらしい。
「適当に薬品を作った物を飲んでくれる人なら歓迎なんだがな」
ルリが危険な目つきになる。
「マスター、ルリの目が危険だぞ」
「ん?大丈夫かルリ、イレギュラーだったが、デバフ系は使っていないし、毒物系も使っていないから、特に危険ないぞ、腹でも壊したか」
当人なりに考えて作っているらしい事は分かるし、基本的に人が良いので心配性でもあるらしい、困ったところは有るが、人は悪くない様子だ。
ルリは怒っていたが、心配されたので怒りを収めた様子だ。
「・・・(プイ)」
「うむむ。イレギュラーは危険な効果はないはずだが、一度休んだ方が良いかもしれないな」
そう言ってから全員が休む。
レドは適当には作らず、解除系の薬品を調合し、ルリに飲ませず、薬品を掛ける。
「掛けたら効能が減るが、その分安全性は増す、何より手っ取り早く、それ以上に負担が少ないからな」
薬品の専門家らしい台詞だ。この事に、全員から突っ込みが入らないが、最初から掛けろと言いたそうだ。
「ルリ大丈夫か?」
「・・・(コクリ)」
「そうかそれは良かった。なるべく適当に作るのは控えよう」
「・・・(コクリ)」
「しかし、おかしいな、毒物系もデバフ系もないのに、要すれば単なるバフ薬品なのだがな、おかしいな」
レドなり考えてやっているが、予想外という感想をレドは持つ、他の者から言わせればそんな適当に作るからだと言った所だが、レドには良い薬となってくれればそれで従者にとってみればよかった。
「マスター、私が癒しますぜい」
「おおそういえば回復魔法が使えたな、頼む」
「ルリ、癒すよん♪」
「・・・(コクリ)」
回復魔法単体系スペル1【ヒール】で癒す、特に変化はないが、ルリは起き上がりレドの肩に飛び乗る。
「うむ素晴らしい効果だこの薬品は生産しよう。ピュシーありがとう」
「いえいえどういたしまして。ルリもよかったね」
「・・・(コクリ)」
従者達は内心喜んだ。ピュシーとルリの一芝居が効果を発揮したらしい。
「ふむ。やはり耐性系は使っておくべきか」
「?」
「耐性を持たせる薬品だ。今のところ最大Lv7だがな。Lv換算でいえば70位だ」
「ふむ。割と良いかもしれない、それを適当には作らずに頼む」
「ああ耐性系の方は得意だしな。幾つかストックもある。しっかりと検証したうえで使うので全員飲んでほしい、もちろん俺も飲む」
珍しく自分も飲むというレドなので、全員が安心して頷く。
効果の方は素晴らしい様で、味わいの方もよく、コーンポタージュのようであり、軽い食事にも利用できるような味と飲み心地だ。
耐性系は、元素系や即死系などを除くほとんどに耐性を与え、Lv7までの効果を与えた。
「イレギュラーのバフ系は危険性ありっていう訳か、ピローテス、リードはよく注意しておけ」
薬品の恐怖を知るレドからの忠告に、二人は直ぐに頷く。
「解除系も使っておくか、耐性系も使ってあるし、その後に耐性系、相乗系だな」
「そんなに多用して大丈夫なのか?」
「解除系は全ての薬品効果を打ち消し、耐性系は効果のある物に強い耐性を与え、相乗系はかかっている効果を激しく上昇させる薬品の系統だ」
「いっその事、薬剤師になったらどうだ」
「英語でいうのならPharmacistか」
アプリがネイティブな英語の発音で言った。
「考えておこう。ピローテス、リードはどうする?」
「・・・危険性も考えた。それを頼む」
「レド、私も頼む」
「分かった。相乗系は品薄なので余り多用したくない、扱いの方も難しいしな」
二人に薬物効果を打ち消す薬品を掛け、その後に耐性効果を与える薬品を掛け、最後に相乗系の薬品を掛ける。激しい効果なので凡そ3倍の効果を発揮する。Lv7なので3倍となりLv21効果だ。
「凄まじい効果だな」
「Lvは10を突破し、20も超え、21だ。現時点では最高峰の効果だろう。ちなみに装備などに使っても意味はないぞ。装備者限界と、効果の制限により下がるからな」
「さすがはマスターだ」
困ったところは有るが、薬師としての腕前の方は高いのは言わずと知れてだ。
「飲めば5倍の効果を発揮するが効き過ぎだな」
とんでもない事をさらりとレドが言う。
現時点では最高峰の薬品を扱う専門家らしい台詞だ。
「レド」
「何だリード?」
「好い腕だ」
「そいつはありがとよ」
「さて休んだところですし、行きましょう」
人の悪いエルフがそう言って立ち上がる。他の者も同じ様に立ち上がり、レドの薬品の力もあり、ラストバトルまで簡単に倒していった。
「ここが最後の扉です。レド殿、調合を頼みます」
「ああ分かった。ひとまず薬品の効果は解除しておこう、通常のバフ薬品、増加薬品、耐性薬品、自然回復薬品、ステータスUP薬品位で十分だろう。相乗系は使わないぞ」
「わがままを言うのなら使ってほしいのですが」
「効果が強くなりすぎる。まあ作ればあるが、あれはしんどいんだよな」
「なら私、テイム型従者のピローテス殿、アロマ殿だけは」
「それなら在庫はある。他の者もそれでよいか?」
誰もが頷く、レドが薬品を渡し、相乗系は最後まで渡さず、飲んだのを確認してから渡した。
「エルフさん、別に残してから解析しても良いが、薬物の怖さを考えるのなら辞めておいた方が良いぞ」
「ええ。辞めておきましょう」
三名が飲んでから、効果を発揮し、Lv7×5の為に35だ。
信じられないほど上昇した効果に、レドの薬品の効果もあり、更に上昇する。
「加えて言っておきますが、どうしても倒してはいけませんよ」
「あれだろMPが元になるってことは、この森の根本にかかわる事なのだろ」
「はい。マユア殿も理解も早くて助かります」
「じゃあやる事は同じだ。特に困らないさ。直ぐに終わるよ」
「ポーション、従者のストックは?」
「テイムもサモンもかなり余っている、リードの方は?」
「テイムの方は+8だから7あまり、サモンの方は7使っているから残り2だ」
「そうか、なら俺が担当するか?」
「経験者にお任せする」
「分かった」
最後の扉の近くに人の悪いエルフが近寄り、扉を解除する。
扉の中にはひたすら植物が生い茂る。
「エルダーエント、元の姿に戻り、呪いを解きたくはないか」
レドが呼びかける。
中から一本の木が現れる。
「方法を説明するが、選ぶのは自由だ。ここまでは良いか」
木が頷くように枝を動かした。
「まずは意思を確認したぞ。従者となり種族を戻し呪いを解く、後に解除し、解放する、海の呪いと同じようにな」
『エルダーエントが従者を望んでいるようです』
従者にした後、チケットを渡し、エントはこれを使い元の姿に戻る。
一人のドリアード系の女性だ。
「やっともでれたぁ~ありがとさんね~」
見た目はセクシー系ではあるが、口調の方は間延びした舌足らず方だ。
「姫様」
人の悪いエルフは戻っており、美貌の容姿をした美しい女性となっていた。
「あら~チェニなっかしい~」
「遅くなりました」
「いいのよ~無事に」
「ああ少し待てMPの方は」
「回復しているわよ~」
「呪いが強まったという事はこれからも強まる傾向にあるという事だ」
「そうね~」
「適当ではなく、しっかりと調合しよう」
「?チェニ?」
「腕の良い調合士です。少なくても現時点では宮廷の薬師を集めてもかないません」
「そうなの~よろしくたのむわ~」
「じゃあ場所を移そう、色々とまあ色々と有るのでな」
「レド殿」
「いや本当に色々と有るのだ。間違いなく時間が足りない」
「わたしの~?」
「いや俺の男性で居られる時間だ」
「キターーーーーー」
ユララが大声で黄色い声を出す。
全員がビックリとするが、ユララだしなと大勢が納得した。
「やっとお姉様に逢えます。最高」
「女性~?」
「呪いの液体を被って性別が反転したそうですが、現在は一時的に男性に成れるそうです」
「どっち~?」
「間違わないでくれ、俺は」
時間切れらしく、レドの姿が男性から女性へと変わる。
ピローテスが素早くマントをかぶせる。
「ありがとうピローテス」
「いえ」
「なんで、男の俺が、こんな目に遭わないといけないんだよ」
1名を除き、全員が不憫そうだ。
ユララは非常に嬉しそうだ。
全くぶれない女性である。
「うーん。一応~男性と言う事にしておく~」
ドリアードの姫君は何やら不憫そうな顔だ。
その後場所を移し、レドが着替えてから薬を作ったり、染料を作ったりしてから、要するに調合を行って作った物を姫君に渡し、効果なんやら説明してから休む。
精神的なダメージが深かったために、レドは沈黙し、いつもならお喋りな方のレドが無口だと、室内の静かだ。
従者達が慰め、他の者やユララは別室だ。
特にユララは百合系なので、従者達だけではなく、サーフやマユアと言った男性たちが見張っている。
他の者達も居城に入り、特に娘の様なティアと、仲間のウルカ、アリサ達、ヒリュウ達、サクヤ達は話を聞いてから溜息を吐いて一人一人が何とか励ました。




