はじめてのたたかい
あれから気が乗らず、安全な町から出たくない勇は、時間を少しでも潰すためオロオロとしている少女に話しかけた。
女戦士がノカコド村に向かった理由はこの少女だった。
話を聞くと少女の飼っていた青い鳥を取り戻すために、彼女は町を飛び出していったらしい。
でも、少女の家も分からないのに、青い鳥を見つけても後で困るのじゃあないかな?
少女がオロオロしている理由は、まさにそれだった。名前も聞かず少女の家も分からないのに飛び出していった女戦士は青い鳥を見つけてもどうするのだろうと悩んでいたみたいだ。
勇は女戦士と会うために旅に出ることを伝え、青い鳥を見つけたら少女の家まで連れて行くことを約束し、少女の名前と城門からの家までの道を教えてもらいながら少女を家まで送っていった。
少女の名前はペティ。家は大通りに面した青い屋根の宿だった。周りよりも大きな建物で、大通りを歩いていれば嫌でも目につく大きな宿だった。どうやら城下町でも有数の高級宿みたいだ。これだけ大きい建物で大通りに面していれば城下町をよく知らない自分でもまた来られる。
理由が出来てしまった勇は、城門を抜け街道を歩いていった。
ノカコド村へと続く街道を歩いて程なく、街道から少し外れたところに森が見えてきた。事前に王女から聞いていた森だ。
城で旅の準備をしている最中、王女からスライムしか出ない森の話を勇は聞いていた。
出来れば、城の回りをぐるぐる回り、安全を確保しつつレベルアップを図りたかったところだがワールドマップに出た瞬間からエンカウントするほど荒んだ世界ではなかったらしい。素直にそこは諦めた。
街道を逸れて、緊張しながら森へと進んでいった。
木漏れ日が地面を照らす見通しの効きづらい森を注意しながら進んでいくと、視線の先の茂みの中で、何かが動く音が聞こえてくる。
剣を抜き片手で持ち、近くに落ちていた手ごろな石を投げつける。
何かに当たったような手ごたえはあったのに石が落ちてくる音が聞こえない……。
スライムだろうか? と思っているとそれは茂みからゆっくりと現れた。
「すごく……気持ち悪いです……」
思わずそう呟いてしまう。
スライム……確かにスライムが現れた。
水色をした透明な不定形な液状の体を動かし、茂みから勇の前に現れたスライムは豚の顔をしていた……。
実際に見たことはない。けど分かる……このスライムはオークの顔をしている……オークの顔をしたスライムだ。
驚き、まじまじとスライムを見ているとスライムに浮かび上がるオークの顔が怒った表情になる。
そのまま怒った表情でプルプル震えるスライムは勇に向かって飛び掛ってきた。
スライムの飛び掛かりを驚きつつも避けた勇は、反射的にスライムを蹴り飛ばしてしまう。
召喚されて力の上がったその蹴りは、スライムを木に叩きつけた。
スライムは木に叩きつけられ、オークの表情で絶望を表現しながら溶けていった……。
「戦いづらい……」
そう呟きながらも、嫌々だが次のスライムを探していった。




